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キモオタのかほり

【本文】
最近、『池波正太郎の銀座日記』を読み進めている。

作者がおでかけしたり、映画を観たり、おいしいものを食べたりしているというだけの内容だが、物語疲れしているときの息抜きとしてはちょうど良い塩梅の楽しさだ。

そんな日記の中に、気になる一節があった。

東和の試写室で、待望の〔モリエール〕を観る。
四時間の長尺だが、私のようなものにとっては、
「実に、たまらない……」
映画だった。

『池波正太郎の銀座日記[全]』P.27
(新潮社、1991年)

注目していただきたいのは、「」内の感想部分である。

著者に甚だ失礼ではあるが、私はこの部分に、濃い「キモオタ臭」を嗅ぎ取ってしまった。

「私のようなものにとっては、実にたまらない映画だった。」

とでも書けば足りるところを、わざわざ改行+カギカッコの併用で強調している。

本当にたまらない作品だったのであろう、という納得とともに、そのくどい書きぶりに思わず笑ってしまった。

【自由記述欄】
片道1時間半かかる映画館に到着してから財布を忘れたことに気づいたので、映画を観ずに1時間半かけて帰りました。

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