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システム思考:彼らはどこに向かうのか(大成建設の経営戦略)

■優先すべきは財務ではない

「財務面の精華のみに神経を集中させる偏狭な態度では、ロイヤリティや長期的な成功のための道筋は生まれてこない。そういう態度では、組織は「邪道」への危うい斜面を滑り落ちて言ってしまう傾向がある。その場合は「人」よりも「カネ」が幅を利かせ、顧客や従業員、取引業者その他多くのビジネス・パートナーが少しでも隙を見せたら、そこにつけ込んで利用するのが日常茶飯事になる。」
(フレデリック・ライクヘルド ロイヤリティ戦略 より)

これは笑い事ではない。
大成建設は、今年(2023年)に顧客の期待を裏切る大きな二つの事件を引き起こしている。

○札幌高層ビル施工不良 大成建設が「品質管理見直す」と謝罪
05月12日

大成建設が札幌市中心部で建設していた26階建ての高層ビルをめぐっては、ことし3月、鉄骨の柱などの組み立てで基準を超えるずれが複数見つかったほか、その精度について発注元に対し、虚偽の報告をしていたことが明らかになりました。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230512/7000057501.html

○世田谷区役所本庁舎の建て替え 工期先延ばし最大8カ月 区長「賠償も協議」
2023年5月31日

 建て替えは整備費約四百五十億円で、二一年七月から三期に分けて行う計画。同社によると十階建ての東棟の工事で、コンクリートを固める作業の工期などを短く算定していたことが原因。新たな工期は六月九日までに区に報告する。完成時期への影響について検証中で、さらに遅れる可能性も否定しなかった。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/253512

こうした事件の背景に、「信頼より財務を優先」という組織風土がなかったのかを懸念する。

■大成建設の再発防止策

こうした事件事故の後では、一般的には検証委員会を立ち上げて再発防止策を発表することが多いはずなのだが、こうした情報は大成建設のサイトを見ていても一向に見つからない。

その中で発表された「2023年3月期 決算説明会資料」を見ると驚く。

下記の様に、ほとんどがお金の話である。

【中計数値目標未達要因(営業利益)】
①事業量拡大に向けた生産体制の整備の遅れ
②厳しい競争の中で受注した複数の低採算大型工事の影響
③高騰した建設資材価格に対する価格転嫁の遅れ

【中計最終年度及び次期中期経営計画に向けた施策】
①適正な事業量の確保と生産体制の立て直し
②「利益重視主義」の再徹底
③全社一体となった価格転嫁交渉の継続

コンプライアンスの話などどこにも出てこない。

■学習する組織

大成建設の経営理念としては下記が上げられている。

当社は、「人がいきいきとする環境を創造する」という経営理念の下で、建設業を中核と する企業活動を行い、安全で快適な社会基盤と生活環境の整備を通じて社会に貢献し、企 業として持続的に発展することを目指している。

行動指針なども明示されている。
https://www.taisei.co.jp/corp/rinen/

しかし、彼らの活動は金儲けであり、「そこに住む人々」に思いをはせているとは思えない。ピーターセンゲの言う「学習する組織」には、「自己マスタリー」「共有ビジョン」「メンタルモデル」「チーム学習」をキーとしている。

そこで働く人々が、自らの理念とビジョンを持ち、組織の理想を自分事として受け入れる中で、価値創造の発見を続けてゆくことができると説く。

大成建設で働いているわけではないが、「金儲けができれば何をしても良い」と考える人たちが集う会社に未来があるとは思えない。

<閑話休題>

(参考記事)

○大成建設、前代未聞「ビル工事やり直し」の内幕
高層ビルの工事で虚偽報告と精度不良が発覚
2023/04/05
https://toyokeizai.net/articles/-/664262

(ChatGTPに聞いてみた)

コンプライアンス違反が続く理由は何か
ChatGPT
コンプライアンス違反が続く理由は以下のような要素が考えられます。

1.不適切な組織文化:組織の価値観や行動基準がコンプライアンスを軽視する傾向がある場合、従業員はコンプライアンスに対する重要性を理解せず、ルールを無視する可能性が高まります。

2.経済的な圧力:企業は利益を追求することが求められますが、その過程でコンプライアンス基準を犠牲にする場合があります。業績目標の達成や競争力の維持に焦点を当てることで、不正行為やルール違反が発生することがあります。

3.リソース不足:コンプライアンスには人的および財務的なリソースが必要です。組織が適切なトレーニング、監査、モニタリングなどのコンプライアンス活動を遂行するためのリソースを割り当てていない場合、違反が発生しやすくなります。

4.複雑な業界環境:一部の業界では、複雑な法的要件や規制、市場の変化が存在します。これらの要素が混乱を引き起こし、コンプライアンス違反のリスクを増大させることがあります。

5.不適切な経営体制:組織のトップレベルからのコンプライアンスへの真摯な取り組みが欠けている場合、従業員はコンプライアンスを重視しない傾向が生じます。経営陣がコンプライアンスに対して明確な指針を示さず、模範となる行動を示さない場合、組織全体のコンプライアンス意識が低下することがあります。

これらは一般的な要素であり、組織や業界ごとに状況は異なります。コンプライアンス違反を防ぐためには、組織文化の確立、適切なリソースの割り当て、トップレベルのコミットメント、適切な教育と監視が重要です。

以上

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