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研究論文は研究者が書くのに、なぜ発明は弁理士が書くのか?

 こんにちは😊弁理士のnabです。本日は、「論文は研究者が書くのに、なぜ発明は弁理士が書くのか?」というテーマでお話していきます。

 表紙画像は、みんなのフォトギャラリーよりいただきました。大水音々さんありがとうございますm(__)m。

(1)論文は研究者が書く

 理系の大学を卒業した方なら、お判りでしょうが、研究論文は、通常研究者本人が書きます。自分で実験して、その技術に最も詳しい者は、その研究者ですから、当然と言えば当然です。

 でも、企業の発明を、発明した技術者が書くことは、殆どありません。発明は、特許の専門家である弁理士が書きます。なぜでしょうか?

(2)特許は財産権

 特許権は、財産権です。特許権の財産的価値は、特許出願の書き方如何で、変動します。特許権の財産的価値を最大化するため、専門の代理人である弁理士が存在するわけです。

 確かに、発明の技術に関し、最も良く精通しているのは、その開発担当者(技術者)です。しかし、技術に精通しているからと言って、財産的価値の高い特許権(文書)を作成できるわけではないのです。

(3)事例:3Dプリンターで建つ家の特許出願

 先日、3Dプリンターを使って24時間で建てる家を開発したベンチャー企業が話題となりました。家の価格は500万円だそうです。斬新なビジネスアイデアです。開発したベンチャー企業の代表者さんが特許出願していました。

【発行国】日本国特許庁(JP)
【公開番号】特開2020-139380(P2020-139380A)
【公開日】令和2年9月3日(2020.9.3)
【発明の名称】Sphere(スフィア)家は24時間で創る
※代理人出願なし

公開公報2020‐139380より抜粋
公開公報2020‐139380より抜粋(Jpratpat画面)

 この特許出願は、代理人出願ではなく、出願人本人が書いているようです。専門家がみれば一目で分かりますが、非常にもったいない内容です。

(4)特許権を取得する為の記載要件

 特許権を取得する為に、発明の属する技術分野における当業者が、請求項に記載された発明を実施できる程度に、明細書等は、明確かつ十分に記載されている必要があります。

 では、具体的に、今回ピックアップした特許出願の明細書には、請求項に記載の発明を実施できる程度に記載されているかを検討してみましょう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 3Dプリンターで24時間以内に球体の家を創ることを特徴とする。

公開公報2020‐139380 請求項1を抜粋

【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態を、図1に示す。3Dプリンターを用い球体の家を施工する。

公開公報2020‐139380 実施形態(明細書)を抜粋

 「3Dプリンターで24時間以内に球体の家を創る(方法?)」という発明に対し、明細書の実施形態には、「3Dプリンターを用い球体の家を施工する」と記載されているのみで、具体的に用いた素材の名称、コーティング剤の名称、3Dプリンタの型番や形状、吐出口の形状、3Dプリンターの製造条件(吐出量、温度条件、乾燥時間など)、製造手順などが一切明記されていません。

 これ、どうやって24時間で作るの?ってつっこまれる可能性があります。もし、記載要件違反だと審査で判断されると、出願は拒絶され、特許権になりません。技術内容を公開したのに、この発明の財産的価値は0円になってしまいます。

(5)まとめ

 思いついたビジネスアイデアが売れ行き好調となっても、他社が模倣してきたら、優位性を持続するのは難しくなります。特許権の取得は、優位性を持続する為の有効な手段です。

 しかし、特許出願の稚拙さにより、事業を独占実施できるチャンスを失う場合があります。

 弁理士に依頼した場合、特許の権利化にかかる料金は、1件70万円程度です。この料金は決して安くはありません。しかし、その料金をケチって、財産価値を大きく減らしてしまっては、本末転倒です。

 発明を考えついたら、信頼できる弁理士に相談してみて下さい。弁理士は、あなたのビジネスアイデアの価値を最大化してくれるでしょう。

 最後までおつきあい頂きまして、ありがとうございました。




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