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恋焦がれ、夢覚める

「おはよう、誕生日おめでとうひまり」

最高の目覚めでアタシは誕生日の朝を迎える。
大好きなお姉ちゃんに、1番に祝ってもらえた。

「おはよう!ありがとうお姉ちゃん!」

アタシは向かいのベッドに座るお姉ちゃんにがばっと抱きつきにいく。

「ふふ、ひまりは朝から元気だね」
「アタシは元気が取り柄だからね!」

微笑むお姉ちゃんにつられてアタシも笑みが零れる。
お姉ちゃんが楽しいとアタシも楽しい。
お姉ちゃんが嬉しいとアタシも嬉しい。

今日は最高の一日になりそう!

​───────

リビングへ行くとパパとママもおめでとう!と祝ってくれる。
今日は夜にアタシの誕生日パーティしてくれるって!
誕プレはその時までお預けって言われたからもどかしい気持ちを抱えながらもちゃんとガマンする。
アタシだってガマンしなきゃいけないときはガマンできるもんね!

いつもよりちょっぴり豪華な朝ごはんを食べて、学校へと向かう。
高校へ行くお姉ちゃんと途中で別れて、いつもの道を歩く。

「ひーまーり!ハピバ!」
「おめでと〜!!」

通学路で同クラで同じバスケ部のみっちーとヨーコが誕生日を祝ってくれる。

「ありがと〜!!愛してるぜ!」

イツメンと騒ぎながら学校へと辿り着く。
学校についたら知り合いという知り合いが声を掛けてくれる。

「今日ひまり誕生日っしょ?これあげる」
「間宮おめ〜コンビニで買ったこれ分けてやるよ」

教室に着くまでにアタシの腕の中はお菓子とかでいっぱいになっていた。

「さすがひまり、人望が厚いね〜」
「いや〜人気者は辛いですなー!」

アタシは自分の席に座ってスカスカの机の中に貰ったお菓子を詰め込んでおく。

キーンコーンカーンコーンと丁度チャイムの音が鳴って、がらりと先生が入ってきた。

「はーい、ホームルームを始めます〜今日は何があったかな〜」
「はいはい!アタシの誕生日ー!」
「おっ、間宮おめでとう〜!じゃあ今日は授業でバースデーガールを当てようかな」
「うげっ、はりりせんせーそれは勘弁して〜!」
「ははっ、まぁ今日は勘弁してあげようか」
「やったー!先生大好き!」

一連のやり取りにクラス中が笑ってる。
クラスの皆も、先生も面白くって大好き!
授業はあんまり面白くないけど!

笑いながらはりり先生はホームルームを手早く終わらせ、授業を始めた。

​───────

放課後、朝より増えたお菓子の山を教室の机を並べて中心に置く。

「「ひまりおめでとうー!!!」」

バスケ部の皆がぱん、と一斉にクラッカーを鳴らす。

「ありがとー!!」

「はいこれ、皆からプレゼント!」

差し出されたプレゼントを「え〜なんだろ〜!」と言いながら包みを開ける。

「わ!これ欲しかったバッシュじゃん!いいの!?」
「ひまりはウチらのエースだからね!遠慮なく貰っときな!」
「嬉しー!!」

貰ったバッシュを早速履く。
サイコーに可愛くてテンションが上がる。
軽く伸びをしてジャンプをしてみる。
いつもより軽やかに飛べてるような感じがする。

そのまましばらく皆とお菓子パーティーをして、夜は家で祝ってもらうからと日が傾く前に帰路に着いた。

​───────

机いっぱいにアタシの好物で埋め尽くされてる。
アタシはきらきらと目を輝かせる。

「わー!アタシの好きなのばっか!ありがとうママ!」
「ひまりちゃんの誕生日だからね!お母さん腕によりをかけちゃいました!」

サクサク衣のエビフライにトンカツ、しゅわしゅわカラフルなフルーツポンチにその他もろもろ
所狭しと並ぶ料理の数々に思わずよだれが垂れてきちゃいそう。

「お待ちかねの誕生日プレゼントだよ」

パパから渡された可愛くラッピングされたプレゼントを早速開ける。

「やった!欲しかったデパコスだー!パパ大好き!」
「喜んでくれて良かったよ」

「じゃあ、お姉ちゃんからもプレゼントあげちゃおうかな」

「お姉ちゃん!!」

お姉ちゃんがすっとパパの隣から出てくる。
手を後ろにして少し悪戯っぽい顔してアタシの近くに来る。
お姉ちゃんは普段は大人っぽい雰囲気だけど、こういう時はアタシとよく似てるって周りから言われるからホントに嬉しい。

「はい、これ!おめでとう、ひまり」

そう言って差し出されたのは小さな箱。
ぱかりと開けると中にはオーバル型の飾りのついたペンダントが入ってた。

「わぁ、キレイ!つけてつけて!」
「ふふ、分かった 後ろ向いてね?」

お姉ちゃんにくるりと背を向けてペンダントを箱を差し出す。
お姉ちゃんは箱からペンダントを取り出して、アタシの首に付けてくれた。

「どう?どう?似合うー??」
「うん、ぴったり!」
「やっぱりお姉ちゃんはセンスが良いわね〜」

その場でくるくる回って家族の皆にペンダントを見せびらかす。

「そうそう、このペンダント何だけど、中に写真とか小さな小物とかも入れることができるの」

お姉ちゃんの言葉にぴたりと回るのを止めて、まじまじとペンダントを見つめる。

「あっ、これかな!」

ツメの引っ掛かりを見つけ、ぱかりと開ける。
中身はもちろん空っぽ。
まるで鏡かのようにきらきらと反射している。

「ひまりの好きな物、入れてみてね」
「好きな物〜そうだ!」

アタシはスマホの裏に挟んでたお姉ちゃんとのプリを近くのハサミで良い感じに切って嵌める。

「ひまりは本当にお姉ちゃんが大好きだな〜」

パパが笑うのにつられて皆笑う。

「ふふ、ひまりちゃんこんなにお姉ちゃんのこと好きだったら来年きっと大変ね」
「来年?」

聞き返すと「言ってなかったのかしら?」とママはお姉ちゃんの方を見る。
お姉ちゃんはまだ何も決まってないから、と軽く笑ってアタシの方を見る。

「私ね、大学生になったら一人暮らししようと思ってるの 箱猫大学を第一志望にしててね───

​───────

「あだっ!?」

身体中を打ち付けてじんじんと痛みが広がる。
どうやら、ベッドから転げ落ちてしまったみたいだ。
見上げる天井はアタシが借りてる箱猫のマンションの一室。

「……夢かぁ」

虚空に手を伸ばし、ぼうっと天井を見つめる。

「会いたいな……」

声は誰にも届かず、掻き消える。

16歳の誕生日、思い焦がれる人は程遠い。

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