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今日のジャズ: 4月3-4日、1981年@オランダ

Apr. 3&4, 1981 “The Days of Wine and Roses” by Michel Petrucciani, Jean-François Jenny-Clark & Aldo Romano at Studio Spitsbergen for Owl (MICHEL PETRUCCIANI)

キーボードから始まりドラムやパーカッションまで電子楽器が多用されポップ音楽が全盛期を誇った80年代に、フランスのOWLレーベルによって欧州で録音された純ジャズ演奏。本作の前年に同じトリオ編成のYMOによるライディーンが発売されていて大ヒットした、そんな時代。

曲は1962年度アカデミー歌曲賞に選定された「ムーンリバー」でも名高いヘンリーマンシーニが作曲したスタンダード作品。

生まれながらの障害を抱えて身長1mに満たない体ながら、力強く生命の息吹を感じさせる感受性の高いフランス人ピアニストによる演奏は、4月の欧州の寒さが日差しの暖かさで徐々に和らいでいる初春の雰囲気を表現しているかのよう。

この演奏のクライマックスは3:35以降の16部音符単音連打のドラマチックなピアノの旋律。録音の進化によってダイナミックレンジが左右上下に広くなり、終始繰り広げられるドラムのブラシ奏法のきめ細やかさとシンバルの鮮やかさが再現可能となっている。

ベースの音は、生音を基礎にしながら、70年代の傾向を引きずってか増幅気味の中音寄りの鳴り方だが、米国での電化の普及を横目に、伝統を重んじる欧州では、このようにクラシックなスタイルの演奏と録音を継続、結果、行き過ぎへの警鐘となり、90年代に向けて、ジャズの主流は生音による原点回帰に向かっていく。

ペトルチアーニは、スタインウェイ公認ミュージシャンとしてのイメージが強いが、デビュー初期ということもあってか本作ピアノの音はスタインウェイっぽくない。

ペトルチアーニとスタインウェイ

スタインウェイに比して、ピアノの響きの揺らぎ方に特徴があり、且つその余韻が短くて、全般的に高音に寄った音色。何処となくチェンバロのような鳴り方をする。

本作は、オランダの田舎町、アムステルダムから車で二時間の距離にある、1870年代に建設された農場の納屋を改装したスタジオで、宿泊施設も完備、都会の喧騒から離れた落ち着いた環境で収録できるそう。その名には、ノルウェー領の北極圏にある「スピッツベルゲン」という地名が付いている。1596年にその地に到達したオランダ人探検家が当地の険しく尖った山々の姿を見て、諸島の名をオランダ語の「spits (尖った)」と「bergen (山々、山地)」を合わせて「Spitsbergen 」と名付けた由。スタジオはオランダ繋がりでの命名だろうか。因みにこの地名は邦楽ロック人気バンド、スピッツのファンクラブの名前にもなっている事がわかった。

スピッツベルゲンの風景
世界最北の町の一つらしい
収録スタジオの風景
尖ってもいないし、山も見当たらない

そのスタジオを調べてみると1920年代のプレイエルのピアノが配置されている事が分かった。プレイエルというと、パリで製造され、ショパンが愛したピアノ。全くの推測に過ぎないが、本作でペトルチアーニは、そのクラシックなピアノを弾いているのではないか。そう仮定して聴いてみると、ショパンとしっくりくる音色なのかもしれない。1920年代のプレイエル演奏動画があったので、興味のある方は比較してみてください。やっぱり違うかな、、、

最後に、ペトルチアーニによるスタインウェイ演奏に興味があれば、こちらからどうぞ。ピアノの音色に荘厳な重みが感じられます。

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