勝つカレー
家内が家を留守にしていた夏の終わり、横浜ダービーがあった。
何をかくそう、私は、横浜FCファンで。ホーム、三ツ沢ニッパツ競技場に駆けつけたのだ。
対戦相手の横浜F・マリノスは首位。我が横浜FCはドベから二番目。いわゆる、圧倒的不利な状況だった。
私は、勝負の前には、必ず、カツと名のつくものを食する。この日も、願掛けに、勝つカレーを買い込んで席に座った。
たいていは、誰か家族と一緒に行く。一人で行くのも良いが、飲み過ぎたり食べ過ぎたり、寄り道をしたりする傾向があるのを自らも知っているので、敢えてそうしているのである。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
負けたらヤケ酒。勝ったら祝い酒。いずれにしても、飲むからな。コジは。
試合展開は、いきなり先制され。雲行きは、限りなく怪しかった。
ビールも買い込んでいたが、この失点で、一杯飲み干した。
だが、横浜ダービーとあって、スタンドは混んでいて。なかなか何度も席を立って買いに行くことは憚られる状況で。端っこの席をとらなかったことを悔やんだ。
おとなしく、勝つカレーを食していた。
するとほどなく同点となり。ひとりで、わぁわぁ、キャーキャー言いながら試合観戦をして。終わってみれば、4-1の、これ以上ない快勝だった。
通路や道が混まないうちにスタジアムを後にし、横浜方面に歩き出し、さて、今夜はどこで飲もうかなんて思っていたら、家内からLINEが来た。
おめでとう!大勝だね!このまんた真っ直ぐ帰ったら、きっと次節も勝つよ、きっと。って、勝利の女神が言っていた。リキも、お腹を空かして待ってるよ。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
さっちゃん(注1)からの、ロックがかかったな。
勝利の女神がそんなことを言うはずもないが。私が見かけよりも験を担ぎ、信心深いことを家内は知り尽くしている。そしてトドメは、リキだ。リキに可哀想な思いはさせられない。
うーむ。
歩きながらかなり思案したが、その夜は、真っ直ぐ帰宅した。
結果的に次節はドロー。次次節は敗戦だったから、あまり家内の言うことは当たらなかったが。
そしてとうとう、前節で最下位転落となり、今週の時点ではもう後が無い状況に追い込まれている。
そんなこんなを家内に思い出さそうとしてソファーを見ると、家内が、脚を指さして笑っていた。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて、平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)我が家の家内の呼称は、「さっちゃん」である。さっちゃんは、女王陛下という別の呼称もある。だが、そもそも長男が飼い出したハリネズミのリキとの関係で、そもそもの飼い主が長男であることから、私は、おじいちゃんだが、家内に対して「おばあちゃん」なんて呼び方は、まかり間違っても、してはならないのである。
■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。
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