カタルーニャ、モンセラート、そして鋸山
ガウディのサクラダ・ファミリアがいよいよ完成に近づいているようです。とはいえ以前は2026年完成と言っていたのですが、どうも無理らしい。ゴタゴタ続きの2027年開業予定の中央新幹線とどっちが先?とブックメーカーで賭けの対象にしたくなってきますが…
このアントニ・ガウディはスペインのカタルーニャ地方出身。スペインの中でも独自の言語や文化を持っており、独立意識も高いとされる地域。しかも2017年には独立宣言をしてスペイン国内で大きな騒動になったそうで。何しろバルセロナを擁するこの地域の経済規模はスペインのGDPの約2割を占めており、日本で言えば東京が独立宣言するような状態になる。ちょっと想像もつかない世界ですが… 日本でも沖縄やアイヌの問題がありますが、なかなかこうした「国の中で地域間の分断がある」という感覚は理解しにくいのかもしれませんね。
個人的にカタルーニャと言えばまずモンセラート山とモンセラート修道院をまず思い浮かべます。この山の洞窟に聖母マリアが出現したとの伝説があり、それがきっかけで多くの参拝者を集めるようになった地。修道院に安置されている「黒いマリア像」でよく知られています。修道院の設立は11世紀、ヨーロッパでは12世紀ころからマリア信仰への熱が高まったそうなので(チェスで女王(クイーン)の駒が最強になったのはこのマリア信仰が高まっていた時期で、その影響があるのでは、という説を読んだことがあります)、そんな「時代の波に乗った」場所なのか、あるいは逆に波を作り出すきっかけとなった場所なのか。
そしてモンセラートと言えば古楽ファンにとっては「モンセラートの赤い本」。↑の画像は「黒いマリア像」をジャケット(とタイトル)に採用したモンセラート修道院に伝わる歌曲を集めた作品集。
敬虔さとエスニックな響き、歌心とダンサブルなノリの良さ、古式ゆかしさと現代にも通じる新しさが共存したとてもおもしろい1枚となっています。
また、モンセラートと言えばかつて古楽歌手として活躍したモンセラート・フィゲラースさんという方がいました。
↑のCDは「古きカタルーニャの歌~哀歌と伝説曲」というタイトルでその名の通りカタルーニャに伝わるさまざまな曲を収録したもの。パプロ・カザルスのチェロ版でおなじみの「鳥の歌」(ヴォーカル付き)も収録。さらに「カタルーニャ国家」も収録。
こちらはノリの良いモンセラート修道院の歌曲集とはうって変わって美しくも哀愁を帯びた旋律を楽しめる1枚となっております。
ちなみに「モンセラート」の名前といえばフレディ・マーキュリーとも共演したオペラ歌手のモンセラート・カバリェもいました。ふたりともカタルーニャ地方の中心地バルセロナ出身。
なんでもカタルーニャ地方には「モンセラート」の名前を持つ女性が多いそうです。そしてフィゲーラスはサルバドール・ダリの出身地の都市の名前。位置的にはスペインとフランスの国境近く、ピレネー山脈の近く。
となるとモンセラート・フィゲーラスさんの名前を日本語風に表現すると「東海道富士子さん」みたいになるのでしょうか?カタルーニャのひとたちにとってはとても縁起の良い名前なのかもしれませんね。
で、モンセラート・カバリェ(Montserrat Caballé )さんの方は…「Calalle」は「騎士」とか「騎兵」みたいな意味でしょうか。そうだとすれば日本風に表現すると…
「坂東武者富士子さん」
ってなところでしょうか?(ってそれじゃ名前じゃなくて通り名だろ!)
厳密にはカタルーニャ地方はスペインだけでなくピレネー山脈を隔てた北側の地域も含まれます。日本に例えれば富士山文化圏に属する地域が山梨県と静岡県に分断されているような感じでしょうか。
そしてこれが富士山の帰属を巡って山梨県と静岡県がライバル関係になっているわけでして。しかも車のナンバープレートでも「富士山ナンバー」が山梨・静岡両方で使われていてよその人たちから見れば大混乱。
そうなるといっそのこと富士山文化圏を山梨・静岡いずれからも分離させて「富士山県」を作ったらいかがでしょうか?とカタルーニャ地方の複雑な歴史を見ているとそんな考えも脳裏をよぎります。そうすれば中央新幹線の工事も順調に進むようになるかも!(え?「富士山がなくなったら山梨の売りがなくなっちゃうだろ!」って?信玄がいるでしょ、信玄が!)
国際化・グローバル化が進んでいますが、まだまだ一般の日本人にとってスペインは「遠い国」の印象もあります。とくにカタルーニャ地方と言われてもなかなかピンとこないわけですが…この地域はこれまで数多くの芸術家を世に送り出しています。
ガウディ、フィゲラーラス、カバリェ、ダリのほか、長い間スペインで専制をふるったフランコ将軍に抵抗を示し続けたピカソとカザルスの「両パブロ」(ピカソは生まれはカタルーニャ地方ではありませんが)、クラシック作曲家ではエンリケ・グラナドスとイサーク・アルベニス、オペラ歌手のホセ・カレーラス、わたし自身はあまり興味ありませんが(笑)画家のジョアン・ミロとか。
わたしたちの多くは知らず知らずのうちにカタルーニャの文化・芸術と接する機会を持っているのでしょう。
なお、モンセラートとは「のこぎり(で切ったような形の)山」といった意味だとか。
あれ?日本にも似たような名前の山なかったっけ?千葉県あたりに。
というわけで鋸山。千葉県では伊予ヶ岳を「千葉のマッターホルン」と名付けて売り出していますが、こっちも「千葉のモンセラート」って売り出せばいいのに。
モンセラート山には聖母マリア、こちらは薬師如来(↑は百尺観音像)。モンセラートは天上の世界、こちらは地獄を覗き見る世界。
そしてモンセラート山はワーグナーの「パルジファル」のモンサルヴァート城のモデルになったとか。こちらは…うむ、今度わたしが鋸山を舞台に壮大なファンタジー作品でも書いてみようか、と野心のひとつも抱いたりするのでした。
スペインでは鳥は「Peace(平和),Peace」と鳴く。
日本では鳥は浄土への願いを込めて「ホーホケキョ」と鳴く。
世は無常なり
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