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脳卒中者の麻痺側の推進力を改善するリハ介入の有効性

脳卒中者の歩行非対称性は歩行動作を獲得する上で重要な課題の1つになります。


その多くは、麻痺側が非麻痺側に対して随意性や反応性、速度、筋力、筋緊張など様々な要因によって非麻痺側と同様の働きを行えないことに起因すると言われています


では、麻痺側下肢の推進力を高めるための治療はどのような内容が報告されているのでしょうか?


今回は下記の論文を引用、参考にしながらまとめてみました!



このnote記事について

引用論文のImpact Factor:1.624
文字数:5724文字(参考文献のURL含む)
参考文献数:22本


脳卒中者の歩行の問題点

脳卒中者においては、

歩行速度の低下(1)
バランス制御の障害(2)
歩行の非対称性(3)

など、長期的な歩行異常をきたすことが多いと言われている。

さらに、脳卒中者の歩容の特徴として

尖足や膝の可動性低下、分回し歩行などが頻回に観察されます(4)。

これらの歩行異常は、生活期において歩行レベルの低下やQOLの低下の原因になりやすいと言われています(5)。


麻痺側の推進力を低下させる要因として、

遊脚時の膝屈曲減少(6)
歩幅の対称性の低下(7)
歩行速度の減少(8)

が関与している可能性があると指摘されています。


歩行の推進力は歩行中の前後方向の床反力によって身体が前進することに寄与すると言われています。

この推進力を発生させるには2つの事が重要と言われています。

1. 足関節の底屈モーメント
2. 質量中心の位置に対する圧中心を後方へ移動させること
(9)


一方で、脳卒中者においては、一般的に推進力は同年代の健常者と比較して低く(3)、麻痺肢の推進力が非麻痺側の推進力よりも小さいことが指摘されています(10)。

そのため、麻痺側に対する介入が歩行能力を改善する上で重要である事が先行研究からもわかります!


今回参考にしているシステマティックレビューでは、これらの麻痺側推進力に対して、どのような介入を行うことが効果的であるかを様々なデータベースから引用しまとめています。


結果として、1061の引用から対象となった研究は28件に絞られています。

これら研究のうち、6つの研究は高い質が保たれていたと報告され(11-16)、これらに選択された論文のうち4つの論文を引用 (11-14)して深掘って解釈していきます。



1. Yeung L,2018 の研究 (11)

2018年にjournal of neuroengineering and rehabilitation(IF; 3.519)に掲載された論文で、

慢性期脳卒中者に対して、ロボット型背屈補助足関節装具(AFO)を使用した研究になります。

ランダムに割り付けた脳卒中者の2グループに対して、約5週間の間で20回実施されています!

この介入により、

歩行自立度
運動機能改善
歩行速度向上
麻痺側荷重応答

に変化があり、歩行時に踵接地が可能になったと報告されています。

これらの改善は、踵接地時の床反力が増加し、制動力が大きくなり歩行速度が向上 (17)↓

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両足支持時間が短縮され、動的歩行の安定性が向上し、重心移動がスムーズになることが示唆されます!


さらに、股関節伸展の可動域が大きいことは、直立肢位(単脚支持)の安定性に重要であることが報告(19↓)されています。

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正常歩行ではTStに股関節伸展は20度起こるとされているため、目標としてはここまで持っていくことを検討するべきかなと考えられます!

その際、脳卒中者では股関節屈筋群の痙縮を伴いやすいため、予防的介入を行いながら股関節伸展を保持することは大切だと思います。


また、麻痺側遊脚期の膝関節屈曲角度が大きいことは、前進する運動量を維持する可能性があることも報告 (18↓)されています!

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遊脚期の膝関節は、ISwで約60度の屈曲、MSwでも約25度の屈曲が生じるとされます。この際、膝屈筋群が活動することで膝屈曲位が保たれるとされており、脳卒中者では痙縮によってこの辺のコントロールも難しくなります。


一方で、これらの知見を踏まえると、立脚期後半に股関節伸展運動が増大することで、膝関節のスムーズな屈曲につながり、膝関節屈曲運動が遊脚期で保たれることで麻痺側の推進力に寄与することが考えられます!

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では、他の論文も簡単にまとめていきましょう‼︎



2. Milot M, 2013の研究 (12)
慢性期脳卒中者に対する上下肢の筋力増強による下肢筋力と歩行能力について

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