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Parker Vacumatic

突然ですが、皆さんはParkerの製品についてこういう疑問を抱いたことはありませんか?

「矢羽クリップっていつ頃から使われ始めたんだろう」

今やParkerというブランドの象徴でもあるこの矢羽クリップですが、長いParkerの歴史でいつ生まれたのでしょうか?

"未知への挑戦や新たな可能性を探し求めるなど、志を抱く人々の道しるべでありたい" Parker公式サイトより引用

矢羽クリップにはこのような意味が込められているのは有名な話です。

今回紹介するペンは、そんなParkerにとって歴史的であり、初めて矢羽クリップが使われたプロダクト、「Vacumatic」です。何本か入手したので、少し語りたいと思います。

※この記事の情報は自分が集めたものなので、間違いがある可能性があります。鵜呑みにしないでください。また、間違いを発見した方はコメントで指摘してください。

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Vacumaticとは?

Vacumatic(以下バキューマチック)は1933年に発売されました。発売当時はバキューマチックという名称は使われておらず、"Golden Arrow"という名称で売られていました。そして名前は、インク吸入方法をアピールするため、"Vacuum Filler"と変わり、最終的にバキューマチックとなりました。このシリーズには0.92ミリのペンシルと14kニブの万年筆が存在しており、サイズ展開も豊富だったようです。アメリカでは1934年から1948年まで、カナダでは1953年まで発売されていました。

当時、Parkerはこの製品にかなり力を入れていたようで、ネットの海ではバキューマチックを大々的にアピールする広告などをちらほらと見ます。また、独特な横縞模様を模倣したビンテージ筆記具も散見されており、当時のこのシリーズの人気度がひしひしと伝わってきます。

外見

ペンシルと万年筆に共通しているのは、幾重にも重なる横縞の特徴的な美しいセルロイド軸で、特に、万年筆のインクタンクとなっている軸は縞模様の隙間が透けており、中のインク残量を確認することができます。セルロイド軸の色はゴールド、シルバー、ブルー、レッド、グリーンがあります。色ごとに製造されていた期間が違うそうです。また、縦縞のモデル(通称:Shadow Wave)や、碁盤の目のような網目模様のモデル(通称:Golden Web)などが存在していますが、軒並み相場はお高めです。万年筆のペン芯はエボナイト製です。

クリップにフォーカスを当てましょう。今では馴染み深いあの矢羽クリップがあしらわれております。冒頭でも話しましたが、このシリーズは初めて矢羽クリップを採用しました。元祖矢羽クリップと言えるでしょう。

また、私の所持している物は「ブルーダイヤモンド」と呼ばれる青い宝石のよう塗装がクリップに施されております。「ブルーダイヤモンド」は製造時期の後期にあたるものに見られる特徴です。製造時期ごとの差異は、キャップに付いているリングやクリップの形状などがあります。

そして、ボディーには刻印がされており、自分の持っている個体はアメリカ製であることがわかります。また、日付コードも刻印されており、製造年代もわかるようになっています。

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機構や内部構造

名前の由来にもなっているバキューマチック機構について解説しますが、まずはペンシルの説明から。

ペンシル

0.92ミリのペンシルの機構は回転繰り出し式で、動作はスムーズです。芯を戻す時は芯を出したのと逆方向に回すだけで引っ込むので、芯を出し入れする動作は回転のみで完結しています。その点は実用的で優れていますね。

また、上軸を引き抜くと消しゴムが登場しますが、この消しゴムは恐らく使い物にはならないでしょう。恐らくというのは、実際に使ってないからです。

万年筆

皆さんが1番気になっているであろう万年筆の機構の紹介です。

尻軸を回すと尻軸が外れ、反対側に付いているボタンが出現します。本体首軸までインクに浸し、このボタンを数回押すことでインク吸入が完了します。この吸入方式は「バキューマチック機構」や「ボタンフィラー」と呼ばれています。この吸入機構は、同年代のParker51にも搭載されていたり(なんとデモスト軸にも!)、現在でもPENBBSなど一部のブランドの万年筆に使われていたりしています。

その仕組みは、ボタンを押すことでインクタンク内の空気がニブから押し出され、ボタンを離すとインクを吸い上げるという単純な仕組みになっています。

この機構の一番の欠点は、なんといっても吸入の要であるゴムサックが劣化しやすいことです。他の吸入方式の万年筆よりも劣化しやすく、定期的に修理する必要があります。修理には専用の工具などが必要です。どうやら、有志の方がバキューマチックのリペアキットを販売しているようです。ゆくゆくは私もリペアキットを入手して修理出来るようになりたいです。

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書き心地や使用感

ペンシル

芯の出し入れが軸を回すだけで完結するので、非常に使い勝手がいいです。また、私の持っている個体は小さめですこし握りづらいですが、なめらかな書き心地がお気に入りです。0.92ミリですが、0.9ミリの芯でも問題なく使用することができます。芯は新アインの2Bを入れて使用しています。

万年筆

インクフローもよく、ぬらぬらと書くことができます。軸は軽いので速記にも向いています。字幅は実用するには太かったため、私は字幅調整してもらいました。ニブはやや硬めです。また、この万年筆はどういうわけか元々キャップに穴が空いているので塞ぎました。インクは色彩雫の深海を入れて使用しています。軸色と相性抜群です。

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最後に

吸入機構のメンテナンスや、セルロイド軸のお手入れなど色々と手間がかかりますが、その分愛着も増します。そんなバキューマチックへの愛を綴った文章を書きたいという衝動に駆られた為、今回の記事が誕生しました。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!それでは、次の記事でお会いしましょう!


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