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「the record」 boygenius(2023)

 仕事で組織作り、チームビルディングというものに取り組んでます。結果を出すために集団を効率的に動かす仕組み作りです。たいした人数でもないんですが、やるなら最高のチーム作ったるぜ!と経営マネジメントを勉強をしました。
 
 そこで「円卓発想」というものに出会った。「円卓発想」とは真ん中にVMVのような夢、目標を置き、その目標を社長も従業員も顧客も円卓を囲むように立ち、全員が同列に目標に向かう組織の枠組みである。普通、組織はピラミッド型のトップダウン。トップダウンに比べて円卓発想はトップに集中する仕事が分散され、全員に主体性が促される。ハラスメントも起こりにくいし、顧客の質も高まる。素晴らしい仕組みだ。「円卓発想」を学んだ私は名盤を聴いた時のように、体にビリビリ電流が走った。これはやばい…!これを実践したらウチの業界で銀河系最強集団を作ってしまう…!興奮したのである。

 しかし結果から言うと、私は円卓発想にトライして一瞬たりとも円卓発想を実現出来なかった。舵を切る人間が無能だったと言われればその通りなんだが、円卓発想の実現はめちゃめちゃムズイのである。40代以上の人は相当頭が柔らかくないとこの円卓発想を受け入れられないし、経験は無いが自信過剰な若手が発言権を強く持つ事でチームに混乱も生まれた。結局私はトップダウンに戻した。円卓発想は遠いユートピアに感じた。

 なぜ音楽を生業にしていない私が今でもバンドというものが眩しく見えるのかということに、円卓発想の体現があると思うのだ。もちろんワンマンバンドもたくさんあるけれど、そういうバンドは割と商業的に成功していて一般社会に馴染みやすいバンドが多い気がする。批評的に成功しているバンドほど良い意味でフロントマンの顔が残らない。boygeniusはローリングストーンズ誌の表紙にNIRVANAのパロディで載った時こそフィービーがカートの立ち位置だったけれど、3人が対等な立ち位置という事はライブでの3人並んでギターを持っている姿や楽曲制作にも現れている。

 円卓発想を体現しているチームの声には嘘が無い。だからboygeniusの歌う「ごめんね。」はこんなにも心を揺さぶる。グラミー受賞前に彼女達は活動休止を発表した。ライブで見たかった。

 

 

 

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