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『キャスト・アウェイ』~独り無人島生活。生きるための3要素。「食べること、話すこと、役立つこと」~


01.はじめに


今回の作品は、主人公の男性が飛行機事故で独り無人島生活を強いられるという物語です。

突如、現代人がポツンと一人だけ何もない自然の中に放り出されてしまいます。

恋人と生き別れ、水も食料も用意されていない場所。

植物が生育する条件がありますよね。

☆光
☆空気
☆温度
☆水分
☆養分

これらが一つでも欠けると最後まで発育しません。

では、人間にとって生きていくのに必要なものは何でしょう。

この作品では文明社会の複雑さを取り除き、生き残ることに特化した無人島生活を通して、そのようなテーマを考えていくことができます。

私たちは人生のあらゆる困難や事件のなかに不安、心配を抱きます。

そんな複雑で絡み合った心の中でも、人にとって本当に必要な要素が分かれば、重要ではない悩みを捨てることができます。

背負っているものを幾分か軽くすることができると思います。

些細なこだわりやとらわれを上手に捨てることができれば、目的はシンプルに「生き抜く」ことになります。

ではどうやって生き抜くのかこの作品を通して一緒に観てみましょう。

~主な登場人物~

チャック・・・国際運送会社Fedexのシステムエンジニア、
時短がすべての仕事人間
ケリー・・・チャックの婚約者
ウィルソン・・・Wilson製のバレーボール
スタン・・・チャックの友人、癌の妻を持つ
ベティーナ・・・芸術家、小包の届け先の住人


~《誰かに伝えたい名セリフ》~

☆チャック:「忙しいぞ、時間がない。我々は時間に縛られて生きている。 ”時” に背を向けることは大罪だ」☆
1:23:00~1:26:25

~背景:船の帆となるような移動式トイレの壁が漂着します。チャックはイカダをつくり大波から脱出して沖に救助を求めに出ることを決意します。生きる希望が出てきて、イカダの制作作業に没頭するチャックの独り言。~


~《あなたに観せたい美しいキャメラシーン》~

☆イカダの帆が流れ着き、希望に燃えるチャック。今までの無人島暮らしのくだらなさをバレーボールのウィルソンにぶつけます。「僕は海に出ていくぞ、それに賭ける。こんなクソッタレ島でバレーボールを話し相手に一生を送るよりはな!」
チャックはウィルソンを海に投げ捨てた瞬間、一気に孤独が押し寄せてきます。
泣きながら、許しを求めてウィルソンを探しに行くチャック。月明かりの下、海でポツンと独りバレーボール相手に泣きじゃくるチャックに孤独の怖さを感じずにはいられません。☆
1:28:45~1:31:40


02.時の支配者


作品の冒頭、だだっ広い十字路。

その先が全くわからないほど先に広がる4本の道の十字路を一台のトラックが右折します。

一軒のアトリエから宅配人が荷物を受け取ります。

カメラの視線が荷物の目に変わります。

トラックの扉が閉まり、真っ暗になります。

そして次に扉が開いた時、白い息を吐いたロシア人が荷物を持ち出しました。

荷物が人から人へ。場所から場所へ。カメラも右から左へ。左から右へ。動く動く。

一人の少年ニコライが荷物を受け取り、通りを走り、橋の上を走り、どんどんどんどん情景を変えながら移動します。

着いた先はモスクワのFedExの荷物の集積場です。

この集積場で一人の男が、唯一と信じるイデオロギーを演説する革命家のごとく、”宅配思想” を語っています。

この男は ”時” の貴重さを聴衆の前で語っています。

チャック:
「 ”時” は誰にも非情だ。」

「病気の人間、空腹な者、酒に酔った者」
「ロシア人、アメリカ人、火星人」
「 ”時” は炎のように我々を滅ぼすか、温めてくれる」
「我々は時間に縛られて生きている」
「 ”時” に背を向けたり、”時” の観念を忘れることは、この商売では大罪だ!」
「今は午後1時56分」
「今日の荷物の仕分けをあと3時間4分で完了させるってことだ」
「猶予時間はそれだけ」
「守らねば ”時” という容赦のない主人は我々の職を奪う」

ニコライ少年がチャックに荷物を渡しました。

チャック:
「この荷物はメンフィスをたつ前に、僕が自分宛てに送った荷物だ」

「中身が知りたいだろ?」
「建物の設計図?図面?」
「洗面所に貼る新しい壁紙?」
「中身はタイマーだ」
「ゼロからスタートさせ、87時間と22分17秒が経過した」
「メンフィスからロシアのニコライ君まで87時間」
「87時間だぞ、恥ずかしいと思わんか」
「タイマーでなく、他のものなら?」
「給料小切手、生のフルーツ、養子縁組の書類」
「87時間ありゃ宇宙だって創造できる」
「戦争で国家が倒れ、人は富を築き、それを使い果たす」

通訳が自転車を漕ぐマネをして通訳したので、チャックは聞きます。

チャック:「何?僕のことを何と?」

通訳:「 ”トラックが故障した時、子供の自転車を盗み配達した人” だと」

チャック:
「借りたんだよ、荷物を運ぶためにね」

「そうするのがこの仕事だ」
「ここの荷物を3時間2分以内にトラックに積み、空港に送り込むんだ」

この主人公の壮年男性のチャックは国際運送会社FedExのシステムエンジニアです。

世界中を飛び回り、運送関係の諸問題の解決に奔走していました。

モスクワのクレムリンの赤の広場での車の立ち往生。

トラックから荷物を取り出し、積み替えて急いで空港に向かいます。

”時間” が命の職業なんですね。

シンビジウム


03.つかの間の休暇


メンフィスに帰り、恋人のケリーと夜を過ごします。

キャメラは家に飾られているセーリングの免許状をそれとなく写して、これから起こる災難を予感させていますね。

そしてクリスマス、豪勢な食事とにぎやかな親類との食事。

漂流生活との対比の準備でもあるシーンですね。

虫歯の痛みを堪えながら、時間を節約し、クリスマスを親族と過ごし、その夜にはまた、問題が生じたマレーシアに飛び立ちます。

チャック:
「忘れてた、もう1つプレゼントが」

「車の中で開けるようなプレゼントじゃない」
「おふざけのタオルとは違う」

ケリー:「怖いわ」

チャック:
「大みそかに開けてもいいよ」

「愛してるよ」
「すぐ戻るよ!」

マレーシア行きの飛行機に乗り込む直前に、チャックは恋人のケリーに婚約指輪を渡します。

ケリーは祖父の形見の懐中時計に自身の写真をはめ込んでチャックにプレゼントしました。

04.飛行機事故


乗り込む飛行機はFedExの荷物を積んだ社用機です。

ケリーの写った懐中時計を傍に置きながら、チャックは機内でしばし眠っていました。

飛行機の異常な揺れを感じて、突然チャックは起こされます。

チャック:「アル、今どの辺だ?」

アル:「太平洋の上だよ」

チャック:「そんなの分かってる」

パイロット:「タヒチ管制塔へ、こちらフェデクス88便 J1526」

チャック:「サンタのそりのせいで揺れが?」

パイロットは手振りでチャックの会話を遮りました。

パイロット:
「座標T1620に接近中、燃料ゲージの読みは95.5」

「針路が南にズレてる。チャートに記入を」
「タヒチ管制塔、こちら88便。現在位置J1526、フライトレベル350」
「予定の針路から南へ200マイルずれてる」
「緊急事態の手順確認を」
「タヒチ管制塔、視界悪く計器飛行中、応答を」
「通じない」」

アル:「極超短波もダメか?」

パイロット:「タヒチ管制塔、応答を」

アル:「ベルトを締めろ、揺れるぞ」

パイロットたちのあせりの表情から状況の深刻さを知るチャック。

突然機体に穴が空き、機内に圧力が高まります。

必死で酸素マスクをする乗員たち。

チャックは救命胴衣とベルトの着用を命じられてそれに従います。

度重なる異常な揺れで、そばに置いてあったケリーの懐中時計が通路の手の届かない所に転げてしまいます。

チャックはどうしようかと悩んだあげく、ベルトを外して懐中時計を取りに行きます。

懐中時計を拾った瞬間に機体は真っ二つに割れ、海に不時着してしまいました。

機内に海水が一気に入り込んできます。

そして一瞬の内に飛行機は海中へと沈んで行きました。

救命ボートを広げてチャックは海上に浮遊し、ボートに乗り込んだ所で気絶してしまいました。

金のなる木


05.漂着


目を覚まし、起きたところは浜辺でした。

さざなみの音だけが響き渡る、無人島に漂着していました。

打ち寄せられた小包を拾いあげ、誰かいないか確認します。

チャック:「ハロー!ハロー!誰か?誰かいるか!?助けてくれ!」

チャックの声だけが虚しくこだまします。

砂浜に「HELP」の文字を大きく描きますが、潮が満ちてきて翌朝には消えてしまいました。

視界には何もない水平線だけが見渡せます。

時折、チャックは物音を聞いて「誰かいるのか」と叫びます。

それは実った重みで落ちるココナッツの実の音でした。

ココナッツの実は固く、岩に投げつけても、石のとがった所に叩きつけても割れてくれません。

偶然に石が割れて、ナイフのように鋭利になった部分を使い、ようやくココナッツを切リ目を入れて、中の少ない果汁をすすりました。

杖をつきながら島中を歩き回りますが、人らしき気配は全くありません。

裸足で歩いていたので、岩で足を切ってしまいます。

尖った石で衣服を切り、ひもで縛って靴を作りました。

チャックは島の一番高いところの岩場に登り、島の周囲を360度見渡します。

そこに見える景色は島に打ち寄せる大きな波が無数にあって、ただ地平線が広がっているだけでした。

チャックの絶望感がにじみ出るような巧みなシーンですね。

チャックは今度は潮の満ちてこない高所に流木を置き「HELP」と文字にしました。

向こうの海に何かが浮かんでいるのをチャックは発見します。

それは遭難の直前まで会話していた同僚アルの遺体でした。

チャックはアルの顔を確認し、その悲惨な姿を見て口を押さえて嘆きます。

墓穴を掘って、パイロットを丁重に弔います。

蒼白な顔、穴に入れるために足の関節をくの字に折りたたむシーンは痛々しさを感じます。

傍の大きな石に墓石として刻みました。

「アルバート・ミラー 1950-1995」

魚を木の枝で突きますが逃げられてしまい、カニを獲りますが身が少なく、生で食べれるものではありません。



06.脱出を阻む大波


チャックがある日の晩に用を足していると、海の沖の彼方に船舶の光が点滅しているのを発見しました。

チャック:
「船だ!待て!おーい!」

「止まれ、ここだよ!」
「止まれ、ここだよ!」
「待ってくれ!」

チャックは懐中電灯を振り回したり、点滅させたりして、必死に居場所を知らせます。

チャック:
「ここだ、止まれ!」

「助けてくれ、ここだ!」
「ここだよ、見てくれ!」
「S...O...S...」
「お願いだ、助けてくれ!ここだよ!」
「助けてくれ!」

こんなところで死ぬのは嫌だと、チャックはゴムボートに乗って沖に出て船までいこうとします。

大きな波がチャックの船の進行を阻みます。

ボートが進行する度に高波に阻まれて島に追いやられてしまうのでした。

ゴムボートは破れ、チャックの身体は投げ出されて、硬い岩場にこすり、大怪我をします。

作中では登場人物が1人だけですが、ナレーションを採用していないんですね。

観客を映像に集中させて臨場感を感じさせ、チャックのカメラ目線を多様することで、追体験させているかのような感覚をもたらします。

暗い夜や雨の日は洞窟に身を潜めます。

懐中時計のケリーの写真を眺めては、パイロットの遺品の懐中電灯を心そぞろに、灯したり消したりして、寂しさを紛らわせます。

やがて懐中電灯の電池が切れて、チャックは光を奪われるのでした。

遭難の日数を刻んだり、ケリーの似顔絵を岩に掘って、退屈をしのぎます。

カランコエ



07.小包の中身


浜辺にはFedExの荷物が数個打ち上げられて、チャックはそれらを大事に保管していました。

漂着当初、チャックはお客の郵便物に手をつけませんでした。

何日か経って、助けが来ないのが分かり開封します。

アイススケート、パーティードレス、ビデオテープ、バレーボール。

チャックの現在の原始的な生活と小包が見せる現代の消費社会とがうまく対比されています。

天使の羽が描かれた小包が一つありましたが、なぜだかチャックはそれを開封しませんでした。

アイススケートの刃はナイフとして上手に使用しました。

ココナッツの実に切れ目を入れ、漁のための銛の先を削り、寒さをしのぐための枝の伐採に巧みに利用します。

ドレスのスケスケのスカートの部分で、魚をすくう大きな網を作りました。

これらの道具を使用して、とりあえず食料の確保はできました。

こういった小道具の使い方は昔からあるドタバタ喜劇の時代から、アメリカ映画はとても上手いんですね。

ユーモアたっぷりです。

バレーボールを何に利用するか想像がつきますか?



08.表情豊かな友人


ある日、チャックは火を起こそうと小枝をこすり合わせますが、全く点きません。

チャック:「つけ!つけ!つけ!」

だんだんとチャックは虫歯が痛み始めます。

勢いが余って手が滑り、手のひらに枝が刺さり怪我をします。

チャックのこれまでの溜まっていた怒りが爆発し、あたりの物を蹴散らし、バレーボールを手にとって岩壁に激しく打ち当てました。

転がって静かに止まるバレーボール。

手のひらの形に血痕がついたバレーボールをチャックはじっと見つめます。

そうすると段々とバレーボールが人の顔のように見えてくるんですね。

チャックはボールを手に取り、目と口と鼻を描きます。

チャックはそのボールをウィルソンと名付けました。

Wilson社製のバレーボールだったからです。

監督のロバート・ゼメキスはこういった企業名を巧みに使う遊び心があります。

「フォレスト・ガンプ 一期一会」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などでも企業名を文字った、たくさんのユーモアのあるシーンが出てきています。

架空の映画なのですが、実在する企業名で観客とのつながりが意識されるんですね。

思いがけず、にんまりしてしまいます。

頑張って火を起こそうとするチャック。

ウィルソンの視線を感じて、ウィルソンの顔をじっと見つめます。

チャック:「マッチを持ってないだろうな」

少し煙が出ました。

チャックはすかさずウィルソンの顔の反応を見ます。

小枝の割れ目が酸素を通して煙が出たと推測しました。

チャック:
「空気だ」

「空気が要るんだ!」

チャックは火起こしに成功しました。

チャック:「火だぁ!」

小枝からもっと大枝に、火はたいまつのように大きくなりました。

チャック:
「燃えろ!もっと燃えろ!」

「♫ ためらいの時は過ぎた」
「♫ 泥沼から抜け出そう」
「♫ 前途には敗北が?」
「♫ ハイの頂点を極めたから、ベイビーおれに火をつけろ!」
「♫ 燃えろもっと燃えろ」
「♫ 目じるしの火だ!」
「誰か見てくれ!SOSだ!」
「流星雨だ」
「飛べ、ホタルたち!」
「自由に飛べ!」
「僕が創ったんだ!」
「僕が火を創った」
「僕がこの火を創った」

得意げなチャックは横になって、焼きカニを堪能しながらウィルソンに話しかけます。

チャック:
「カニは最高だ」

「限界だったんだ」
「もうココナッツはうんざりだ」
「ココナッツ・ミルクは下剤だ」
「冒険ドラマじゃ学べない」
「火だぞ、ウィルソン」
「聞け、ウィルソン」

チャックは岩壁に空路を描きました。

チャック:
「僕たちはメンフィスを出て、11時間半飛んだ」

「時速約475マイルで飛んでいたから、普通ならこの辺だ」
「だが無線が途絶えて、嵐の中を約1時間さまよった」
「距離にして約400マイルかな?」
「400マイルの2乗、16万に円周率...3.14を掛けて...50万2400...」
「捜索範囲の広さは50万平方マイルだ」
「テキサス州の2倍だ」
「僕たちを見つけられない...」

ここからチャックがウィルソンを加えて、1人称を”僕たち”と言い始めるんですね。

ウィルソンの存在が心の支えになっているわけです。

いよいよ虫歯の痛みに限界が来ていました。

チャックはウィルソンに話しかけます。

チャック:
「最初はものを噛むと痛かったが、今は絶え間なく痛む、絶え間なく」

「食い物がなくて幸いだ」
「きっと噛めない」
「ココナッツとカニをしゃぶっていよう」
「バカだな、歯医者に行くのが大嫌いだった」
「歯医者通いを避けてた」
「今は何でも差し出す」
「医者をここに呼べたらね」
「お前が歯医者なら...ドクター・ウィルソン」
「笑える話を」
「メンフィスの歯医者、名前は何とスポルディング」

スポーツ競技用ボールのメーカーのもう一つが ”スポルディング社” です。

壁にはウィルソンの似顔絵がたくさん描かれていました。

チャックはケリーの似顔絵を壁画します。

チャック:「本物はもっと美人だ」

チャックはスケート靴を鏡にして、もう片方の靴のブレードを口の中に入れて、自力で歯を抜きました。

チャックは痛さのあまり、そのまま気絶してしまいます。

エラチオール・ベゴニア



09.希望の翼


それから4年の年月が経ちました。

遠くから泳いでいる魚に銛を突き刺す、モーゼのような姿のチャックが岩場に立っていて、自信たっぷりにポーズを取っています。

チャックは半分野生化しており、少しの物音に敏感になっていました。

小枝をウィルソンの頭部にたくさん突き刺して、髪の毛を作っていました。

チャックはもうボロボロになっていたウィルソンに言いました。

チャック:「うるさい!」

チャックは音の方へ挙動不審に警戒しながら近づきます。

それは簡易トイレの壁が流れ着き、波で岩場に何度も当たる音でした。

チャック:
「ベイカーズフィールド社?」

「ベイカーズフィールド!」

立てたそのトイレの壁が風に当たって倒れたのを見て、チャックは思いつきます。

ウィルソンの方をちらっと見て、

チャック:
「使えるぞ」

「使える」

チャックはそれをいかだの帆にすれば、あの大波を乗り越えてその先の沖に行けるのではないかと考えました。

ウィルソンを見つめながら話しかけます。

チャック:
「22本...」

「ロープが44本」
「ロープが44本」
「ロープを編まなきゃ」
「それも山ほど必要だ」
「各々にロープが8本、1つのパートだけで24本」
「合計すると必要なロープは160本」
「まだ1ヶ月半ある」
「4月に波と風が強まったら脱出のチャンスがある」
「それまでに丈夫なロープを130メートル編むんだ」
「万一のために予備を15メートル」
「つまり合計145メートル」
「1日で編めるロープは大体5メートル」
「もちろんイカダも組み立てて、食料を蓄えイカダを海に浮かべる」
「忙しいぞ」
「時間がない」
「我々は時間に縛られて生きている」
「 ”時” に背を向けることは大罪だ」

会社員の時の信念を思い出します。

生きる気力がみなぎってきました。

漂流して4年も経って、”時に背を向けている” のに皮肉な言葉です。

チャック:「口癖だった、僕のね」

チャックは作ったロープを使ってイカダを作りました。

チャック:
「最後だ、もうない」

「島中歩いたがこれだけだ、とても足りない」
「足りない」
「ビデオテープを使わなきゃ」
「大丈夫、時間はまだある」
「風はまだ西から吹いてる」



10.喧嘩と孤独


チャックはウィルソンと真剣に口論します。

面白いですね。

チャック:
「言うな!」

「10メートルのあのロープだろ?」
「あそこへは行かないぞ」

チャックは例の島の岩場の高いところで首を吊って死のうとしたことがありました。

”あそこ”とはその場所のことで、死ぬために用意していたロープがそこにはあります。

チャックはいやな思い出の場所でしたが、そのロープを取りに行きました。

死ぬために用意したロープが皮肉にも生きるための希望のロープとなりました。

チャック:
「どうだ?」

「持ってきた、満足か?」
「あのことは言うな、忘れろ」
「そう、テストしてよかった」
「でなきゃ、もがき死んでた」
「岩に叩きつけられ、脚か背か首を折ってた」
「血を流してね、でもあの時は ”いっそ” と」
「もう1年前だ」
「もう忘れろ」
「文句があるのか?」
「今度は成功するかも、そうだろ?」
「僕は海に出ていくぞ、それに賭ける」
「こんなクソッタレ島でバレーボールを話し相手に一生を送るよりはな!」

チャックの一方的な口論の末、ウィルソンを海に投げ捨ててしまいます。

チャック:「ザマ見ろ」

ですがチャックは一瞬のうちに自分が孤独になったことを悟りました。

チャックは必死で海に探しに行きます。

チャック:
「ウィルソン!」

「ウィルソン!」
「ウィルソン!」
「ウィルソン!」
「ウィルソン!」
「ウィルソン!」
「ウィルソン!」

ウィルソンの姿が見つかりません。

明るい月明かりに照らされながら、チャックは泣き出します。

チャック:「ウィルソン!」

岩場の影でウィルソンは波に揺られていました。

チャックはウィルソンに飛びつき寄り添います。

ウィルソンに許しを請いながら、

チャック:
「悪かった、二度としないよ」

「大丈夫か?悪かった」

チャックはお詫びに自らの血の絵の具でウィルソンの顔を濃くしてやります。

チャック:
「覚えてるさ」

「お前の顔は覚えてる」
「これで、仲直り?」
「いいね?」

滑稽な中にも涙があって、チャックの心情に感動してしまいます。

人は孤独の中では生きられないんですね。

自然と空想上に人を作り、自分を励まし始めます。

幼い子供はお人形やぬいぐるみに話しかけます。

独り遊びの中で一人で何役もこなし、たくさんの友人と遊びます。

キャラクターグッズで周りを埋め尽くします。

海外の人は特に家庭や仕事場、財布の中に家族の写真をたくさん飾りますね。

人には心の安定が必要です。

将来の不安や現在の寂しさに対して。

プリムラ・ポリアンサ



11.出航の時


チャックはイカダの帆に最後の小包に描かれていた天使の羽を描きました。

希望の羽です。

チャック:
「眠れない?」

「僕もだ」
「不安かい?」
「僕もだ」

立てた流木を身体がわりにして、ウィルソンにポーズを取らせています。

出港の日、チャックは岩に記します。

「チャック・ノーランド
この島で1500日を過ごす
メンフィスのケリー・フリアーズに僕の愛を」

チャック:
「よし、出発だぞ」

「お前は心配するな」
「僕が漕ぐ」
「落ちるなよ」

大波に4年ぶりに挑みます。

チャック:
「まだだ、帆はまだだ」

「まだだ」
「待て!」

チャックは一番大きな波を待っていました。

チャック:
「あの波だ!」

「行くぞ!」
「落ちるなよ、ウィルソン!」

タイミングよく天使の翼の描かれた帆を開くと、イカダは風を捉えました。

チャックはついに大波を乗り越えました。

チャック:
「やった!やったぞ!」

「ウィルソン!成功だ!」

4年間過ごした無人島が、チャックの視界からどんどんと消えていきます。

チャックは涙を浮かべながら、力強くオールを漕ぎます。


12.友との別れ


ある日、チャックは激しい嵐に遭遇します。

前進するための希望の帆が強風に飛ばされてしまいました。

チャック:「なぜだ!」

チャックはウィルソンを抱きかかえ、嵐が過ぎ去るのを我慢強く待ちます。

ある日、海上での生活でチャックが就寝しています。

いかだの船首にくくりつけられていたウィルソンはロープからはずれて、海に流されていきます。

チャック:
「ウィルソンは?」

「ウィルソンはどこだ?」
「ウィルソン!」
「ウィルソン!」

気がついたチャックは、流されるウィルソンの方に向かって泳いで捕まえに行きます。

いかだに繋がれた命綱のロープを伸ばしながらウィルソンを追いかけます。

チャック:「ウィルソン、助けに行くよ!」

しかし無常にもロープの長さはウィルソンの所まで届きませんでした。

波にさらわれ遠い彼方に流されていく友人。

チャックにはどうしようもありませんでした。

チャック:
「許してくれ!」

「許してくれ、ウィルソン」
「許してくれ、ウィルソン」
「許してくれ!」
「ウィルソン!」
「ダメだ」

チャックはイカダの上に仰向けになり、泣き崩れます。

チャック:
「許してくれ!」

「許してくれ!」

この時、チャックは初めて絶望するんですね。

すべてを諦めたチャックはオールを静かに海に流しました。

チャックは打ちひしがれ、食べることもせずに、生きる気力をなくし、いかだの上で動かないまま横たわります。

そしてイカダの上でただ死をじっと待ちました。

くじけずにここまで生きてきた。

ウィルソンはチャックの心の支えだったんですね。

皮肉なことに、そこに大きなタンカーが横切ります。

チャックは夢か現実か分からないまま、手を伸ばしました。

チャック:
「ケリー」

「ケリー...」


センリョウ



13.空虚感


そして、発見されたチャックは4年ぶりに救助されます。

救助から4週間後、FedEx社ではチャックの帰還のセレモニーが行われようとしていました。

4年の歳月の間に、チャックたちの捜索は打ち切られていて、親族は葬式を済ませていました。

婚約者のケリーのもとにチャックが救助されたという知らせが入るシーンがあります。

ケリーは電話で連絡を受けた直後、気を失いました。

彼女の後ろには仲良く食事をする夫と子供の姿がありました。

ケリーは結婚して、再出発をしていたのですね。

機内で物思いにふけるチャックに友人のスタンが話しかけます。

スタンは炭酸ジュースと氷を持ってきました。

スタン:
「あと45分だ」

「ドクター・ペッパーと氷を2杯だ」

チャック:「氷がうれしいよ」

スタン:
「予定を話そう」

「君が着陸して飛行機を降りた所でちょっとしたセレモニーをする」
「社長が挨拶して君は笑顔で”ありがとう”と礼を言う」
「その後、ケリーと会う」

チャック:「彼女もそこに?」

スタン:「そういう手配だ。君が望むならだが...」

チャック:
「もちろん、構わない」

「彼女に何と?」
「一体何と言えば?」

スタン:
「チャック、ケリーは君を過去に葬った」

「君は死んだと思われた」
「そして君は埋葬された」
「ちゃんと葬式をして、棺を埋葬し、墓石と立てた」

チャック:
「棺まで?」

「中には何を?」

スタン:
「皆が何かを入れた」

「携帯電話、ポケベル、写真、俺はエルビスのCDを」

チャック:「僕の葬式とメアリーの葬式をしたのか?」

チャックとスタンはお互いを見つめ合います。

チャック:
「君のそばにいなくて悪かった」

「友達なのに本当にすまない」
「残念だ」

そしてセレモニーが始まりました。

FedEx社長:
「4年前、我が社は5人の息子を失いました」

「つらく悲しい日でした」
「しかし今日、息子の1人、チャック・ノーランドが戻ってきました」
「チャック、お帰り!」

インタービューワー:
「生還したチャック・ノーランドでした」

「感想は?」

チャック:「フェデックスにとって記念すべき日です」



14.ケリーの夫


チャックは室内でケリーを待っていました。

そこにケリーの夫がやってきました。

チャック:「部屋を間違えた」

ケリーの夫:
「いいんだ」

「覚えてないだろうが、5年前、君の歯の治療をした」
「スポルディングの紹介で...」

チャック:「覚えてる」

ケリーの夫:
「今はケリーの夫だ」

「ジェリー・ラヴェット」
「ケリーも来るはずだったが...」
「思いがけないことで戸惑うよ」
「一番大変なのは君だが、ケリーもつらい思いをした」
「君が死んだと思い、今度はこれだ。混乱してる」
「大きな精神的ショックで自分を失ってる」
「少し落ち着く時間を...」
「とにかく、すまない」

ケリーの夫は部屋を出ていきました。

チャックが窓の外を見ると、夫に抱き抱えられながら車に入る困惑したケリーがいました。

チャックの生還パーティーが開かれましたが、チャックの心はそこにありませんでした。

スタン:
「大丈夫か?必要な物があったら注文してサインを」

「眠れよ、明日も大変だ」
「山ほど書類がある」
「君は甦るんだ」
「明日、君は甦るんだよ!」

パーティーが終わり、食べ残されたたくさんの料理を見渡します。

茹でた大きなカニを手にとり、もううんざりだという風に放り出します。

ライターに火をつけて、いとも簡単に着いた火を憎らしげに見つめます。

ベッドに心そぞろに横たわり、ケリーの写真を見ながらライトを点けたり消したりして物思いに耽ります。

ハボタン



15.再会


4年の間、チャックはケリーに会いたいという一心で命を繋いできました。

自分の心を整理するため、雨の夜にケリーの家を訪ねます。

するとチャックが玄関をノックする前に、明かりが点いてケリーが現れました。

ケリー:「起きてたの。タクシーの音がして...」

ケリーもまたチャックに会いたい気持ちと予感、眠れない日々があったのでしょう。

4年ぶりに顔を合わせた二人。

じっと見つめ合いました。

ケリー:「濡れるわ」

チャック:「空港で見かけた。来てたんだね」

ケリーはチャックをハグしました。

チャックは困惑するもやっと帰ってきたという安堵感でケリーを抱きしめます。

ケリー:
「タオルをあげるわ」

「皆眠ってるわ」
「コーヒーを入れる?」

ケリーはまだそわそわして落ち着きのない様子です。

チャック:「いい家だ」

ケリー:「ローンが大変なの」

ケリーが開く冷蔵庫の扉がチャックの眼の前に来ました。

そこにはケリーの家族の写真がたくさん貼られています。

チャックはそれを見て、もう戻れないだろうと悟りました。

チャック:「この子の名は?」

ケリー:「ケイティーよ」

チャック:「ケイティーか。かわいい子だ」

ケリー:「手がかかるのよ」

タオルで雨を拭き取ったチャックは重たい言葉を発します。

チャック:「はっきりさせておこう」

緊張した面持ちになったケリーを見て、チャックは優しく少し話をそらしました。

チャック:「ナッシュビルにフットボールチームが?」

ケリーは胸を抑えながら深呼吸をして少し緊張が取れました。

ケリー:
「アメフトの話?そうよ、ヒューストンから移ったの」

「名前も変わって”タイタンズ”よ」

チャック:「ヒューストン・オイラーズが?」

ケリー:
「そうよ」

「去年はスーパーボールに出場したのよ」

チャック:「見たかったよ」

ケリー:
「くやしかったわ。最後に1ヤードの僅差で負けたの」

「あなたの好きなクリーム50%のミルクを切らしてるわ」

チャック:
「構わないよ」

「教授になる話は?」
「ケリー・フリアーズ・ラヴェット博士?」

ケリー:
「あの事故があって、何もかも宙ぶらりんに」

「でもまた勉強をするわ」

チャック:「これを君に」

チャックは4年前にケリーに貰った懐中時計を返しました。

ケリー:「まさか!」

チャック:
「壊れてしまった」

「写真は僕がもらった。色褪せてるんだ」

ケリー:「これはあなたにあげたのよ」

チャック:「でも君の家族の物だから」

そうしてチャックは悲しくあとずさりしながら、玄関のドアに手をかけました。

チャック:
「あの飛行機に乗らなければ...」

「車から降りてなければ...」

ケリー:「見せたいものがあるの。来て」

二人はガレージに向かいました。

チャック:
「僕らの車だ」

「あの車だ」
「なぜ、持ってるんだ?」
「信じられない」
「いい車だ。いろいろ思い出が」

ケリー:「2つは特に大切よ」

チャック:
「メキシコ湾旅行だね」

「僕が乗ってもいいの?」

ケリー:「あなたの車よ」

チャック:「よかった。タクシーが消えた。待たしていたんだ」

ケリー:「荷物を出すわ」

ケリーは車の中からチャイルドシートを取り出しました。

チャック:「もっと子供がほしい?」

ケリー:「さあ...」「今はそんなこと...」

チャック:「産めよ。産むべきだ」「僕ならつくる」

ケリー:「これから何をするの?」

チャック:「さあね、分からない」

チャックは一人、車に乗ってエンジンをかけました。

ケリー:「あの時 ”すぐ戻る” って言ったわ」

チャック:「ごめんよ」

ケリー:「私もよ」

二人は車のドア越しにキスをしました。



16.時のいたずらとすれ違い


そしてチャックはケリーとの思い出を断ち切るように車を発進させます。

ケリーもこれまでのチャックとの日々に戻れないことを悟りました。

チャックを見送るケリーは自分の表情を隠すためにガレージの明かりを消します。

チャックの乗る車は家の敷地をゆっくりと出ていこうとしています。

段々とケリーの視界の中の車が小さくなって行きます。

ケリー:
「チャック!」

「チャック!」

雨の中、ケリーはずぶ濡れになりながら、車を追いかけました。

かすかに聞こえたケリーの呼び止める声にチャックは反応して、車をバックさせました。

二人は雨の中、抱きしめ合いました。

ケリー:
「生きてると思ってたのよ」

「でも皆は ”あきらめたほうがいい” と」
「愛してるわ。これからもずっと」

チャック:
「僕も愛している」

「君の思う以上に」

チャックはケリーの手を引いて車に座らせました。

ケリー:「チャック...」

ケリーは家族を置いては行けないことを感じていました。

チャックはそんなケリーの優しさを知っていました。

チャック:「うちに帰るんだ」

チャックは数秒ケリーを見つめたあと、決心が揺らがないように前を向き直します。

そしてチャックはケリーと別れました。

アングレカム



17.漂流の追憶


友人のスタンと酒を交わすチャック。

チャック:
「彼女も僕も考えて、彼女はその末に僕をあきらめた」

「僕も島で思ったよ。 ”彼女を失った” と」
「 ”島からは出られない” 」
「孤独のまま ”死ぬのだ” と」
「”いずれ病気かケガで死ぬ”」
「唯一残された道...」
「自分の意志で選べる道は、いつどうやってどこで死を迎えるか」
「ロープを編み、山頂で首を吊ろうと決心した」
「それでまずテストをした。僕はそういう性格だ」
「だが重さで木の枝がポキンと折れた」
「望み通りの自殺もできない。僕はまったく無力だった」
「代わりに ”温かい毛布” が心を包んだ」
「 ”生きよう。何が何でも生き延びるのだ” 」
「 ”何が何でも呼吸をし続けるのだ” 」
「 ”何の望みがなくても、故郷に二度と戻れなくても” 」
「僕はそうした。生き延びて息をし続けた」
「ある日その考えがひっくり返った」
「潮が帆を運んできた」
「そして今ここにいる」
「僕は戻った。メンフィスで君と話してる」
「手には氷の入ったグラス」
「彼女を再び失った」
「彼女を失ったことは悲しい」
「だが島ではずっとそばにいてくれた」
「これからどうするか?」
「息をし続ける」
「明日も太陽が昇り、潮が何か運んでくる」



18.生きる寄る辺


チャックが最後まで開封しなかった ”天使の翼の小包”。

なぜ開けなかったのか?

生き残るための有効な道具があるかもしれませんでした。

ですがこの小包を開けてしまうと、チャックがお客に荷物を届けるという役割を失ってしまうんですね。

遭難したチャックにとっては生きるただ一つの理由です。

生きて戻るために大切に取っていました。

彼が今、生きている目的であり、存在するたったひとつの理由がこの小包を送り届けるということです。

友人ウィルソンの存在とこの最後の小包を届ける役目があったからこそ、チャックは自死を選ばなかったのだと思います。

チャックは天使の翼の小包を届けるために、宛先の住所にやって来ました。

ラジオの声:
「♫ 私は郵便配達員に手紙を渡しました」
「♫ 彼はそれを袋の中に入れました」
「♫ 明るくて翌朝も早い」
「♫ 彼は私の手紙を持ち帰った」
「♫ 彼女はそれに書きました」
「♫ 差出人に返送」
「♫ 住所不明」
「♫ そんな数字はないよ」

~エルビス・プレスリー『Return to Sender』より~


住人は不在でチャックは書き置きを記します。

書き置きのメモ:
「この小包のおかげで僕は救われました。ありがとう。チャック・ノーランド。」

この作品の冒頭にこの住所の住人のアトリエが映し出されていました。

パートナーと共同で創作していたような看板が入り口にありました。

「ディック&ベティーナ」

4年後、チャックがそこに訪れた時、

「&ベティーナ」

だけとなっていました。

彼女にもまた別れがあったのですね。

配達の帰り道、チャックは十字路に車を停めて地図を広げ、つぎの行き先を探します。

一台の車が止まり、一人の女性が話しかけてくれました。

通りがかりの女性:「迷ったの?」

チャック:「僕が?」

通りがかりの女性:「どっちへ?」

チャック:「それを考えていた」

通りがかりの女性:
「そっちは83号線」

「こっちはIー40号線に出るわ」
「右へ行くとテキサスからアリゾナを通ってカリフォルニアへ」
「そっちは何もなくて、行き着く先はカナダ」

チャック:「どうも」

通りがかりの女性:
「じゃあね」

「気をつけてカウボーイ」

チャック:「ありがとう」

何と女性の車の後ろにはあの天使の羽のシンボルが描かれていました。

イオノプシス



19.人生の壁と再出発


映画の冒頭で4年前、配達人が来た時に溶接面と取った時の、彼女のはち切れるほどの満面の笑顔。

そして4年後にチャックと出会った時の全く変わらない笑顔。

この笑顔と笑顔の間に彼女はどれだけの悲しみを乗り越えて来たのでしょうか。

時の流れの残酷さとともに、人が苦難を乗り越える強さをも感じることができます。

本作品のテーマのような気もします。

チャック:
「 "時" は誰にも非常だ。」

「病気の人間、空腹な者、酒に酔った者」
「ロシア人、アメリカ人、火星人」
「 ”時” は炎のように我々を滅ぼすか、温めてくれる」
「我々は時間に縛られて生きている」
「 ”時”に背を向けたり、”時” の観念を忘れることは、この商売では大罪だ!」

作品の冒頭、モスクワでチャック自身が言ったセリフです。

人との離別、難治性の病気や障害、金品の遺失...

苦難が訪れた時の感情の変化は、

人はまずその事を受け入れることができません。

はじめに「拒絶」です。

考えないように心から閉め出す。あるいは他人や自分に怒り狂い、涙が乾き干されるほど泣き叫びます。

現実を跳ね除けようとするのです。

次に「絶望」です。

前に進めない、心が動かない、何もする気力がない。

できることは眠ることか、ぼーっとすること、忘れるために何かに依存することだけ。

自律神経が「生きる」ことを停止させています。

次に「受容」です。

「もうあの人はいないんだ」

「ここにはそれはないんだ」

「決してこれは直せないんだ」

事実を認めて受け入れる。

悲しい感情をも自分の中に取り入れる。

この苦難を味わい尽くす。

無くしてしまった人の「ぬくもりの手」。

彼、彼女への「大きな頼り」「利己的な執着」「愛着」。

「思い描いた夢」。

「輝かしい思い出」。

すべてをしっかりと噛み砕き、完全に自分の心から切り離す。

最後に「忘却」です。

拒絶、絶望、受け入れのフィルターを通してきれいに浄化したものしか心の中にしまうことはできません。

心の「とらわれ」を取り払って記憶を最小にしなければ、心の中にしまいこんで忘れることができないのだと思います。



20.選択できる幸せ


最終シーンの十字路の道。

とても映画的な風景でした。

どの道に行っても未来が違います。

無人島では得られなかった「希望」と「自由」

チャックの傍らには新しく買ったウィルソンがいました。

チャックはベティーナの行く道を見つめ、微笑んで、映画は終わりました。

この後、チャックはベティーナを訪ねるのでしょうか。

それもまた、生き延びたからこそ選択できる自由ですね。

遭難したことで、生き抜くというシンプルな目標ができ、悩みや不安がくっきりと現れました。

今の暮らしのなかで不安に思っていること、たくさんお有りだと思います。

現代に生きる中で複雑で絡まったものがあると思います。

何が大切かの優先順位を皆さんはつけることができていますか?

そうした不安を整理をして、捨てることができるものとできないものに細かく分けましょう。

そうすれば、今まで背負ってきた荷物を降ろし、大事なことが見えてきて、優先順位がはっきりし、前に進むエネルギーを費やすことができると思います。

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

また次回の作品でお会いしましょう。

いちごの木



21.関連作品


『フォレスト・ガンプ 一期一会』ロバート・ゼメキス監督
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ロバート・ゼメキス監督
『Return to Sender』エルビス・プレスリー


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