綾瀬なな

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#8'迷宮 sideひまり

【探索開始】 From:間宮 ひまり なるほどな〜!これが迷宮ってワケね! 掲示板読みながらオカ研のとこ行ってみたんだけどこれって迷宮入ってんのかなー!? 体感なんも分かんないな〜! 迷宮がどうのとか?消すとか増やすとか?なんかよく分からん人とかなーんにも分からんけどま、いっか! とりまその辺歩いてみよ〜! ​─────── 【退避】 From:間宮 ひまり うわやば、鳥肌立ったんだけど あのクソ教師、ほら、生徒指導のアイツ!! バッタリ遭遇してげっ、って思ったらさ、

    • バナナフラペチーノ

      授業の終わりのチャイムが鳴る。 チャイムが鳴るや否や部活へ走って向かう人、バイトへ向かう人、しばらく席から立つ様子もなくただ無意味に駄弁っている人、思い思いに放課後を過ごしている。 今日は特に依頼も受けていない。 そのまま帰ろうと私は席を立つ。 「エーウち!あーそーぼー!」 「うわ」 目前にまるで通せんぼするかのように仁王立ちしているのは同じクラスの間宮ひまり。 私は彼女を見て顔を歪めた。 「わー!うわとか言った!アタシ傷付きました〜!」 そう言い彼女は大袈裟によよ

      • 放課後のひととき

        「じーーー」 平田は目の前の少女を穴があくくらいじっと見つめる。 「ん?どうしたのー?そんなにジロジロ見て」 「まさか変なコト考えてる!?きゃー!エッチ〜!」 見つめられた少女──間宮ひまりは胸の前で手を組んで、わざとらしくそっぽを向いた。 ここは解決部の待合室。 厳密には解決部でない平田とあまり解決部に熱心というわけでもないひまりの2人が揃うのは珍しいことだった。 「あはは!ゴメンゴメン、やっぱ似てんなー!って思ってさ」 平田は全く謝意の無さそうな顔で笑う。 そ

        • 未来の選択

          「勿論、学歴も大事かもしれない。」 「けれども、私はそれが全てだとは思わない。 君の絵を一目見て思ったんだ。君は類稀な才を持っている人だと。」 「そういった人は得てして社会に馴染み辛さを感じるものだ。」 「現に、今の状況を聞いてより一層そう思った。 無理に学校に通う必要はないんだ。」 「良ければ、東京に来ないか?」 「君の才能を社会への適応の為に燻らせてしまうのは勿体ない。 一日でも早く、その才を磨いてみないか?」 ​─────── お花見大会で我龍院先生に声を掛けら

        #8'迷宮 sideひまり

        マガジン

        • 黄昏学園/間宮ひまり
          8本
        • 黄昏学園/瑞木瑠衣
          9本
        • 黄昏学園/有栖川櫻子
          8本

        記事

          恋焦がれ、夢覚める

          「おはよう、誕生日おめでとうひまり」 最高の目覚めでアタシは誕生日の朝を迎える。 大好きなお姉ちゃんに、1番に祝ってもらえた。 「おはよう!ありがとうお姉ちゃん!」 アタシは向かいのベッドに座るお姉ちゃんにがばっと抱きつきにいく。 「ふふ、ひまりは朝から元気だね」 「アタシは元気が取り柄だからね!」 微笑むお姉ちゃんにつられてアタシも笑みが零れる。 お姉ちゃんが楽しいとアタシも楽しい。 お姉ちゃんが嬉しいとアタシも嬉しい。 今日は最高の一日になりそう! ​───

          恋焦がれ、夢覚める

          休息のひととき

          ちょきちょき、ちょきちょき 新聞とにらめっこして、切ってはノートに貼り付けて、蛍光マーカーで線を引いてを繰り返してく。 一人暮らしした先で新聞を取りたい、と言ったらひまりがそんな事を言う日が来るなんて……!とパパは感激して、二つ返事でオーケーしてくれた。 アタシもまさか自分で新聞を取ろうと思う日が来るとは思わなかった。 実家でも最近までは全く見向きもしなかったし、習字の授業か文化祭の時に使った記憶くらいしかない。 「んん……さすがに頭痛くなってきた」 しばらくスクラップブ

          休息のひととき

          とある新聞部の航行

          飛行機の機内においても私は新聞部として活動する。 新聞部たるもの、学内の出来事には常にアンテナを張っておくべき、というのは私の持論だ。 だから今注目の的となっている解決部の掲示板にも目を通す。 その最中、後輩……恐らく、後輩の卜部の投稿を見て私は手を止めた。 そして隣の席に座っている志帆の顔をじっと見る。 彼女は手元の有栖川櫻子の写真を整理していた手を止めて顔に疑問符を浮かべたような顔をした。 「アンタ、卜部のこと焚き付けたでしょ」 「何の事でしょうか?」 とても白々しい

          とある新聞部の航行

          向日葵の面影

          とある日の休日。 平田は「暇だなー」とふらりと家を出た。 コンビニに寄ってコーラとポテチを買い、女の子に連絡してカラオケでも行こうかと思いついてスマホを手に持ちLIMEでメッセージを送りながら歩く。 ふと前を見ると、長髪の赤毛を靡かせて歓楽街の方へと歩いていく女性の後ろ姿を見つけた。 あの赤毛には見覚えがある。 平田はそれを見るや否や、その女性の近くまで駆けた。 「ひーまーりーちゃん!」 顔を覗き込むように笑顔で声を掛ける。 「奇遇じゃん!これから遊びに行くとこ?」

          向日葵の面影

          お花見大会にて

          暖かな日差しに包まれ、ふぁ、と欠伸をひとつする。 オレはパイプ椅子の背もたれにもたれかかり、大きく伸びをした。 今日は箱猫市老人会主催のお花見大会の日。 老人会と言いながらも、地域のイベントらしく地元の子供達もいて幅広い年代の人達が訪れている印象がある。 幸運なことに天気にも恵まれ、桜は満開に咲き誇っている。 周囲には様々な出店が並んでいる。 りんご飴にベビーカステラ、チョコバナナ。 甘い香りが鼻腔をくすぐる。 後で頃合を見て買いに行くか、と思った矢先に「すみません」と声を

          お花見大会にて

          タカラモノ

          「本当にありがとうございましたっと、送信!」 掲示板にぽん、と今打ったメッセージが出る。 「えへ、良かった」 アタシはペンダントを軽く撫でた。 あのクソ教師に雑に扱われたけど、チェーンは切れてないし傷も付いてない。 箱猫に来て早々無くしちゃうなんてサイアクって思ったけど、優しい先輩達のおかげで戻ってきてくれて良かった。 かなめっち先輩の言う通り、ジャージに突っ込んだせいで無くしちゃったなら持ち歩かない方がいいのかも。 それでも、手元に置いときたい。 そう思うのは、別に

          タカラモノ

          とある新聞部の日常

          「満開の 桜に勝る 櫻子様」 「ん〜微妙じゃない?」 「ショックです!でも確かに櫻子様の美を表現し切れてないのも事実……!」 ここは新聞部の部室。 新聞部では定期的に黄昏新聞と称して校内新聞を発行している。 その内容は学内のイベント事だとか、生徒や教師のゴシップだとかが主となる。 のだが、最近……いやここ数年の黄昏新聞の様相は変わっている。 「ねぇ、前々から言おうと思ってたんだけど」 「ん?なんですか?」 「黄昏新聞というより有栖川櫻子新聞じゃない?」 「元々そのつも

          とある新聞部の日常

          箱猫への一歩

          「次は〜箱猫駅〜箱猫駅〜」 電車のアナウンスが聞こえる。 アタシはイヤホンを外し、窓の外を見る。 ここは箱猫市。 アタシ───間宮 ひまりの育った街から遠く離れた場所。 「お姉ちゃん、アタシも箱猫に来たよ」 ぽつりと呟き、手元に視線を落とす。 手にした大切なペンダントをぎゅっと握りしめる。 電車は徐々に減速し、駅へと止まる。 アタシはペンダントをポケットへ突っ込み、重たいキャリーケースを持ち上げて箱猫暮らしの一歩を踏み出した。 ​─────── キャリーケースを

          箱猫への一歩

          春の足音

          ピンポーン、とチャイムの音が鳴る。 「今日の担当はアタシだぜ」 ドアを開けると軽く欠伸をして織田が玄関前に立っていた。 「おう、わざわざサンキュ」 珍しく朝ちゃんと起きて準備していたオレはそのまま家を出る。 いや、最近ではそう珍しくないのかもしれない。 連日解決部や生徒会のメンバーが来てくれるお陰で朝少し起きれるようになってきた。 常に、ということは無いがこうして朝迎えに来る前に準備を終わらせているということもしばしば出来るようになってきた。 今は3月末。 卒業式は

          #6'迷宮 side櫻子&ベネット

          To:ベネット・ラングマン From:有栖川 櫻子 わたくし、此度の迷宮に挑戦しようと思いますの。 共に来てくださるかしら? ​─────── From:ベネット すでに支度は整っています櫻子様。 どこへでも参りましょう。 まやかしの幸せなど幸福に非ず。 櫻子様の行く手を阻む者、すべて叩き潰してさしあげます。 ​─────── 【依頼受諾】 From:有栖川 櫻子 わたくし、迷宮とやらは危険だと伺っていたから本当は参加する気なんてありませんでしたわ。 でも、わ

          #6'迷宮 side櫻子&ベネット

          春の嵐

          無機質なインターホンの音で目が覚める。 階段を駆け下り、モニター横のボタンを押す。 「おはよう、瑠衣くん!今日の担当は僕だよ」 モニターに映るのは白石の姿。 朝早いというのに眠気を感じさせない、いつも通りの爽やかな笑顔。 「おはよ、準備するから5分待ってくれ」 「ふふ、いくらでも待つとも!」 白石の返事を聞き、インターホンの接続を切る。 オレは冷たい水で顔を洗い、食卓の食パンを口に詰め込む。 麦茶でそれを飲み込み、椅子に掛けた制服に着替える。 その間3分。 「お待

          #6'迷宮 side瑠衣

          【依頼】 依頼人:一ノ瀬 濫觴    耳が早い人なら既に聞いていることだろう。再開発地区の集団失踪事件は迷宮の仕業だ。  これまでにない巨大な迷宮だ。入り口など気にする必要がないほどにね。再開発地区を歩いていれば、迷い込めるだろう。  このまま拡大すれば私たちの世界は迷宮と取って代わられる。それだけはなんとかして避けなくてはならない。    迷宮内では『幸せな日々が繰り返している』。1日がループしているそうだ。同じ時間に同じことが起きる。市民はみんな笑顔で暮らしているように見

          #6'迷宮 side瑠衣