勇気の向こう側には、必ずそれ以上の世界が待っている。小説「思いを伝えるということ」が教えてくれたこと
少しずつまたnoteを書きはじめて驚いたことは、自分の考えていることが想像以上に整理されるということ。それから、拙くてもまとまっていなくても、そのときそのときの「瞬間の気づき」を書くのが一番いい文章になるということ。
きっと忙しい毎日の中で、みんなどうやって「書く」時間をつくっているのだろうと思いつつ、「書くこと」のもっと楽しい側面に出逢えそうなわくわくも湧いてきているので、時間を見つけて書き進めていきたいなと思っています。
今日はアートを使った「表現と対話の場づくり」とは別に、宿泊型で企画している”道草ダイアローグ”というユニットでのプログラムのお話。パートナーの「わかちゃん」と「亀時間」という素敵なゲストハウスに出逢ったことで動き出した場づくりでした。
10月に開催した1泊2日の ”鎌倉ダイアローグ” は、わたしがすごく大切にしている一冊の「本」をモチーフに企画を編んだのですが、まるでこの2年のわたしを振り返るような旅でもあったので、ここに気持ちを残しておきたいなと思い、書き留めてみることにしました。
わたしの今の「思い」は、わたしだけだとすぐに通り過ぎていってしまう
わたしがこの本に出逢ったのは、2021年の7月。北海道にあるフォルケホイスコーレ”School for Life Compath”滞在中に、とあるカフェで何気なく手にとったところ、冒頭文から思わずその世界に引き込まれたのを覚えています。
Compathのワーケーションコースでは「今何を感じてる?」「あなたはどう感じてる?」と聞かれる機会が何度かあったのですが、「わたしが今この瞬間に感じていることをそのまま話す」って簡単なようですごく難しいものだったりします。
けれど、日々まずは「感じる」ことからはじめて、少しずつ口に出してみる。「夏の北海道」という開放感と、「1週間を生活を共にする仲間たち」という心理的安全性のある場所だからこそできたというのもあると思うのですが、滞在期間を経て、そういうことが少しずつできるわたしになっていった気がします。
北海道に来る前のわたしはいろんなことを詰め込んで正直いっぱいいっぱいになっていて、1週間のコース初日に書いた目標が「カラダとココロをゆるめる」だったくらいなので、そういう言葉がすーっと入ってくるタイミングでもありました。
答えのないこと・モヤモヤこそ場に出してみる価値がある
実はちょうどこのワーケーション期間を含む4ヶ月間、青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムを受講していて。とにかく授業の中でたくさん対話をする機会があって、「答えのない問い」に向き合うことをたくさんやっていたのです。
そして最後のリフレクションの回で、模造紙に「今のわたしの問い」をシートに書いたところ、そのシートを見たたくさんの人が「その人が考える答え」を書いてくれていて。あ、ここに会話が生まれていくのだ、ということに気づいたのです。
けれど、世界は問いを投げることで、色々な形で答えてくれるし、自分と違う人がいることの素晴らしさを見せてくれる気がして。モヤモヤこそ勇気を出して場に出してみると、形が変わったり、よりよく見えるようになって、予想もしない次のステップに進んでいけるものかもしれない、と今では思っています。
仕事をしていると「〇〇が▲▲なので、□□です」という会話体が基本になってしまっていることって多いと思うのですが、人間の本質ってそんな記号的な会話ではないような気がするのです。
迷うこともあるし、モヤモヤすることもある。だからこそ、人と一緒に助け合うことができるし、共に新しい答えを生み出すこともできる。そういうことに意味があるんじゃないかと思うようになったのです。
認めたくない気持ちをその場に出すことは、相手を本当に信頼しているということ
それまでわたしはずっと、「人より上手くできること」「相手の気持ちを推しはかること」「いつもご機嫌でいること」が人に好かれることだと思っていました。だから人に任せることができなかったし、自分でやったほうが早いって思っていたところがあった。
けれど、この本に出逢えたことに加えて、いろんな人の話を聞いたり、優しいかかわりに触れたり、そのとき出逢った彼と一緒にいるなかで、素直に「これ苦手だからお願いしてもいいですか?」「ちょっと今自分にこもりたい気分なので」「今のはなんかモヤっとするかも…」と伝えられるようになっていって。自分が苦手なことを素直に認めて、それにちゃんと向き合っている姿こそ、その人らしさが出てきて、愛される部分になっていくのだなと気づいたのです。
そういうことを繰り返していくなかで、少しずつ自分のまるごとを受け入れられるようになってきた気がしています。
そう思ったら、怖いことがあまりなくなってきて、あぁ人に関わってもらうことってとっても幸せな世界だった、と気づいたのです。
きっとどこかで、完璧じゃないわたしを否定している自分がいて、そんな自分では受け入れてもらえないって思っていたんですよね。そういう自分が許せるようになって、受け止めてもらって、人とのかかわりはずっと優しくなった気がします。
亀時間という場所が、私たちを時間から解放してくれる
”鎌倉ダイアローグ” で、私たちがいつも開催場所に選んでいるのが、古民家ゲストハウス亀時間。
「亀時間」という名前は、ミヒャエル・エンデによる児童文学『モモ』に登場して主人公を助けるカシオペイアという亀に由来しています。「奪われた時間を取り戻す」という内容が、代表のマサさんと一緒にゲストハウス創設の準備をしていたすずまゆさんの経験と想いに重なっていたからだそう。
実際時計がないのもあるけれど、この場所にいると不思議と時間が長く感じられるのです。
ここにいると、まるでマイスター・ホラの言葉が聞こえてくるよう。わたしの転換期によく登場する『モモ』と再会したような、不思議な巡り合わせでした。
旅人だったオーナーマサさんの、この言葉もじんわり響いてくる、とても素敵な空間だなと思っているのです。
そして、わたしと「わかちゃん」の夢も、この亀時間に出逢ったことで動きだし、この春に1回目、秋に2回目のイベントを企画することになるのです。
新しいドアを開ける勇気と、鍵である自分に気づくこと
1日目は「思いを伝えるということ」の中に出てくる「立ちはだかるドア」と「鍵」の詩を紹介しつつ、わたしがヨーロッパを4ヶ月旅してきた話をしました。なぜなら、人生はどんどん新しいドアを開けていくことなんじゃないか、とわたしは思っているから。
次の旅に出るのがちょっと怖くなっていたときに、フィンランドのムーミンミュージアムでこの言葉を見つけて。あぁ、わたしは新しい世界を自分の目で見に行きたかったんだなと気づいたのです。
これらは、旅をしている途中で自分の中に湧いてきた言葉をメモしたものなのですが、今でもすごくわたしを支えてくれていて。今振り返ってみれば「自分の心を場に開く」ということも、一つのドアを開けることみたいだったなと思うのです。
旅を重ねる中で自分が経験として気づいたから、それは日常に帰ってきても大切にしていきたいし、この言葉が必要な人に届いたらいいなと思っています。
わたしの「心の箱」には、まだまだ可能性がつまっている
夜にはキャンドルを囲みながら「価値観カード」を使ったワークをしたのですが、これがことのほか難しくて。
ルールはとてもシンプルで、最初に人数分×5枚のカードを配って、残りのカードは真ん中に山にして置いておきます。順番を決めたら、カードの山から1枚引くか、誰かが手放したカードのどちらかから1枚をとり、手元に残す5枚に入るかどうか選ぶ、という作業を繰り返します。
けれど、今この瞬間の気持ちで選んだカードは、終わってみてもとても納得のいくものだったのです。なんとなく惹かれるカードって、実は自分が一番欲しいと思っているものだったり。一方で、もう自分の中にある価値観は、好きだと感じるけれど、今はもう手放せる気がしました。
そしてこのときに出逢った”Chaos(カオス)”という言葉が不思議と残って、次の日に持ち越されることになるのです。
次の日はジャーナリング&海でのペアウォークをして、創作ワーク。「自分の心の箱をつくってみよう」というワークをしました。1人ずつ白い箱のなかに、自分の心模様を描きこんでいきます。難しそうと思われるかもしれませんが、意外や意外。ふわふわの綿・毛糸・キラキラモール・風船・ぷちぷち・和紙・シールなどなど素材を前に置かれると、大人子ども関係なくもくもくその世界に入ってしまうものみたいです。
完成したわたしの「心の箱」を見て思ったのは、あぁわたし意外とこの混沌な今を楽しんでいるんだなということ。そして「オノマトペでタイトルをつける」というお題で、この箱から聞こえてきたのは軽やかな音楽だったのです。
整理したい整理したいと言いつつ、何かが出てくるかもしれないこのカオスさとわくわくは、いまのわたしかもなって気づいてしまいました。
とりとめもなくここまで書いてきてしまったのですが、やっぱりわたしが一番人に共有したいと思うのは、「自分が素敵だと思うこと・大切にしたいこと」だけでもなくて、「ちょっと勇気を出したからこそ見えた世界の美しさ」なのかもしれないと思い始めています。
やっと今色々と企画をやってみて見えてきたこと・わかってきたこともあるので、少しずつカオスの中から、キラキラ光る次の未来を取り出してみたいなと思っています。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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