うつわ専門Webメディア|日本橋Art.jp -utsuwa-

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最近の記事

「名誉を保ち永久の利益を図る」有田の名窯 300年を生き抜く戦略

「君子の交わりは、蘭の宝の香りの如し」──中国の古典『易経』の言葉から名付けられた香蘭社。その美しい名のごとく、華やかな色絵や、どこまでも薄く精緻な造形の焼き物は、世界各地の博覧会で金賞を受賞し、日本の美意識と技術を広く知らしめてきた。 一方で、工業製品を明治期から手がけ、さらに近年では半導体用部品で売り上げを伸ばすなど、伝統工芸の枠に留まらない多彩な顔をもつ。 窯業界のレジェンドにしてパイオニア、香蘭社を率いる15代深川祐次社長に話を聞いた。 340年の歴史を貫く精神と

    • 「作品は、我が子であり自分の分身」伊万里の土に息吹を吹き込み続ける職人の思いとは

                     【インタビュイー】窯元・松浦唐津 今岳窯 安土桃山時代から唐津焼が焼かれていたとされる今岳の里。この地で昭和41年に「今岳窯」を開いた溝上藻風さんは、人間国宝である井上萬二先生に師事したという人物だ。現在は息子とともに古唐津の伝統を守りながら、美しくも温もりあふれる器を作り続けている。 「今は、孫たちと笑顔で過ごす日々が精一杯です」と笑う溝上さんだが、焼き物への探究心はますます深まるばかりだ。 長く続けてきたからこそ思う陶芸の世界が抱える課題と

      • 追究する「用と美」。砥部焼の伝統を守り、受け継がれた142年の歴史と、今後の展開に迫る

                         【インタビュイー】梅山窯・岩橋和子 「四国一の焼き物の里」とも呼ばれる愛媛県伊予郡砥部町は、今から約240年前から続く砥部焼の産地。現在は80軒ほどの窯元があり、古き伝統を守りながらも、各々の持ち味を生かした作品を作り続けている。 そんな砥部焼のなかで最も古い歴史をもつ「梅山窯(ばいざんがま)」は、創業142年。代表取締役兼社長の岩橋和子さんに話を伺った。伝統ある窯元を継承するうえで、どのような思いを抱いているのだろうか? 「一つ一つ手

        • 「どんなことにも負けずに生き抜く」毎日が楽しくなる魚の器に秘められたメッセージ

                  【インタビュイー】陶芸作家・祁答院いづみ窯 石神いづみ 美しい自然に囲まれた九州・鹿児島県祁答院町で、「祁答院いづみ窯 」を営む、陶芸家・石神いづみさん。 魚や動物をモチーフに、明るい色使いで個性あふれるお皿やコップ、オブジェなどの大きな作品も制作している。独自の世界観が表現された器は、見る人・使う人の生活に明るさと楽しみを連れてくると高く評価されている。 今回は、石神いづみさんに陶芸を始めたきっかけや子ども時代のこと。唯一無二の世界観を表現し続ける原動力

        「名誉を保ち永久の利益を図る」有田の名窯 300年を生き抜く戦略

          「作品は生きざま。だからこそ人にも自分にも正直に向き合いたい」想像力を駆使し、自己を高めるものづくりへの想い

                          【インタビュイー】陶芸作家・山崎勝実 オートバイが好きでエンジニアとして自動車会社に勤めたのち、早期退職をして陶芸作家の道へ進んだ山崎勝実さん。穴窯の偶然性と必然性の両面に惹かれ、穴窯での作品づくりにのめり込む。 エンジニアとして培った論理的思考、人生で磨き上げた感性、人との付き合い方、想像力。そのすべてを結集し作品にぶつける。それはまさに作者の生きざまだ。生きざまを自分を嘘なく正直に表現するために、どのようにものづくりに向き合っているのか

          「作品は生きざま。だからこそ人にも自分にも正直に向き合いたい」想像力を駆使し、自己を高めるものづくりへの想い

          「歴史ある窯元だからこそ、伝えられることがある」備前焼の未来にかける思いとは

                          【インタビュイー】備前焼窯元・宝山窯 備前焼は日本を代表する焼き物、「日本六古窯」のなかでも最も古い歴史を持つ。 ルーツは古墳時代と言われ、自然の恵みを活かした器は堅くて割れにくく、庶民の日用品として長く愛用されてきた。さらに1982年には、国の伝統工芸品に指定されている。 岡山県備前市伊部で、代々続く備前焼の窯元、「宝山窯」。その歴史は室町時代末期にさかのぼる。 先人たちが残してきた伝統や製法を守りながらも、新しいことにチャレンジする陶芸

          「歴史ある窯元だからこそ、伝えられることがある」備前焼の未来にかける思いとは

          「偶然を利用し産まれた作品のパンチ力を見てほしい」木を生かした器や挑戦的な漆のアート

                           【インタビュイー】木工・漆作家Shiki 漆を使った椀や折敷などの器や、一輪挿しなどの花器やその飾り台、キャンバスに漆で描くアート作品を手がけているShiki craft works。落ち着いた風合いと、繊細ながらあたたかみのある器や花器は、ミドル世代を中心とした幅広い層から人気を集めている。 また、伝統的な漆のイメージとは異なる、粋なアートワークも注目すべき活動のひとつだ。 異業界から転身し、独自のスタイルをさらりとものにしている人は、か

          「偶然を利用し産まれた作品のパンチ力を見てほしい」木を生かした器や挑戦的な漆のアート

          「やりすぎだと先生に言われるくらい、釉薬の実験を重ねました」日常を楽しくする“色”にかける想いとは

                            【インタビュイー】陶芸作家・Enkel 釉薬を操り、日本ではあまり見かけないようなカラフルなうつわを作り出す、陶芸作家の室伏真美さん。 大学卒業後ハウスメーカーで住宅設計をしていたが、夫の転勤がきっかけとなり、以前から興味があった陶芸の世界へ飛び込むことを決意。2児の育児を担いながら横浜いずみ陶芸学園に入学し、一から陶芸を学んだのだという。 そんな室伏さんが在学中にハマったのが、さまざまな色を作り出す「釉薬」の魅力だった。そこで室伏さんに

          「やりすぎだと先生に言われるくらい、釉薬の実験を重ねました」日常を楽しくする“色”にかける想いとは

          「うつわから食生活を豊かにしていきたい」普段使いができるうつわに込める思いとは

                       【インタビュイー】陶芸家・亜登武窯 武田謙二 光沢があり、自然な風合いを持つ備前焼のうつわ。耐火度の高い土で作られ、電子レンジやオーブンで調理ができる。 そんなうつわを生み出すのは、陶芸家の武田謙二さん。作品を焼く登り窯はご自身で作られたそう。ブランドである「ONI BIZEN」は日本だけでなく、海外からも注目を集めている。 備前焼の伝統にとらわれず自由な発想で制作を続ける武田さんに、うつわ作りの喜びや苦労、今後の展望などをうかがった。 いいうつ

          「うつわから食生活を豊かにしていきたい」普段使いができるうつわに込める思いとは

          「作品づくりはスピリチュアルとのバランスがとれて集中できる」伝統を残しつつ自身の感性を表現する絵付けの可能性に挑戦する

                          【インタビュイー】陶芸作家・相上暁美 アメリカ留学をきっかけに陶芸の道を歩み始めた工房明泉の相上暁美さん。 自分の中の「陶芸」と「スピリチュアル」の2本柱を成長させ、バランスをとりながら作品をつくるという。 皿をキャンバスに見立て、有田焼伝統の呉須(ごす)を使い絵付けをする。モチーフはスピリチュアルな感性からくるものと、中世ヨーロッパ、中近東のパターン。そのユニークな図柄からメッセージを感じ取る人もいて、固定ファンも多い。 今回は、陶芸家・

          「作品づくりはスピリチュアルとのバランスがとれて集中できる」伝統を残しつつ自身の感性を表現する絵付けの可能性に挑戦する

          「作品には人生が表れる」伝統と機能を掛け合わせた唯一無二の漆塗りガラス

                         【インタビュイー】ガラス作家・藤井 嘉彦 和歌山県海南市の黒江で「塗り工房ふじい」を営む藤井嘉彦さん。 紀州・黒江は、山中塗り、会津塗りと共に漆塗りの三大生産地。そんな漆の街で生まれ育った藤井さんは、世界で初めてガラスと漆塗りを組み合わせた食器を開発。テーブルウエアの世界に革命をもたらした。 日本の伝統が持つ美しさと西洋の機能性を掛け合わせた食器は、藤井さんにしかできない唯一無二の作品として、国内外から高い評価を得ている。 流行にとらわれず、

          「作品には人生が表れる」伝統と機能を掛け合わせた唯一無二の漆塗りガラス

          「過ぎ去り、消えゆくものを忘れずに見つめ続けていくことに意味を見出す」悲しみを美へと昇華し、存在自体で人々と対話できる作品づくり

                         【インタビュイー】ガラス作家・石橋 和法 「暮らしに彩りを」をテーマにした、吹きガラスの器をつくっている石橋和法さん。 作品にはつるりとした透明感のあるものもあれば、すりガラスのように仕上げられたもの、粒状の模様がちりばめられたものなどがあり、同じつくりての作品というと、少し意外に思う人もいるかもしれない。 しかしながら、手におさまりのよさそうな柔らかなラインとやさしい風合いは、どの作品にも共通しており、それがとても印象に残る。 そんな多彩な器

          「過ぎ去り、消えゆくものを忘れずに見つめ続けていくことに意味を見出す」悲しみを美へと昇華し、存在自体で人々と対話できる作品づくり

          「過ぎ去り、消えゆくものを忘れずに見つめ続けていくことに意味を見出す」悲しみを美へと昇華し、存在自体で人々と対話できる作品づくり

                        【インタビュイー】ガラス作家・保木 詩衣吏 自然をモチーフに、板ガラスに釉薬を塗り、重ね合わせ、焼いて、磨いて、作品をつくる、ガラス作家の保木詩衣吏さん。 自然豊かな岐阜県飛騨地方に生まれた彼女は、雪深い土地で芽吹いたり、消えたりする自然の表情に尊さと切なさを感じ、雪や落ち葉、泡など、自然の中で朽ちて消えていくものを板ガラスに描き、「溜める」「留める」をテーマに作品を制作している。 武蔵野美術大学で学び、富山ガラス造形研究所で技術や表現手法を探求

          「過ぎ去り、消えゆくものを忘れずに見つめ続けていくことに意味を見出す」悲しみを美へと昇華し、存在自体で人々と対話できる作品づくり

          「平和を願いながら、美しいと思う作品を全力で作っていく」美しさを追求する思いに迫る

                         【インタビュイー】陶芸家六代・小川文齋 京都五条坂で150年続く文齋窯の六代目で、陶芸家の小川文齋さん。 人と人の輪をモチーフにした作品を長年作り続けてきた。 また緑色に魅せられた小川さんは、これまでに美しい緑色の作品を数多く生み出してきた。 最近ではその作品から「緑色の人」というイメージがすっかり定着したそう。 さらに、家の庭に飛んで来たとんぼから先代のメッセージを感じて、作品づくりに変化があったという。 小川さんに作品に込める願いや今後

          「平和を願いながら、美しいと思う作品を全力で作っていく」美しさを追求する思いに迫る

          「伝統工芸の土台の上に、いかに新しいものを築いていけるか」山中漆器の伝統を守りながら挑戦を続ける

                  【インタビュイー】         木地屋・漆器素地メーカー株式会社匠頭漆工 久保出 章二 漆器の産地として有名な石川県。 特に山中温泉地区は「木地の山中」と言われるほど、木目の美しさや木の素材を活かした漆器作りで有名な地域だ。 「木地」とは製品の形に削り出された、漆を塗る前段階の木の器のこと。 この木地作りを専門とする職人である木地師として、「匠頭(しょうず)漆工(しっこう)」の2代目社長を務めるのが久保出章二さん。実に50年以上に渡って器を作り続けて

          「伝統工芸の土台の上に、いかに新しいものを築いていけるか」山中漆器の伝統を守りながら挑戦を続ける

          「実物の桜ってもっと白いでしょ、でも桜のイメージはピンクだからそれを大事に描いてます」桜の作品に込める思いに迫る

                           【インタビュイー】陶芸家・小畑 裕司 桜が繊細に描かれ、ピンクの発色が美しい有田焼のうつわ。「ここにしかない桜がある」。そんなふうに見る人を魅了する作品を生み出すのは、陶芸作家の小畑裕司さん。 小畑さんが描くピンクの桜は、"Obata Pink"と呼ばれ、海外でも人気を集めている。ニューヨークで個展を行い、制作にも変化があったという。 小畑さんがピンクの桜を描くようになったきっかけや、作品に込める思いなどをうかがった。 一人前の陶芸作家に

          「実物の桜ってもっと白いでしょ、でも桜のイメージはピンクだからそれを大事に描いてます」桜の作品に込める思いに迫る