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「羊文学Tour 2023"if i were an angel,"2023.10.13」羊文学(2024)

 ポップスど真ん中へ進んでいくと思いきや、昨年リリースされた「12 hugs(like butterflies)はインディーオルタナ成分を含んだ開放感あるギターロックだった。アジカンの「ソルファ」やラッドの「RADWIMPS4〜おかずのごはん〜」のような傑作感があった。今作はそのアルバムがリリースされる前にzeppで行われたライヴ音源の配信リリース。このライブ盤ではバンドがマス化される事を穏やかに拒むような、尖ったバンドサウンドが聴ける。塩塚モエカ(Vo.Gt)と河西ゆかり(Ba.)の綺麗な歌声と対象的に岩をゆっくり転がすようなゴリッとしたバンドサウンドは圧倒。「OOPARTS」で塩塚モエカが叫ぶ「zepp羽田!!」もカッコ良すぎる。

 文学部出身にしては淡白な歌詞を書く事が逆に音への偏愛を感じさせる塩塚だったが、キャリアを駆け上がるのと合わせてメッセージソングが増える。彼女達がただただやりたい事をやって今の場所を手に入れたわけではない事は、カタログを聴けば想像に難くない。彼女たちが追求する音楽と、広く好まれやすい音楽の乖離は決して小さくは無かったはずだ。乗り越えた事が彼女の言葉の断片に意志ある力を与えたとみるのは、安いストーリーテリングではないと思う。
 フジでグリーンステージに立った。人気アニメ映画のタイアップにもなった。素晴らしいアルバムも作った。この先3人はどういう方向へ向かうだろう。徒花に終わらなかった日本のシューゲイザーの行方。

 

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