新・オーディオ入門168 測定器編 オシロスコープ

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

オシロスコープとは時間と共に変化する電圧を計測する測定器です。 こう書くとバッテリーが減っていく様をグラフ化する様な測定器だと思われるかもしれませんが、 オシロスコープはごく短い時間の信号の変化を計測する事ができます。 それはつまり、信号の波形を観測することを意味します。 計測する時間を1/60秒とすれば、壁のコンセントの電源波形を観測できますし、 1/1000秒とすれば、オーディオの基準信号である1KHzの正弦波も観測可能です。 さらに1/10000秒とすれば音楽信号に重畳するノイズも見ることができます。 オシロスコープの使用方法は測定器の中でも特に難しく、 測定器のクセと測定者の技術によって観測できる波形は大きく異なってしまいます。 1vの電圧の1KHzの正弦波でしたら誰でも観測することはできますが、 そこに重畳する10mVで100KHzのノイズともなるとかなりハードルが上がります。 さらに、そのノイズが不定期に発生するものだとベテランエンジニアの領域になります。 こういったノイズの観測はストレイジ機能(単発で発生する電圧の変化をメモリに入れ、 静止させて見る機能)のあるデジタルオシロスコープと リアルタイムで高周波までの観測が可能なシンクロスコープ(遅延掃引付オシロスコープ、 波形の一部を拡大して観測することが可能)を駆使して行うことになります。 当社では、このようなノイズの観測のために20年以上前のアナログのシンクロスコープを1台保管しています。 オシロスコープを日常的に使用するようになると オシロスコープなしでの音響機器の製作は、目隠しをしているかのようです。 アマチュアの方は、測定器を買うぐらいなら、高音質のパーツを買うという方も多いのですが、 回路の問題点の解析や、高性能化には欠かせない測定器です。 現在では、小型で安価なポータブルオシロスコープもあり、通販で簡単に入手可能です。 安価なポータブルオシロスコープには帯域幅が500KHz程度のものもありますが、 おすすめは20MHz以上のものです。実際に20MHzの信号を計測することは稀ですが、 高周波ノイズの立ち上がり部分の周波数はかなり高いので500KHz程度では不十分です。

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