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聴覚系STになる前に抑えておきたい事

どうも!!!
長洲ヒアリング代表のみやたです!!!
なんと聴力検査の業務に就き始めて6年が経過しておりました!!!
月日が経つのはあっという間とはこのことですね!!!


7年目を迎えておりますが、少しでも患者さんの聞こえに関する課題を解決できるようなSTになりたい、聴力を調べる事だけではなく有意義な時間を過ごしていただけるようなサポーターをこれからも目指していきたいと思います!

・・・話は変わりますが聴覚系STになりたいと思っている方は一体どのぐらいいるのでしょうか。
「聴覚に興味はあるけど自分にできるか不安やなあ。」
「求人が少ないし、あっても正規雇用じゃないってよく聞くよ!」
「聴覚分野で働く言語聴覚士って1割ぐらいらしいけど、ちゃんと教えてもらえるんかな?」

といった『聴覚には興味があるけどなかなか一歩が踏み出せない』方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?

そんな方の一歩を踏み出す記事になるかはわかりませんが、聴覚系STとして自身の経験(聴力検査)をもとに書いていこうと思います。

①    聴覚で働きたいけどなかなか働けない理由

聴覚分野に興味はあるけど、なかなか働きだす事が難しい理由をご紹介します。

  • 理由① ずばり求人が少ない

  • 理由② 正規雇用が少ない

  • 理由③ 先輩が少ない

  • 理由④ 実習先が少ない

  • 理由⑤ 給料が少ない

全部、「少ない」になってしまいましたが選択肢が少ない(または無い)ために可能性がなかなか広がらないのかな?と感じています。では、理由の1つずつを解説していきましょう。

【理由①】 ずばり求人が少ない

これについては、他の分野(言語・嚥下など)と比較すると聴覚の分野の求人はかなり少ないといった印象を受けます。実際に、自分自身が聴覚関連の求人をIndeeedで毎週のように見ていた時期を思い返すと、自宅からそこまで近く無いクリニックが数件あるかないかといった感じだったかと思います。また、検索範囲を全国に広げると件数は増えますが、それでも半日あれば見終わる程度の求人数なのでかなり少ないと思います。実際に、2022年7月30日に「言語聴覚士 耳鼻咽喉科(エリア指定無し)」で検索してみた結果を添付しておきます。

indeedで「言語聴覚士 耳鼻咽喉科」の検索結果

【理由②】 正規雇用が少ない

  求人を検索された方は仕事の内容もさることながら「雇用形態」もみていると思います。新卒でばりばり働き(稼ぎ)たくても正規雇用が少なく聴覚分野を諦める、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか?今後、耳鼻咽喉科でのSTの重要性が見いだされていけばこの現状も良い方向へ向かうと思うのですが、まだまだ課題が多いのも確かです。また、理由①で検索した結果の雇用形態の内訳がこちらになります。

理由1で検索した結果の雇用形態の内訳

【理由③】 先輩が少ない 

いざ、聴覚分野へ入職しても、しっかりと教えてもらえる環境であるかどうかは、特に専門性の高い言語聴覚士では重要視されている方が少なくないと思います。聴覚といっても職場によってやることは多岐にわたるため、優しい優秀な先輩がいるかいないかは(分野に関わらず)とても重要なポイントなのです。私自身は、聴力検査を長年されてきた先生につきっきりで教えて頂く経験が今の自分を形作ったと思っています。検査の説明、患者さんへの対応、必要な検査の選定など教科書を読むだけではなかなか身につかない技術ばかりだと感じました。

【理由④】 実習先が少ない

聴覚分野に進んだ方で、学生時代に聴覚の実習先へ行かれた方はどのぐらいいらっしゃるのでしょうか?恐らくかなり少ないと思いますが、行かれた方はかなり羨ま・・ではなく先を見越して聴覚の実習先がある学校を選んだに違いないと思います。聴覚分野の実習先が少ないからといって諦める事はありません。これも実体験になりますが、学生時代から聴覚分野に進みたかったので担当する患者さんや見学に入らせていただいた患者さんの聴力がどのぐらいかを意識しながら実習に臨んでいました。その結果、簡易的な聴覚の評価や難聴のある方への対応方法などを実際に経験することができたと思います。

【理由⑤】 給料が少ない

これはどの分野の方も同じかもしれませんが、特に正規雇用が少ない聴覚分野では深刻な問題です。給料というお金の面だけでなく、年間の休日日数が少ないことや福利厚生が薄いなど、待遇が悪いと働きたくても現実的ではないとなる場合も少なくありません。皆さんにもそれぞれの生活があるので、待遇に関する問題はやはり耳鼻咽喉科でのSTの重要性を見出さなければいけませんね。

②    聴覚系STは何をしている?

聴覚の分野でSTは何をしているのでしょうか?思いつくのは聴力検査、補聴器、人工内耳、聴覚障害に関する研究といったところでしょうか。これら全てを行っている病院は多くはありません。個人の耳鼻科クリニックであれば聴力検査や補聴器の調整、そして小児の言語訓練などを主に行っている所が多いでしょう。なので聴覚分野で働きたい方は「自分は聴覚のどのあたりを仕事にしたいか」を考える事もお勧めします。特に無いのであれば経験としてまずは聴覚分野に進むというのも良いかもしれません。

― 聴覚STからのワンポイントアドバイス! ―
「聴覚領域」といって関連する業務は多岐にわたります。興味がある分野をもう一歩掘り下げて考えることで、聴覚領域の中でも、自分が心から取り組みたいことが出来る職場と出会えるようになるかもしれません。

私が耳鼻咽喉科で行っている仕事内容は「オージオメーターを用いた聴力検査」がメインになります。その他にもティンパノメトリーや重心動揺検査、補聴器相談なども行っています。
それぞれが独立した検査というよりも、それぞれを補助するための検査といったイメージを持っていただくと良いかもしれません。例えば、純音聴力検査をしてみて気骨導差がある場合はティンパノメトリーも補助的に行ったり、メニエール病の疑いがある場合は純音聴力検査後に重心同様検査を行うといった流れになります。

また、「きこえにくい」という主訴の方の純音聴力検査結果で、補聴器が適応かな?と思った場合は、日常生活での不便などを聞いたりもします。最初から補聴器を勧める事はあまりせず、話を聞く事で患者さんの本心を探っていきます。
患者さんとコミュニケーションをとりながら、その場で推論し、必要な検査を随時組みあわせ行っていくスキルが必要であると思います。コミュニケーションに関わる仕事を目指していた自分にとっては、大変やりがいのある職場に就けたといつも感謝しています。

③    聴覚系STになるならこれを予習だ!

これから聴覚系の分野で働こうと思われている方や、まだ働き始めて間もない方に、自分自身の経験からこんな知識を持っておくと良いかも、こんな心構えが大切だよ!といった内容をお伝えしていきます。国試対策など学校で勉強した内容だけでは、なかなか臨床での違いに混乱してしまうかもしれませんが、気を楽にして読み進めていただけると嬉しく思います。

【こんな知識を持っておくといいよ編】

まずは何といっても知識です。知識がゼロでは何をすればいいか、どこを見ればいいか、どんな説明が必要か等といったことがなかなか見えてきません。知識についてはどの分野においても大切ではありますが、臨床経験が無いと教科書を読んでもイメージが付きにくく、覚えるのが難しい事と思います(自分がそうでした笑)。

たとえ学校で聴力検査の機械を触っていたとしても、実際に患者さんの聴力を調べるとなると焦ったり、どうすれば良いのかわからなかったりします。最初から上手にできる人はそう多くは無いですが、知識を付けておくこと(イメージを持つこと)は誰にでもできる事です。

そしてここから本題に入りますが、知識については応用ではなくまず基礎を固めておきましょう。純音聴力検査を例にとりますが、教科書レベルの内容を理解していないと、ただ聴力を調べて終わりになってしまいます。患者さんからの質問や難しいケースの場合など、基礎が無いと対処できないなんてこともあります。

きこえにくい方へ検査の説明を行い、理解してもらう、そしてやっと検査が始まります。SLTAやHDS-Rのように教示についてのルールはありませんが、正確に検査結果に導けるよう、いかにわかりやすく、伝わりやすい説明をするか、そして理解して貰うかがとても重要なポイントなのです。

それらをクリアするには、「なんのための検査か」「どんな説明が必要か」「聞こえにくい方へ伝わりやすい方法は何か」等を考える必要があり、考えるためには基礎が無いと考える事が難しいと思います。もちろん基礎があっても初めからスムーズには行えないかもしれませんが、経験年数が長くなれば自分なりのスタイルが出来てくるので心配は無いと思います。

また、教科書だけではなく今の時代はYouTubeや論文など様々な情報をネットで見る事ができます。教科書で得た知識をまた違う角度からおさらいすることで確実に自身の自信へつながると思いますので、余裕があればそれらをフル活用することをお勧めします!
勉強についてはなかなかやる気が出ませんし、働き始めてから色々と学べば良いやと思うのも人それぞれなので否定はしませんが、どうせ働くなら自身のスキルアップのためにも働く前からちょっとだけ頑張ってみませんか?

【こんな心構えが大切だよ!編】

STは『人との関わりに楽しみを感じてもらうサポーター』であるという心構えを私は大切にしています。
 聴覚分野では、きこえについての障害によって、コミュニケーションに課題を抱えている方が多くいらっしゃいます。「聞き返すのが申し訳ない!」「人と関わるのが嫌になってきた」など、人とのコミュニケーションを楽しく感じることができなくなった方も少なくありません。聴覚分野のSTは難聴の事だけでなく、難聴者の心理を十分に考えなくてはならないと思っています。STは、取りにくくなったコミュニケーションを少しでも改善し、『人との関わりに楽しみを感じてもらうサポーター』であるという心構えが大切だと私は思います。そのことを常に意識しながら、実際に難聴者が家族や友達、そして時にはSTとのコミュニケーションを楽しんでもらえるという経験ができた時、聴覚領域のSTとしての一歩を踏みだしたと感じられるのではないでしょうか。

 知識と心構えは、自身の経験から大切だと思った事になりますので、STとして皆様の思いも大切にしてください。

― 聴覚STからのワンポイントアドバイス! ―
『人との関わりに楽しみを感じてもらうサポーター』であるという心構え、
ぜひ日頃から意識されてみてください。

最後まで読んでいただき、聴覚分野への一歩を踏み出す勇気になれば幸いです。
次回は、聴覚分野へ一歩踏み出した方への内容をお伝えしたいと思います。

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国内外11人の言語聴覚士を中心に執筆。このmagazineを購読すると、言語聴覚士の専門領域(嚥下、失語、小児、聴覚、吃音など)に関する記事や、言語聴覚士の関連学会に関する記事を読むことができます。皆さんからの体験談など、様々な記事も集めて、養成校で学生に読んでもらえるような本にすることが目標の一つです。

国内外の多くの言語聴覚士で執筆しているので、言語聴覚士が関わる幅広い領域についての記事を提供することが実現しました。卒前卒後の継続した学習…

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