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『winter fall』(L'Arc〜en〜Cielの楽曲をひたすら語っていくシリーズ)

今回はついに来ました、『winter fall』です。
大 名 曲 といって差し支えないのではないでしょうか。
私も並々ならぬ思い入れのある、大好きな曲です。
この曲、実はL'Arc〜en〜Cielがシングルチャートで初めて1位を獲得した曲でもあるんですよね。
そういった広いマス層に刺さるキャッチーさもありつつ、聴き込むとスルメ的な様々な要素も兼ね備えている至高の一曲だと思います。

まずこの曲のタイトル『winter fall』についてですが、これはhydeの造語らしいですね。
fallは季節の秋ではなく、終わりを表しており、冬が終わるという意味合いがあるようです。
歌詞を追ってみると、メインとして描かれているのは冬の情景なのですが、主人公は既に春へと向かっている時間軸にいて、冬を惜しみつつも、何とか次の季節へと向き合っていこうとしているような姿を連想させます。
この、冬を惜しむタイプの歌詞って珍しいと思うんですが、どうでしょうか。
春や夏を懐かしむタイプの楽曲は割と多く存在する一方で、冬をそうするタイプの楽曲にはあまり出会ったことがないような気がします。
この辺りにも、冬の楽曲が多いL'Arc〜en〜Cielの特色が垣間見れるんじゃないでしょうか。
歌詞のストーリーとしては、冬を共にした恋人と何らかの形で離れ離れになってしまい、春を迎えた主人公がその時を懐かしむような展開になっています。
この舞台設定自体は季節を置き換えるとそう珍しいものでもないのかもしれませんが、そこにhydeの歌詞が味わい深さを与えてくれるんですよね。
冬を「真白な時」と表現することで掴まれ、「冬の冷たさを今でも暖かく感じている」という撞着語法的な表現で更にグッと引き寄せられます。
語り出すとキリがないので、私の一番好きな箇所をチョイスすると、「今も胸に降り積もる想い眺めては 見えないため息を浮かべた」という2サビの後半部分ですね。
主人公のいる時間軸では春を迎えようとしているのでもう雪は降っていないんですが、主人公は想いを降り積もる雪に例えて懐かしみます。
ただそうして懐かしんで浮かべるため息は寒さで曇ることはなく、見えないままなんですよね。
この表現から逆に、主人公と恋人が息を白くして寄り添っている描写まで想起させるのが流石としか言いようがありません。

歌詞に触れるのはこれくらいについて、次は演奏について語っていきます。
まずはドラムについてですが、この曲においてはyukihiroの生ドラムと打ち込みのブレイクビーツとが重なったアレンジになっています。
これもyukihiroならではな趣向で、前作までとは違った要素が新しくバンドに組み込まれたように感じられますよね。
ブレイクビーツの前へ前へと忙しなく進んでいくビートと、yukihiroの比較的淡々と刻まれるドラムのリズムが合わさり、冬が過ぎ去っていくような焦燥感を感じさせてくれます。
スネアを使うことに拘ったのかと思ってしまうほどにこの曲のフィルインはスネア主体で組み立てられているのも印象的。
そのスネア主体の流れが断ち切られる2サビ終わりのフィルが余計に強く印象に残ります。

ベースはAメロとBメロでは比較的シンプルなリズムを刻み、サビに入るとボーカルと絡むメロディアスなフレーズが増えていきます。
サビのフレーズは私もとても好きで、特にライブ版では少し符割を変えて演奏しているのが更に堪らないんですよw
これを弾きながらコーラスもこなしているtetsuyaは凄いですよね。
サビのラストではコードがC#のメジャーになり、ベーシストとしてはFの音を入れたフレーズを弾きたくなるところだと思うのですが、その響き的美味しさをホーンに譲っているのが大人だなぁと思ってしまいました。
2サビ後のCメロ的なセクションでは細かく動くループフレーズが入ってきます。
コードが変化するタイミングでルートの起点を移しながらも、フレーズの大枠は保ったまま進んで行くパターンはコピーする時に覚えるのが大変でした。
ちなみにこの曲は指弾きで演奏されていて、ライブでもその姿を確認することができます。
確かに少し丸い暖かい音色になっていますよね。

kenのギターはイントロからAメロに続くアルペジオ、ブリッジ部分のリードやギターソロと耳に残るフレーズはある一方で、その他の箇所は黒子的な演奏に徹しています。
このアルペジオの響きは発明ですよね‥同じようなフレーズはhydeが楽曲提供した『GLAMOROUS SKY』でも耳にすることができます。
Aメロに入るとルートが変化していくので押さえるのが少し大変です。
Bメロは歪んだ音で支えとなるバッキングを弾きつつ、ボーカルのカウンターメロディ的にストリングスとユニゾンしたフレーズを挟んでハッとさせてくれます。
サビのカッティングはこの曲で一番好きなフレーズで、ベースと同じく、ライブ版では少し違ったフレーズを聞かせてくれます。
サビの後半でシンコペーションする箇所なのですが、ライブ版のここにぜひ注目してもらいたいです。
ギターソロはラルクの曲の中でもフレーズ的難易度は屈指の低さですが、シンプルな音遣いながらも琴線に触れる素晴らしいフレーズだと思います。

ボーカルは囁くように歌うところと叫ぶようなところとの歌い分けが非常に劇的で、表情の付け方が素晴らしい。
特に好きなのがBメロのラストの吐き捨てるような歌い方と、サビのラストで徐々に裏返っていくような歌い方をしているところです。
サビのラスト、本当に儚いんですよ。

あとこの曲はバンドの演奏以外でもストリングスとホーン隊が非常に大きな役割を果たしていると思います。
特にサビではこのストリングスとホーン隊が入れ替わり立ち替わり最高のフレーズを差し込んできてくれます。
サビのラストでストリングスが音価の長いフレーズを弾いた後、ホーン隊のサビを締めくくるフレーズがインしてくるところなんてもう最高なんですよね。

といったところで、これ以外にも語りたいことはある気もするのですがこのくらいにしておきます。
昔はよく聴いたけど最近聴いていないという方も多い曲だと思うので、このタイミングで久々に聴いてみるというのはどうでしょうか。


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