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【最終戦特集】SL琵琶湖シリーズ MZシニア -THE FINAL-

2023年10月8日 SL琵琶湖シリーズ MZシニア第5,6戦が開催された。

シーズン最終戦となった今大会は「-THE FINAL-」という名で開催され、過去最多の16台がエントリー。チャンピオン争いの行方はもちろん、新規参戦ドライバーの躍進等、数々のドラマが生まれた大会となった。

注目ポイント

チャンピオン争い

最終戦だけあって、これは絶対見逃せないポイントであろう。
第4戦終了時点でのポイントランキングは以下の通りである。


ランキング1位タイ #27 上島太陽(VehCOOL) 68pts.


ランキング1位タイ #81 萬雲恒明(KC NAGAHARA) 68pts.


ランキング3位 #6 浅井勇貴(StarFive Vifonte with Ash) 60pts.


ランキング4位 #33 布川雄介(LET WING) 57pts.


この4名が、第4戦終了時点で”自力でチャンピオンを勝ち取る権利”を持っている。
また、今大会は #81 萬雲恒明選手が欠場のため、チャンピオン争いは残りの上記3名で争われると予想されていた。
しかし、これはあくまでも”自力権利”。この3名はこれまでの結果からタイヤハンディにより開幕戦で使用したタイヤをそのまま使い続けている
更に第5,6戦共に獲得ポイントは1.5倍ということから、展開次第ではランキング5位以下の選手にも十分可能性があることを忘れてはいけない。



新規参戦ドライバー

新たに5名が参戦している。
今大会、最大獲得ポイント(2連勝)は75ptsとなり、これはこの時点のトップ68ptsを上回る。つまり、この5名にもチャンピオンの可能性があるということだ。
誰がチャンピオンになってもおかしくないこの状況で、後に彼らの中にはフル参戦勢を揺るがす存在も。


#7 舟橋弘典(LET WING)


#23 舟橋陵(Vifonte with Ash)


#50 大島正樹(VehCOOL)


#86 片岡陽(Vifonte with Ash)


#99 大井偉史(RS YAMAMOTO)



タイムトライアル

午前10時39分。5分間のタイムトライアルが開始された。
一斉にコースインする中に混じり、スリップストリームを利用する者。時間をおいてからコースインし単独走行を狙う者。戦略は様々だ。
そんな中、速さを見せつけたのはやはり新品タイヤ勢だった。#2 瀧口純輝(Vifonte with Ash)、#86 片岡陽(Vifonte with Ash)、#99 大井偉史(RS YAMAMOTO)、その中に中古タイヤながら #7 舟橋弘典(LET WING)が加わり四つ巴の戦いに。
毎周順位が入れ替わる接戦の末、最終ラップに51.365を叩き出した大井がトップに浮上しタイムトライアルを終えた。
2位に瀧口、3位に片岡、4位に舟橋がつけ、5位には初参戦の #23 舟橋陵(Vifonte with Ash)となった。

#99 大井偉史(RS YAMAMOTO) TT1位 51.365
#2 瀧口純輝(Vifonte with Ash) TT2位 51.632
#86 片岡陽(Vifonte with Ash) TT3位 51.791

一方、ランキング上位勢はタイヤハンディの影響が響き苦戦を強いられていた。
その中でも奮闘したのは #33 布川雄介(LET WING)。51.971を叩き出し6位につけた。これはハンディタイヤを背負う5名の中でもトップであり、唯一の51秒台であった。
ランキング4位の #6 浅井勇貴(StarFive Vifonte with Ash)は9位、ランキングトップ #27 上島太陽(VehCOOL)は12位と、波乱を予感させる幕開けとなった。

#33 布川雄介(LET WING) TT6位 51.971

予選ヒート

予選ヒート YouTube

予選ヒートは8周で行われた。
2位スタートの #2 瀧口純輝(Vifonte with Ash)がスタートダッシュを決め、3コーナー進入で #99 大井偉史(RS YAMAMOTO)をアウトから抜きトップへ浮上。しかし、直後の6コーナーで大井がすかさず応戦。トップを奪い返す。
オープニングラップは大井が制するものの、2周目のコーナーで瀧口が更にやり返す。この二人の戦いは4周目まで続いていた。
その背後からは、ペースを上げてきた #7 舟橋弘典(LET WING)、#86 片岡陽(Vifonte with Ash)が差を詰め、トップ争いはタイムトライアル同様のメンバーで四つ巴の戦いへ。

クラッシュ車両回収のため8~最終コーナーまでが黄旗区間となり、トップ争いは一時膠着状態だったが、黄旗が解除となった最終ラップで大井が動く。2コーナーで瀧口のインに飛び込みトップへ、失速した瀧口に背後で待ち構えていた舟橋が3コーナー進入で容赦なく襲い掛かる。しかしここはアウトで粘った瀧口に軍配。舟橋はその隙をつかれ4コーナーで片岡にかわされ4位へ後退。
ここでトップ争いは決着。大井はそのまま予選をトップで通過した。2位に瀧口、3位に片岡、4位に舟橋という結果で予選ヒートを終えた。

一方、その背後では5位争いも白熱していた。最終ラップで #10 平野佑真(Vifonte with Ash)が #33 布川雄介(LET WING)に勝負を仕掛ける。お互い譲らない勝負は最終コーナー立ち上がりまで続き、0.006秒差で平野が制した。
しかし、布川もランキン上位勢ではトップの6位とチャンピオンへ向けて着実に歩みを進めていた。

#6 浅井勇貴(StarFive Vifonte with Ash)は10位、#27 上島太陽(VehCOOL)は接触時にフロントカウルがタイヤに引っ掛かる不運に見舞われ14位となった。


第5戦

第5戦 YouTube

予選ヒートの着順でスターティンググリッドを決め、13周で行われた。
ここでも、2位スタートの #2 瀧口純輝(Vifonte with Ash)がスタートダッシュを決めトップへ浮上する。ポールスタートの #99 大井偉史(RS YAMAMOTO)は出遅れ、#7 舟橋弘典(LET WING)にも抜かれ3位へ転落。
後方では14位スタートの #27 上島太陽(VehCOOL)が一気に7位までジャンプアップ、これまでの流れを一変した。
逆に #33 布川雄介(LET WING)はスタート直後の2コーナーでの混戦で挙動を乱されコースアウト。14位まで順位を下げていた。

レース序盤は舟橋、瀧口、大井の三つ巴のバトルが繰り広げられていたが、7周目には #86 片岡陽(Vifonte with Ash)と #10 平野佑真(Vifonte with Ash)もトップ集団に追いつき、5台パックに。
タイミングを見計らっていたのか、ここぞとばかりに2位を走っていた瀧口が動く。2コーナーで舟橋のインに飛び込みトップに浮上。しかし舟橋はすぐさま6コーナーで応戦。クロスラインを取り切れず若干失速した瀧口の隙を狙った大井が7コーナーでインをこじ開ける。その背後から片岡も襲い掛かる。リズムが崩れた瀧口は8周目の3コーナーで平野にも抜かれ5位まで順位を落とした。
またこの時から、雨が若干振り出し路面状況が変わりつつあった。

トップ争いはこの混戦で抜け出した2名。舟橋、大井の一騎打ちに。12周目の4コーナーで大井が勝負に出る。ここでトップに浮上したものの、失速し6コーナーではブロックラインで抑えようとしたが、互いにバランスを崩しスピン。両者ともに戦線離脱となった。

この混乱をいち早く抜け出した瀧口がトップに立ち、迎えたファイナルラップ。
3コーナー片岡に仕掛けれられるも、抜ききるまでには至らずトップを死守。そのまま仕掛ける隙を見せず、トップを守り切り瀧口は今季初優勝を獲得した。2位に片岡、3位に平野となった。


チャンピオン争いの行方

ランキング上位勢では、#27 上島太陽(VehCOOL)が8ポジションアップの6位フィニッシュで9pts.獲得。77ポイントと一歩リードした。
しかし、序盤で下位に下がるも驚異的なペースで追い上げた #33 布川雄介(LET WING)が上島さえも抜き去り5位でフィニッシュ。69pts.と差を少しずつ詰めていた。

この時点でチャンピオン獲得の権利を持った者は、今回の優勝でランキング6位に浮上した #2 瀧口純輝(Vifonte with Ash)までとなった。
この上位6位の中で、最終戦に挑む5名によるチャンピオン争いが繰り広げられることとなった。


最終戦

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第5戦の順位結果から上位8位をリバースしてグリッド順を決定する最終戦では、#35 坂田英之(Vifonte with Ash)がポールポジションを獲得した。
今季初のレインコンディションでとなった最終戦は、安全を考慮しスタンディングスタートで行われた。
スタート直後、出遅れた坂田にランキング上位勢が襲い掛かる。坂田はここで7位まで順位を落としてしまった。
ここで #6 浅井勇貴(StarFive Vifonte with Ash)が一歩抜け出た。オープニングラップで後続を1秒以上離し、逆転チャンピオンに向けてひた走る。

しかし、その浅井を大きく上回るペースで追い上げる者がいた。#2 瀧口純輝(Vifonte with Ash)だ。
8位スタートから2周で2位に上がり、4周目には浅井からトップを奪う。7周目には #99 大井偉史(RS YAMAMOTO)にも捉えられ3位へ。瀧口、大井はそれぞれ逃げ切り体勢に入り後続との差を広げていった。
周回を重ねるたびに後続のペースが上がっていく。次第には #27 上島太陽(VehCOOL)と #33 布川雄介(LET WING)が浅井に追いつき、ランキングトップ3の一騎打ち。更には最後尾から追い上げてきた #7 舟橋弘典(LET WING)も加わり、3位争いは4台パックに。抜きつ抜かれつの攻防戦を繰り広げていた。

しかし10周目の4コーナー、前方を走っていた周回遅れに行く手を憚れ浅井、上島がスピン。再スタートをできたものの舟橋、布川との差が開いてしまった。

一方、トップを走る瀧口は全く危なげない走りで2位の大井に9秒の差をつけ2連勝を飾った。
3位にはファステストラップを叩き出すペースで追い上げた舟橋が入った。
4位布川、5位平野、6位上島、7位浅井というチャンピオン候補者が上位7位に固まる結果となり、チャンピオン獲得は最終結果が公表されるまで誰も確信することができなかった。


全てのドラマが重なり合い”1ポイント差”で決着

最終的に、#27 上島太陽(VehCOOL)が86ptsでランキングトップを守り抜きSL琵琶湖 MZシニアの初代シリーズチャンピオンに輝いた。
2位には前代未聞の2連勝で85pts、大量ポイント獲得で大きく順位を上げた #2 瀧口純輝(Vifonte with Ash)が入った。
3位は 84ptsで#33 布川雄介(LET WING)。王座を取り合うライバルの中で両ヒート共に最高位でチェッカーを受けるも、あと一歩及ばなかった。

注目すべきポイントは1~3位が「1ポイント差ずつ」で決着しているということ。接戦だったとはいえ、ここまでの奇跡は筆者も遭遇したことがない。
不調を乗り越え、必死に耐え抜いた上島。
第2大会の欠場から完全復帰を遂げ、強さを魅せた瀧口。
全てを出し切り、11pts差から攻めに攻め続けた布川。
彼らの情熱は、他を圧倒していたように感じた。
どんな困難も乗り越え、決して諦めずに戦い続けた者が最後に選ばれる。今シーズンのSL琵琶湖 MZシニアはそんな男の中の男を決めるシリーズだったのではないだろうか。
1シーズンを通して、筆者は競争の中で生まれる様々なドラマを見ることができたと感じている。

来シーズンの彼らの活躍を期待せずにはいられない。

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