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映画『恋わずらいのエリー』で思い出した過去の恋愛

※途中、映画の内容に触れている部分があります

「俺に愛される覚悟ある?」

これは、3月15日に公開された『恋わずらいのエリー』に出てくるセリフだ。この言葉は私にとって盲点だった。「愛されるって覚悟が必要なことなんだ」ーーと。

何年か前、ある男性からの告白にイエスともノーとも取れないまどろんだ答えをしてしまったことがあった。そのときのことはとても後悔している。数年前の私は「私なんて」思考で、自己肯定感の低さから告白を受け取れなかったのだと思っていた。でもそれは、ただ単に覚悟がなかっただけなのかもしれない。

そんなことを思い出した『恋わずらいのエリー』は、妄想女子とウラオモテ男子による恋愛物語である。市村恵莉子(原菜乃華)は、推しの王子・オミくん(宮世琉弥)との妄想をSNSに投稿していた。そしてなんやかんやで投稿内容が本人にバレてしまい、さらにはオミくんの裏の顔が発覚。秘密を共有する仲になりーーというのがはじまりだ。原作は、藤もも先生の同名漫画である。

まず、主演の宮世さんと原さんのお話から。お二方とも、役柄にフィットしすぎていた。私が原菜乃華さんを見たのは、一番最近だと土曜ナイトドラマ『泥濘の食卓』である。幼馴染に異常な愛を持つ、ストーカー女子高生という役どころ。回を追うごとにエスカレートしていく暴走は、視聴者を騒然とさせた。本映画はそんな狂気じみたシーンはまったくないが、普通の女子高生から妄想に入る切り替えっぷりには同じエネルギーを感じる。感情の緩急が素晴らしいのもそうだが、百面相する原菜乃華さんがとにかく、とにかくかわいい。

そして宮世琉弥さん。今まで宮世さんに"王子さま"という印象はなく、どちらかというと"可愛がられ上手な後輩"というイメージがあった(これは私がアラサーだからだろうか)。だが、なんて王子が似合うんだ。しかも、本作のような少し裏があって生意気な、でも時おり影のある表情をみせる……"やや闇ありウラオモテ王子"が。オモテウラの演じわけはもちろんのこと、とくにまなざしと角度は注目してほしいところ。恋愛映画だからか、甘いセリフを吐くとき、キスシーンのときはアップのシーンが多数。そのどれもが本当に美しかった……。"首グイ""体操着キス"とか新たな新語も生まれそうな予感。

ちなみに、最近観た映画で一番ツッコミを入れたのが本作(バカ〜〜!!なんでそんなこと言うの!はやく仲直りしろ〜〜!!的なやつ)。そのくらい、お二人の演技に没入させられてしまった。

さて、冒頭の「愛される覚悟」の話に戻る。本作の言葉を借りて言いかえるならば、「愛される覚悟」とは「他人に世界を変えられること」である。恵莉子は作中でこんなセリフを言う。

「オミくんが変えてくれた世界、もっと頑張りたいから」

映画『恋わずらいのエリー』

恵莉子はオミくんと関わるようになったことで、紗羅という友達ができ、クラスメイトから頼られ、さらには妄想でしかなかった夢を現実にすることができた。つまり、オミくんと関わる以前の、ひとりぼっちで、自らを透明人間としていた世界はもうどこにもないのである。そして、オミくんもまた、恵莉子によって世界を変えられたと言っている。

恋愛によって世界が変わることは、とてもキラキラしたもののように思える。でも、実は怖いものでもあるのではないだろうか。アラサーになると(限ったことではないが)、毎日仕事へ行くし、家事しないとだし、目標ややりたいこともあるし……。毎日がいっぱいいっぱいで、変えられては困ることがたくさんある。それに、恵莉子やオミくんが頑張ったように、変わるとはとても勇気をともなうもの。「覚悟」が必要なものなのだ。だからこそ、覚悟が足りなかった私はあの日の告白にこたえることができなかったーーこの映画を観て、そう考えたのだった。

女子中高生のみならず、オトナ女子にも刺さる本作。ぜひ劇場で。

恋わずらいのエリー

妄想大好き女子×ウラオモテ王子のノンストップ・ミラクルラブストーリー。
原作:藤もも、監督:三木康一郎、脚本:おかざきさとこ。出演:宮世琉弥、原 菜乃華、西村拓哉、白宮みずほ、藤本洸大、綱啓永、小関裕太ほか。

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