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新・オーディオ入門167 測定器編 ミリバルと歪率計

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

● ミリバル
交流電圧計には電源電圧を計測するものと音声信号を計測するものがあります。 電源電圧はインピーダンスが低く、電圧は数ボルト以上あるのでパッシブな交流電圧計で計測可能ですが、音声信号はそうはいきません。 例えばプリアンプの出力電圧は1ボルト以下で、計測には1ミリボルト単位の分解能が必要です。 また、インピーダンスも最低47キロオームは必要で、できれば500キロオームくらいのインピーダンスで測定したいところです。 これを実現するには交流電圧計に増幅回路を内蔵させる必要があります。 真空管時代にそれを実現したのがvalve voltmeter(真空管電圧計)で略してバルボルと呼ばれていました。 バルボルの中でも特にミリボルト単位の低い電圧が測定可能なものはミリバルと呼ばれました。 現在では真空管ではなく半導体の増幅回路を使用していますが現在でもミリバルと呼ばれています。 ミリバルの文字盤はボルトやミリボルト以外にdB(デシベル)も表示されておりアンプのゲインをデシベルで測定することも可能です。

● 歪率計
歪率計は増幅回路の歪率を計測する測定器です。急峻なノッチフィルターが内蔵されています。 1KHzでの歪率を測定する場合は1KHzの信号の電圧を100%に設定し、1KHzの信号だけをノッチフィルターで抜き取り、 それ以外のすべての信号の電圧が何パーセントになるのかを測定します。 ノッチフィルターは手動で調整するタイプ、全自動、半手動がありますが、正確な値を測定したいのであれば手動をおすすめします。 真空管アンプでは歪率3%というのもごく普通でしたが、現在の半導体アンプでは0.0001%以下になることも珍しくなく、 全自動タイプではここまで正確に計測することはできません。 ただし、ノッチフィルターの調整はとてもデリケートで簡単には調整できません。 歪率計でごくわずかな歪を測定する際は慣れが必要です。 また、歪率計は測定時にミリバルも必要になることが多いのでミリバル内蔵ものも販売されています。

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