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感想 マリーゴールド町心の洗濯屋さん  ユン・ジョンウン 韓国文学。魔法使いの女性の物語。彼女が開く心の洗濯屋は、傷ついた人を癒す店。短編集の集合体のような形式で客を次々と癒していく。そこには韓国の社会問題が凝縮されていて、それは日本でもかぶる部分があり共感できた。

著者は韓国人で、韓国ではベストセラー小説ということです。
魔法使いの話しなので、村山早紀の作品のような感じと思いきや、癒し系の自己啓発的な面が強く。
韓国独特の社会問題も取り扱っていて、ヒット作というのもうなづける内容でした。

――たとえば、の話だけど。後悔していることをやり直せたら、心の傷になっている落ちないシミみたいな痛みを消せたら、あなたは幸せになれる?。本当にそれを消すだけで、幸せになれるのかな。

ジウンは魔女です。
「悲しみを癒す力」と「願いを現実にする力」を所有しています。
彼女は能力を暴発させ愛する両親が消えてしまいました。魔法の力で何度も生まれ変わり、あちこち探し回るが、両親は見つからない。100万回目に生まれ変わったとき、ジウンは「心の洗濯屋さん」を開くことを決意する。

形としては、この心の洗濯屋に客が訪れて解決するパターン。
短編集と似ています。

印象としては長い。
もっとコンパクトにまとめるか、スリリングな展開にし読者を飽きさせないようにしないときついです。
韓国独特の社会問題がそこにはあるのですが、それは日本人にも共感できるものです。

夢に破れ、契約社員になっている青年。
日本にもありますが、韓国の映画などを見ていると、むこうはかなり正社員と非正規の差別がひどいし、なかなか正規社員にしないということです。

失恋した女性の話しは、あるあるかな。

青年の母親のヨンジャさんは母子家庭、男に騙され不倫の子を産んだシングルマザーの話し。
彼女は記憶を消さないことにします。
嫌な記憶も含めて彼女の人生ということなのかと思います。

家族との関係に悩むインフルエンサーの話しは幸せとは何かを問う深い内容でした。
金があれば幸せなのでしょうか?。顔バレしていては外で自由にはできないし、イイねの数をいつも意識していてストレスだし、家族はたかってくるし。友達はできない。窮屈すぎて爆発しそうでした。

自分の存在価値を見出せない宅配のおじさんの話しは、日本人にも共感できる話しです。
自己評価が低い人は一定数いて、それは過去のトラウマと関係していることが多いみたいです。

トラウマになっている記憶を消せば人は幸せになれるのでしょうか?

ジウンの母のこの言葉を最後に紹介します。

一日を楽しく過ごす魔法を教えてあげましょうか?。朝、目覚めたら、今日はいいことがある。って期待するの。そうすれば本当にいいことが起きるのよ。たくさん笑って、今日もいい一日を過ごしてね。



2024 5 6



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