長澤沙也加🦩

いろいろ書いています!

長澤沙也加🦩

いろいろ書いています!

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

十年後

 ニルバーナの、赤ちゃんがプールで泳いでいるジャケットのアルバムを貸してくれた男の子は、ロミに顔が似ている女の子と後に結婚するが、そのときはロミの肩を掴んだ。廊下の、階段の手前だった。  ロミがその高校を選んだのは、父の母校だったからだ。高校には行きたいと思って行ったのではない。みんな行っているから、自分もきっと行かなくてはいけないのだろうと思った。  ロミは勉強が嫌いで、小説と漫画を読むことと書くことと、お菓子作りが好きだ。中学時代は授業中にほとんど先生の話を聞かず、家に帰

有料
0〜
割引あり
    • レタス108円

       書き終わった小説を読み返している。  どこの賞に送ろうかな。去年は6作ぐらい応募した。今年もたくさん書いて、たくさん送りたい。    キッチンに行ったら、レンジの上に、黄緑色の小さい毛虫がはりついていた。  来て来て! と子どもたちを呼んで、毛虫を見せてから、ティッシュでくるんで、庭にはなした。  虫も命だからね、と最近息子がよく言う。多分、幼稚園で習ったのだろう。  車で食料の買い出し。レタスとお菓子とお惣菜とアイスを買う。レタスが1玉108円。洗ってちぎって味をつける、

      • かわいいかまぼこ

         息子の幼稚園までの坂道を歩く。  歩いていると、足の裏からどんどん忘れていく。生まれたときには覚えていたことは生きているとどんどん忘れる。死ぬときに、ぜんぶ思い出せたらいいな。  普段のお迎えはバスなんだけど、昨日は避難訓練で幼稚園まで迎えにいった。  なんの行事をやっても必ず泣いていた息子は、年長組になり泣かなくなった。  避難訓練の、地震が来ました、という放送も、ちょっと怖かったけど泣かなかったんだよ、ぼくは、泣かなくなったんだよ、と帰り道で教えてくれた。    娘の運

        • どこかにたくさんある

           高校のときに、犬に追いかけられたことがある。  高校には自転車で通っていて、途中に林の中を抜ける道があって、そこを走っていたら、犬が追いかけてきて、ペダルを漕ぐわたしの足を噛もうとした。  犬は、確か黒だったと思うんだけど、わたしは実家にあったスティーヴン・キングの『クージョ』という文庫本の表紙にあった黒い犬の絵を見ていて、その犬はセントバーナードっぽくて、目は赤く光っていた。  怖かった記憶と、怖い犬の本の表紙が、記憶の中で混ざって、追いかけてきた犬を黒い犬だと思っている

        • 固定された記事

        マガジン

        • 文章
          77本
        • 日記
          110本
        • うろ覚え
          4本
        • お笑い
          8本
        • お知らせ
          4本
        • 7本

        記事

          お菓子しか作らない厨房の匂い

           まだわからないことがたくさんあるのでわかるようになりたい。  本を読むのが一番いいような気がして、できるだけたくさんの本を読みたい。  ぺらぺら漫画を小学3、4年生ぐらいのときにとてもたくさん描いていて、昨日久しぶりに描いたらうまく描けなかった。文藝春秋の端っこに描いたんだけどぶ厚すぎたのかもしれない。文藝春秋の裏には大好きなかんのやのゆべしが載っていた。  料理しかやらない厨房の匂いと、お菓子しか作らない厨房の匂いはけっこう違う。  ケーキ屋さんの、ショーケースがある

          お菓子しか作らない厨房の匂い

          消防士がウインクをする

           少年は、両親とうまくいっていない。  ある日の夜。少年の部屋のクローゼットから、馬に乗った騎士が飛び出してくる。続いて、小さなおじさんが、7人ぐらいだったと思うんだけど、出てきて、自分たちは追われている、と言って、巨大な悪魔の顔面だけのやつが追いかけてくる。少年とおじさんたちは、クローゼットに逃げ込む。  クローゼットの中はタイムマシンみたいになっていて、少年とおじさんたちの冒険が始まる。  子どもの頃観た映画だ、1980年代。  調べたら、バンデットQという映画だった。

          消防士がウインクをする

          車種をほとんど知らない

           よく行く公園の途中には大きな洋品店やファーストフード店やホームセンターが並んでいる。駐車場は道路側にあって、車がこちらにおしりを向けて停まっている。  公園からの帰り道、子どもたちと手を繋いでぶらぶら歩いていて、昨日は日曜日で、ぎっしり駐車場に停まっている車のおしりをなんとなく眺めていた。  車のおしりには、必ず車種が書いてある。英語で書いてあるのを、頭の中で読んでいく。  アルファード、ボクシー、タント、フィット、ヴェルファイア   こういう、車種の名前は、英語をぱっと見

          車種をほとんど知らない

          新しい小説

           書いている小説が、3万字ぐらい溜まった。  原稿用紙にすると70枚以上になっているので、あの賞とあの賞にはもう長さだけなら出せるなー、と、けどまだ終わっていないので、100枚ぐらいにはなるかなあ、という感じ。  一昨年ぐらいに佐々木敦さんの『新しい小説のために』を読んだ。最初は電子書籍で買ったんだけど、面白い面白い! となり紙でも読みたいとなり紙の本を買い読んだ。  それから、人称について考えるようになり、人称がとても不思議だという気持ちで、昨年からそういうふうに書いて今も

          増築

           散歩したりドライブしていて、植物、動物、建物、石が気になる。  近くの緑道の土手は、定期的に職人の人がやってきて手入れをしている。直後は平らに刈られた雑草は、ちょっとするともうわさわさ生い茂っている。  庭に置かれた大きな石。どうやって運んだのか、なぜ石がある庭はかっこいいのか、家主はどのようにその石を選んだのか。石の形、色、筋の入り方、石は動かない。石は静か。  鴨、サギ、スズメ、カラス、鳩。鴨は、緑道に流れる沢をすいすい泳いでいる。  古い家に、新しく建てられた家が並び

          変な話

           昨日ある動画を観ていて、そこで喋っている人が繰り返し「変な話~」と言っていた。その言葉を聞くと、必ず思い出すことがある。  17年ぐらい前に、わたしはレストランでパティシエとして働いていて、同僚に同い年の女の子がいた。  その子は、同じ店の料理人の人と付き合っていて、ある日、賄いを食べながら話していたら、 「〇〇さん(女の子の彼氏)てさ、よく、変な話、って言わない?」  と訊いてきた。  確かに、その料理人の人は、「変な話」ってよく言っているかも。そう返すと、その子は、 「

          ほんとうのにせもの

           ドラマを観ていて、演技ってすごいなーと思う。  怒ってないのに怒るとか、悲しくないのに泣くとか、自分ひとりで部屋にいるときだって難しいのに、周りにいっぱい人がいる中でそれをやるって、相当すごい。  ドラマを多分ここ十年ぐらいはぜんぜん観ていなくて、久しぶりに観始めた理由は自分でもわからない。突然観たくなって、観ながら泣いたりしている。  病院の話なんだけど、登場人物の何人かが、ぼそぼそ喋る。声を張っていなくて、セリフっぽくない。  ドラマや舞台用の、演技中の声の出し方は、そ

          ほんとうのにせもの

          イカの白いふわー

           イカの産卵シーンを何日か前にテレビで観た。  イカは産卵するとすぐに死んで、ふわー、と海面に向かう。  そういう、卵を産んですぐに死んでしまう生き物がいろいろいるのは知っていたし、前にも何度か映像で観たような気もするけど、その日のイカがふわー、と浮かんでいく様子に、なんだかすごく不思議な気持ちがした。  たった今まで、卵を産み切るまでには生きていた命が、産み終えたらすぐ、白くふわふわと、もう自分から動くことはなく、上へ上へと、流れるままに浮かんでいく。  そして、さっきまで

          イカの白いふわー

          せんせい、あのね

           文学フリマに行き、本を何冊か買わせてもらい家で読んでいて、そういえば、同人誌というのを買うのは人生で初めてだな、と思った。  小説を書く前や書き始めたばかりのころ、漫画の同人誌があるのはなんとなく知っていたけれど、小説にもあるのは知らなかった。  本は、大きな出版社から出されているもの、だから本を出したいのなら賞に応募する、という流れを当たり前と思って続けているうちに、文学フリマという催しがあるのを知った。  自分で作った本を、自分で売る。  買う人は、本を作った人から、直

          せんせい、あのね

          湾だ!

           昨日は、初めて文学フリマに行ってきた。  人が多いとは聞いていたけれど、本当に多かった。  それで、乗換案内で、流通センターまでの経路を調べたときに、モノレールに乗るんだ、ということはわかっていたんだけど、実際に乗ることになったとき、そうか、わたしはモノレールに乗るんだ、とわくわくした。  東京湾と、レインボーブリッジが見えた。大井競馬場って、なんか聞いたことあるなって思っていて、帰ってきてから、そうだ、M1の敗者復活戦をやっていた会場じゃん! とひとりで興奮していた。  

          多分踊っている

           ドーナツが食べたい、と階段をのぼりながら娘が言う。階段のすぐ脇にドーナツ屋があり、その隣はパン屋で、クロワッサンも食べたい、と娘が続けるので、どちらかひとつね、とわたしは言う。  絵は息子の幼稚園の年長さん全員、あと他の幼稚園や保育園の子のも飾られていていて、探して、見つけて、写真を撮る。  2階にはフードコートがある。  息子はフライドポテト、娘はうどん。フライドポテトは少々お時間かかりますとブザーを渡され、少し離れたうどん屋の列に並ぶ。  並んでいたらブザーが鳴って、娘

          多分踊っている

          猫はかわいいし

           最近は、小説をあまり読んでいない。  読むとどうしても、わたしにはこのように書けないな、とうらやましい、寂しいような気持ちになってしまう。  賞をとってデビューする人をうらやましく思う。  Xの投稿を、ちょっと見るだけでたくさんの情報が流れ、わたしが選ばなくても勝手にどんどんやってきて、うらやましい、これは嫌だな、楽しい、いろんな感情が、勝手に出てくる。  うらやましい、と思うのは、自然なことでしかたいのだと思う。今のわたしは、そのような向きになっている。  けれど、賞がう

          猫はかわいいし