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PdM Days番外編:いただいた質問にお答えしました!

こんにちは!Mutureのかね(@yukagil)です。
2024/2/17(土曜)に開催された “PdM Days” に登壇させていただきました。当日は多くの反響をいただき、ありがとうございました!
当日のセッション内ではQ&Aツールに多くのご質問をいただきました。限られた時間では回答しきることができなかったので、この場を借りて回答させていただきます!
セッションを見てくださった方も、ご覧になれなかった方もぜひご覧ください。
※いただいた質問のうち、他の登壇者さま向けと思われるご質問は割愛しております。

当日セッションで私が話した内容はこちら!




プロダクトマネージャーのキャリアについて

Q. Mutureさんに質問です。大手企業でPdMをする魅力を教えて下さい。特にWeb系メガベンチャーのPdMと比較して、大手企業でしか得られない経験が何か知りたいです。

大手企業の魅力はやはり「多様かつ強力なアセットの存在」だと思います。 Web系だとどうしてもソフトウェアが中心となり、リアルとの接点としてもiOS/Android/PC端末などの範囲に閉じてしまいがちですが、大手企業の場合はリアルアセットを有していることも多く、これらもプロダクトの一部として扱っていくことができます。 丸井グループの例でいうと、金融インフラ以外にも、商業施設そのものや、イベント運営ノウハウ、不動産業、物流インフラ、空間プロデュースなど、バリエーションが豊かです。 このようなすでに日常に根ざした巨大なアセットおよびナレッジをベースに、これらを組み合わせていきながら新しい価値を生み出していくことができるのは、大手企業だからこそ実現できるインパクトであり、魅力だと思っています。

Q. PdMやプロダクト組織設計の支援をするのも楽しそうだと思う一方で。情熱を持ったプロダクトマネジメント意識の高い方だと、コンサルや大企業やサポートという形ではなく自社サービスで自分でゼロから作りずっと育てたいきたいという考えになっていくのではないかと思ってしまうのですが。よい人材の流出などの課題感はお持ちではないですか?

「プレイヤー」としてプロダクトに直接関与することで得られる視点や経験もあれば、「サポーター」として外にいるからこそ得られる大局的な視点や経験もまたあります。 「エンジニアとマネージャーの振り子」と近い話でもありますが、「プレイヤー」と「サポーター」を振り子のように行き来することでプロダクトマネジメントにおける幅と深みも生まれます。

この振り子における「サポーター」側として魅力のある環境を提示できれば、会社としてはより良い人材が集まり、より質の高い支援体制を提供することが可能となる好循環につながると考えています。 そしてこの先に振り子のもう片方である「プレイヤー」という選択肢があり、結果として「卒業」となることは健全な状態であり課題とは捉えていません。 ただし、Mutureは丸井グループとGoodpatchのジョイントベンチャーというユニークな建付けがありますので、卒業せずとも「プレイヤー」として活躍できる選択肢を提供することは、Mutureで働く魅力を高めていくためにも大事なことであると思っておりますので、ここは今後にご期待ください!


Q. コンサル会社にいる自社の新規事業PdMです。コンサル(外部支援)におけるPdMと、自社事業におけるPdMでは、客観的な視点の持ちやすさという観点で違う面も多い気がしているのですが、その違いをご自身で実感することはありますか? 

外部支援の場合は、いい意味で「空気を読む必要がない」というのが大きいように感じています。 企業の中にいると、暗黙的に存在する「階層意識」「縦割意識」「前例踏襲」「管理報告」など多くの磁場が存在しますが、外からの支援の場合はあくまで目的達成のために大局的な視点を持って必要なこと実行し続けることが役割であるため、これらを意識する必要がありません。 例えば、「課題Aを解決するために、他部門の部門長の助けが必要」というケースがあった場合、おそらくこの文字を読んだ皆様は、「課題解決のために部門長にも協力を仰ごう!」という発想が生まれると思います。 ですが、実際に中にいると「その人とは話したこと無いけど忙しそうだしな…」「偉いし何言われるかわからないしな…」「一旦あの人を通さないと…」「こんなことに付き合わせていいのかな…」などの目的には関係のない多くの感情によって、その発想を失わせます。 外部だからこそ、この一歩を踏み出す後押しをすることに価値がありますし、逆にいえばこのような感情を理解せず「できません」という声を真に受けていては、支援者としての価値は無いともいえます。 そういう意味で、外部だからこそシンプルにコトに向き合いやすいとも言えますし、シンプルに事象を捉えられるが故に、社内のパスを繋いだり、根回しをしたり、時には露払いするなどの泥臭い動きを通じて、大きな推進力を生み出していくこともまた求められることだなと感じています。

Q. 最近はPdMからキャリアをスタートするパターンも多いですが、そのような人間が積むべき経験・意識することなど、もし思うものがあれば教えてください

プロダクトマネジメントの理論はあれど、理論と実践には大きな乖離がある領域だなと感じています。 だからこそ、経験豊富な先輩PdMがいる環境に身を置き、なぜそのような意思決定をしているのかなどの、理論と実践をつなげてくれるような環境があると良いのかなと思いました。 もし、そのような環境がない場合は、外部のプロダクトコーチだったり、それこそプロダクト筋トレコミュニティなどの場に参加していくことで学んでいけるといいのかもしれません。
※ このようなキャリアへの解像度はそこまで高くなく、あくまで一つの意見として受け止めてください。

Q. PMとしてのPDCAサイクルは時間がかかるものと思っており、キャリアを急成長させることが難しいと感じています。PMの非連続な成長を作る上で効果的なアプローチがあれば教えていただきたいです

今プロダクトマネージャーをされているというのであれば、まずは担当しているプロダクトに中長期で向き合い、きちんと成果を出すという他ないと思います。 そのうえで、特定ドメインにおけるスペシャリストになるのか、マルチな経験を生かしたユニークネスを強みとするのか、はたまた価値探索やデリバリーなどに強みを出していくかなど、どこに独自の強みを作っていくのかというのは、キャリアビジョンと合わせて考えてみるのも面白いかもしれません。

Q. プロダクトマネージャー採用を進めようとしていますが、社内にそのポジションに自信がある人がいないのでうまく判断できないのではと懸念しています。エンジニアと違って技術力などを計りにくいと思います。同じポジションの人を皆さんが募集するとしたら、何を基準に判断されますか?

外部登用であれ社内登用であれ、特に一人目PdMなのであればそのプロダクトやドメインに対する「熱量」や「想い」が一番大事だと考えています。 逆にいえば「技術力」は経験によって後天的にも身に着けられるものですし、それこそ立ち上がるまでは我々のような支援者を活用するのも一つの手でしょう。 一方で、ある程度プロダクト組織を大きくしていきたいタイミングなのであれば、組織に不足するケイパビリティも明確になっていると思いますので、これをJDとしても表すことはそこまで難しいことではないかと思います。 「プロダクトマネージャー」と同じ名はつけど、実態としては十人十色です。 これを理解したうえで、「なぜプロダクトマネージャーが必要なのか」「期待する役割はなにか」「どういう組織構造にしていくのか」などの言語化を、外部支援者の力を借りていきながらクリアにしていけると良いのかなと思います。

プロダクトマネージャーに求められるコミュニケーションについて

Q. 自社商材のプラットフォーム事業のPOをしております。エンゲージメントは高く、その成長にまだ注力したいが、短期的なKGI成果も社内で求められ、どう両立して社内での事業生存率を高めながらユーザー体験価値の高いプロダクトをつくりつづけられるかに難儀しています。この場合のPOの立ち回りかたについてご意見を伺いたいです。

Q. ロードマップに反して足下のKPI達成のための開発が事業部から求められた場合にPDMとしてどう振る舞うべきでしょうか

「P/Lとしてプロダクトを見る事業部門」「B/Sとしてプロダクトを見る開発部門」の視点の違いに起因する話なのかなと思いました。
そして教科書的に言うと、これらを埋め合わせるのがプロダクトビジョンであり、ロードマップであり、ノーススターになるかと思います。
が、あくまでこれらはプロダクト側の文脈が強い言葉なので、ここは一歩踏み出して事業側の言葉で話してみるのはいかがでしょうか?
経営指標や事業計画、P/Lなどといった「収益」をベースに会話をすれば、きっとプロダクト側の視点からは見えてこなかった観点が浮かび上がり、事業部門の考えにも共感できるようになってくるでしょう。
ここまで来てはじめて「対話」ができるスタートラインに立てるのだと思います。


Q. 経営層から新規プロダクトPMF前でも利益を求められる経験からの質問です。 中長期的な投資効果を期待させるようなステークホルダーとのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

“PMF”自体がステークホルダーの間で認識がズレやすい概念だと思っており、まずはこの認識をすり合わせておくことが重要だと考えます。経営目線からすると、利益が生まれている = 事業化済みである、という認識を持っていたとしても不思議ではありませんからね。
踏まえて、もし質問者の方が思い描く成長ストーリーをもっと長い時間軸で捉えているのであれば、投資余力を確認したうえで、ロードマップとしてプランA/B/Cと複数パターン示したうえで、現時点のトラクションを解像度高い言葉で説明していくことで、短期で見すぎると大きな魚を取り逃がすよということを伝えていくのだと思います。

Q. 外部に任せると魂を込められない点は共感できます。一方リソースの問題で外部に頼む必要性がある場合、魂となる想いを共有させる勘所ってありますか?

「想い」に目を向けづらくする阻害要素を徹底的に排除し、長期目線を持てる構造を作っていくのがポイントだと思っています。
例えば、「開発パートナーとの契約は単発/単月毎ではなく、最低でも半年以上の包括的な契約を結ぶ」などはシンプルではありますが、最も効果的な取り組みの一つです。
外部の方もまた営利事業として支援を行っているという前提があるので、せめて短期的なキャッシュに目を向ける必要のない条件を提示するのが依頼側の努めだと思います。
あとは「企画検討から参画いただく」「ユーザーインタビューにも同席いただく」「いつでも出入り可能な入館証を発行する」「定期的に合宿や懇親会をする」「ミスに対して過度な追求は行わない」「過度な指揮統制は行わない」など、とにかく社員と分け隔てない環境を用意していきます。
「想い」に目を向けろという前に、「想い」に目を向けられる環境を作れていない場合が多いと感じていますので、まずはここからはじめていけるのがいいのかなと思います。

Q. PdM以外でプロダクトへの情熱を持つメンバーを増やすにはどうすればいいですか?

個人的には、全員がプロダクトへの情熱をもっている必要はないと思っています。が、ユーザーがプロダクトに触れている場へ積極的に連れ出していくことはとても重要だと思っています。
自分の携わったプロダクトによって、ユーザーが喜んでいる姿をみて嬉しくない人はいないでしょうし、逆に悪い体験となっていることを目の当たりにして、なんとかしたいと思わない人もまたいないでしょう。
一次情報に触れられる場をつくり、連れ出していくというのもPdMの重要な役目なのかなと考えています。

Q. 何かを変えるときに、どうしても伝えなければならないネガティブなことがあると思いますが、一番気をつけていることは何ですか?

なにかを推進するというシーンであれば、ネガティブな表現を用いなくてもあるべき姿へ向かっていける表現があると思いますので、可能な限り避けるようにしています。
そのうえでもネガティブな表現を使いたいということは、それなりに内省を促したいという背景があると思うので、「感情は乗せず、事実を伝える」「人数を可能な限り絞る」「伝えることによる影響範囲を想定しておく」あたりを意識しているように思います。

Q. 大企業の新規事業の進め方として、まずは既存のアセットをどう活用するか?と具体に先行しプロダクトのCoreを考えずに進めることが多い印象なのですが、そういった会社への意識改善の方法があれば知りたいです。

大企業の新規事業という前提であれば、既存アセットを活用した事業検討は比較的合理的な戦略であるということが前提としてあると思います。
ランチェスター戦略においては「強者の戦略」であるといえますし、既存のアセットを起点に新たな市場を開拓していくという「エフェクチュエーション」という考え方もあります。

まず、熟達した起業家には、最初から市場機会や明確な目的が見えなくとも、彼がすでに持っている「手持ちの手段(資源)」を活用することで、「何ができるか」というアイデアを発想する、という意思決定のパターンが見られました。このように「目的主導(goal-driven)」ではなく「手段主導(means-driven)」で何ができるかを発想し着手する思考様式は、「手中の鳥(bird-in-hand)の原則」と呼ばれます。 https://diamond.jp/articles/-/328597

https://www.infobahn.co.jp/ib_column/15233

マーケティング戦略的なアプローチだと「コーゼーション」的な文脈が多い印象は確かにありますが、既存のアセットを手段として、仮説検証を重ねていきながらCoreの輪郭を見いだしていくというアプローチもまた有効な手段であると考えています。
これらに唯一解はないので、自社の強みや特性を理解したうえで、どのような戦略を選択するのがよいのかについて話し合っている状態が存在していることが大事なのかなと思いました。

プロダクト組織について

Q. 創業十数年のWebサービス会社で仮説の階層の上流がないまま売り上げが立っているサービスを担当しています。ビジネスモデルも目新しくもない中、サービスとチームの再構築についてヒントをいただければと思います。

PPMでいう、いわゆる「金のなる木」という位置づけなのかなと思いました。
この場合「利益率の向上」「LTV最大化」あたりがテーマになるのかなと想像しますが、いずれにせよ経営における該当サービスの位置づけについて認識を合わせることが一歩目になると思います。
また、運営期間が長いプロダクトの場合は、競合環境や市場環境におけるニーズ変化なども十分に考えられるため、このような外部要因からみた新たな機会やリスクはないか?ということを改めて見つめ直してみると、案外新しい気付きが得られるかもしれません。

Q. 開発との距離感やレポートラインの違いでプロダクトからの要求が通りづらい組織体になっています。開発との位置関係のベストプラクティスはありますか??

仮に社内下請けに近い関係性にあるのだとすれば、それは「組織構造の負」といえるのでこれを変えられる力を持つ方とまずは課題感について対話をされてみてはいかがでしょうか。
プロダクトからの要求は、先行指標に影響をもたらすような項目が多く、経営指標におかれるような遅行指標とのつながりが見えにくいというのは事実かと思います。
だからこそ、プロダクトチームは経営指標に対して納得感のある先行指標を設定し、合意してもらえる状態を最初に作っておくことが大事になると考えています。
ですが、このような議論すら拒絶され、社内下請けのように動くことがよいことと認識されている環境なのだとすると、そこにおいてプロダクトマネジメントは求められていないのかも知れませんね。

Q. エンタープライズ向けのB2B SaaSにおいて、マルチプロダクト化しづらいコア部分が巨大な場合、どのようなPdM体制でプロダクトマネジメントしますか?PdM1人だととても期待する速度で改善していけないが、複数人のPdMで運営するにはコンフリクトが多く悩んでいます。

「システム」と「組織」の関係性に課題があるのだとすると、一般論になってしまいますが「コンウェイの法則」と「逆コンウェイの法則」を踏まえて組織構造を検討することが一歩目となりそうです。

もしマルチプロダクト戦略を描いているが、コアシステムがここにアラインしていない状態なのであれば、今後の成長に向けてシステムに手をいれる絶好の機会になるかと思います。
仮に、摩擦なくPdMを増やせたとして、それで改善速度が早くなるのだとすると、それは前提となる課題が違うところにあるのかもな…と思い、このような回答とさせていただきました。

Q. 階層型から分散型のチームになっていくと、自律性が高まる反面、チーム間の格差が生まれがちですが、チーム個別課題のうち全体に関わる様な情報共有をしていくための工夫はありますか?

当日のスライドにおける以下のページがこれに該当します。

プロジェクトに伴走をしているMutureメンバーの目線から、チーム内で解決不可能な組織レベルの課題を抽出し、これを経営もしくはDX推進室へ直接FBしていくことで適切に課題解決を実行していける体制を構築しています。

組織変革・組織伴走について

Q. 出島のような形でプロダクトに向き合う新しい組織を作り、人を外から取ったり、人事制度や報酬制度も変えることがあるとのことでしたが、変えるべきではない組織文化のようなものは、どのように見極めて、どのように新設したプロダクト組織に取り入れていますか?

異なる2つの文化を織り交ぜ、新しい文化を作り上げていくための努力を惜しまないという姿勢が、まず出島組織には必要になると考えています。
参考までに、私の所属するMutureも一種の出島組織に該当すると思いますが、Mutureの場合は「相利共生」の考えが大切であるという意志を会社レベルに込めており、この文化を支える機能としてPX(People Experience)やEO(Empower Organization)という役割が存在しています。


Q. カルチャー変革における銀の弾丸を教えてください。

ダニエル・キム教授が提唱する「成功循環モデル」や、「GRPI(グリッピー)モデル」など他にも有名どころはいくつかありますが、共通するのは「関係性の質」であり、結局は「対話」なのだと考えています。
大切なのは「限定合理性」の存在を理解し「相手の視点もまた正しい」という気持ちを大切にして「対話」を実施することができれば、それはきっと良い時間になるのではないでしょうか。


最後に

いかがでしたでしょうか。
もしも追加で気になること、話してみたいこと等ありましたら、お気軽にこちらからカジュアル面談をお申し込みください!

また、次回の登壇は、2024/04/17(水)19:00開催のこちらのイベントです!
ぜひ多くの方に届けたい内容となりますので、皆さまぜひご参加お待ちしております!

一緒にMutureの組織作り、組織支援に取り組んでいただけるメンバーも絶賛募集中です。特にPdMや、これから共に成長していくアソシエイトUXデザイナーの採用に注力しています。ぜひご連絡ください!

✍️この記事を書いた人:かね/Product Manager


@MutureCorp
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