武藤吐夢
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感想 チーム 堂場 瞬一 箱根駅伝を描いた熱量の高いスポ根作品。前半は少しぼやけていたが、後半はキャラが立っていてかなり盛り上がった。
少し前に池井戸さんの駅伝の本を読んで楽しめたのを伝えるとSNS上で、本作を教えてもらいました。 箱根駅伝を描いた作品です。 池井戸作品は二巻ということもあり、満足度はどうしても本作は劣るのですが、怪我ということにポイントを置いた点で、とくにラストの二つの区の走者のところが熱量が高く面白かったです。 疑問に思ったのは、いくら本人の意思だとしても怪我がわかっていて、監督はその選手を出すかということです。その怪我が悪化し選手の未来を取り返しのつかないものにしかねないと思った
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感想 エヴァーグリーン・ゲーム 石井 仁蔵 チェスにかける四人の男女の話し、その熱量がすごい。チェスがわからなくとも、この小説は楽しめます。
チェスのルールはまつたくわからないのですが、それでも、その楽しさや、それに熱中する人たちの熱量は十分に伝わってきます。 新人の作とは思えない完成度です。 とくに、最後の大会のbattleはかなり面白かった。 四人のプレイヤーの過去を軸に展開していきますが、これが魅力的でした。 透は、難病で入院生活を送っていたが友人からチェスを教えてもらい生きる意味を見出す。 友達は死にますが、彼はその友の分まで生きようと思うのです。 その原動力はチェスでした。 チェス部の高校生の晴紀
感想 ラブカは静かに弓を持つ 安壇 美緒 2023年 本屋大賞 候補作、 第2位。音楽教室にスパイという設定が秀逸です。いい先生なので葛藤も半端ない。音楽の力というものを感じました。
武器はチェロ。 潜入先は音楽教室。 主人公は精神内科に通院中のスパイ。 何だ、これ。アニメみたいな設定だなというのが第一印象でした。 音楽教室で使用される楽譜にも著作権料を取るということで調査に入ります。 どういう実態なのかの把握が仕事です。 しかし、彼はこの先生の優しさや人間性の善良さに引き付けられて 気がつくとスパイであるということを忘れていて、ただの生徒として仲間と交流し、音楽に前のめりになっていく。 でも、仕事ですから、最終的には裏切るのであり、葛藤があります。
感想 夜と霧新版 ヴィクトール・E・フランクル ナチスによるユダヤ人虐殺の事実というのか収容所体験を書いた名著として有名な本です。医師という職業もあるのか客観的に描かれていて遠い感じがしました。名著ではあります。
両親と妻をアウシュビッツでなくし、当人も収容所に入れられていた医師の体験談。 あの非道な歴史事件を冷静な筆致で描いています。分析していると言ってもいいと思います。 これは名言です。 著者はユダヤ人として収容所に入れられ、仕事や地位、妻や両親も失い。自分もいつ殺害されるのかという不安の中、つまり未来に対する希望がない時間を過ごしていたのでした。 そういう人だからこそ、こういう考えに至ったのかと思えます。 生きる意味があるからこそ、人は生きることができるとも言えます。 それ
感想 月と日の后 冲方 丁 女が政争の道具だった時代に、夫に死なれ、絶対的な権力者の父が死に。その後、まるで中国の西太后のように君臨した女傑の葛藤を描いた秀作。
「光る君へ」の世界そのままでした。 びっくりしたのは道長の妻倫子が90歳まで生きのびたことでした。 息子の頼道と弟、この物語の主人公である藤原彰子も80まで生きます。 これは倫子の血だと思います。 最初の望月の章で、まだ、少女だった主人公彰子に夫の一条天皇の母藤原詮子が語る藤原家の黒歴史のインパクトが強かった。大河ドラマのダイジェスト版のようでした。ここからの話しもあるので予告編なのかもしれません。 道長の父の兼家の悪行から、兄道隆の子伊周との確執。 藤原詮子の恨み節さく
春のとなり 高瀬 乃一 息子の無念を晴らすため江戸で薬屋をしている盲目の医師とその義理の娘の物語。息子、夫の冤罪を晴らすという目的があるが一つ一つの話しは医師と患者の物語でした。
この設定が良い。 主人公は、江戸で薬屋を営む未亡人だ。 義父である盲目の元藩医と暮らしている。 薬屋なのに、患者がやってきて治療する。 患者は貧乏人が多く薬代もまともに払えない人たちだった。 そこには金持ちとは違う理由が存在する。 それが物語の深みになっている。 義父を主人公はこう評している。 そんな奈緒は義父の元で医師の手助けをしている。 盲目の義父の目なのだ。 しかし、彼女の中には一つの想いがある。 それは・・・ 夫の命と義父の目の光、奈緒のささやかな幸せを奪
感想 少女 湊 かなえ 「人が死ぬ瞬間を見てみたい」という二人の少女の夏休みの物語。最後、あの結末は想像できなかった。遺書の謎が読後感にかなり影響してくる。
僕には、二人の少女がまったく理解できない。 それが大人になり切れていない人たちの思考なのか。 青春のジレンマなのか。 それとも世代間の格差なのか。 よくわからない感情が、その不穏なものがずっと読んでる自分に付きまとってきた。 「人が死ぬ瞬間を見てみたい」って・・・、ほんと、よくわかんない。 最初に遺書が紹介される。 その後に続くのは、「人が死ぬ瞬間を見てみたい」って考えに取りつかれている二人の少女たちの別々の夏の物語だ。 最後で、遺書の意味がわかるミステリー形式になっ