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フォトグラメトリをした3Dモデルから意味を見出したい。 ー廃仏毀釈 その1ー

 私はフォトグラメトリで生成した3Dモデルを単に愛でるのも好きですが、その3Dモデルから何らかの意味を見出したいとも思っています。このシリーズでは私が作成した3Dモデルのうち、石塔や石仏、石碑の3Dモデルから私なりに読み取れたこと、そこから仮定したことを綴っていきたいと思います。
 そのシリーズ1回目のテーマは「廃仏毀釈」です。

 以下の記事は@musimarusanが個人サイト(現在は廃止)に掲載していた内容を基に改めて考察を行い再構成をしたものです。

1.簡単に廃仏毀釈とは

 これは私個人の考えですが「寺院、仏像、経典など仏教に関するものを破棄し、仏教を排する民衆運動」と言えるでしょうか。ここでは、明治時代の初期に時の政府が打ち出した神仏分離政策を受けて民衆が起こした仏教排斥運動を指すことにしましょう。ちなみに私が廃仏毀釈を学ぶにあたって読んだ本は『廃仏毀釈 ――寺院・仏像破壊の真実』(畑中章宏 ちくま選書)です。

2.考察対象

 題目塔という南無妙法蓮華経と刻まれた供養塔が建立されている地域があります。題目塔に関する詳しい説明として、例えばWikipediaではありますが説明がされていますので参考にしてください。
 私が縁のある東京都西東京市の旧保谷市地区にも日蓮宗に関係するいくつかの題目塔があります。ある日、いくつかの題目塔が目にとまったのでフォトグラメトリを試みた次第です。

3.西東京市北町の路傍の題目塔

 西東京市北町のとある路傍に題目塔が1基建立されています。以下のリンク先でこの題目塔のテクスチャーなし3Dモデルを観ることができます。リンク先の3Dモデルでは最初に南側の面を向いています。ここでは便宜上、題目塔の4側面をそれぞれ東面、西面、南面そして北面と名付けることにしました

 図1(以下、図番号に大きな画像への直リンクを張っています)は3Dモデルの各面の画像です(縮尺が分かるようにはしていませんでした)。この題目塔の東西各面に「南妙法蓮華経爲法界」という文字がはっきりと読み取れると思います。この「南妙法蓮華経」というのが題目というのだそうです。そして「法」以外の文字で大きくハネを延ばしており、この字体は日蓮宗独特のもので、この字体で書いた題目を「髭題目」と呼ぶようです(コトバンクへのリンク)。

図1 3Dモデルの東西南北各面の画像

 南面にも何か文字が書かれていたのだと思いますが、表面が削られているのでしょうか、酷く損傷していてほとんど書いてある内容が分かりません。ただし、右下部分に「中二七人」と文字が読める部分があり、ここはおそらく「〇〇村講中二七人」のようにこの題目塔の建立に関わった人々の数が書かれていたのだろうと推測しています。
 その他、南面をよく見ると髭題目に特徴である大きなハネの様なものが残っているように見えます。図2の右は南面の画像で赤、青、緑の各矢印でしめした先にハネの様な跡があります。これを西面の画像と比べると、ほぼ同じ位置関係でハネが観られます。このことから、南面にも同様に「南妙法蓮華経」と刻まれていたのだろうと推測しました。ただし、南面の「経」以下の文字はよく読み取れませんが、西面と同じ「爲法界」とではないように見えます。
 北面にも文字が刻まれていたように見えますが、こちらも損傷しているのだと思います。

図2 西面と南面の比較 

 さて、南面と北面は刻まれた文字がほとんど判別できないほど表面が損傷していますが、私はこれは廃物稀釈の風潮の煽りを受けて、文字部分が人為的に削られたのだと仮定してみました。
 この題目塔から東に500mほど離れた旧下保谷鎮守三十番神(現天神社)にも題目塔があります。この仮定を検証するには至らないのですが、次回はこの題目塔についても触れて廃物稀釈との関係を推し量ってみたいと思います。

おわり