【百物語】夢遊病の事件後

ある時、宅配便が送られてきた。

送られたモノ……
私はそれを見た時、驚くほかなかった。きっと、嘘だ。これは夢だ。幻だ。悪夢だ。
送られたモノを見てそう思った。
しかし、時が過ぎれば過ぎるほど自分は冷静になっていく。
冷静になっていく自分はこれは現実だ、現実だと頭の中は叫ぶ。これは現実だ。これは物体である。これは夢ではない。
私はいろいろ交錯する頭の中で泣きたくなる。泣いた所で何もならないが、泣きたくなる。
とりあえず、泣いてみた。何もおこらなかった。
そして、気が失うまで泣いた。

自分が人を殺した記憶はない。しかし、この体には経験されている。
別に自分は多重人格ではない。だが、夢遊病だと医者からは診断されている。
そのため、たまに朝起きるととんでもない場所にいる。
公園の池の近く。
他人の家のベット。
５キロ以上離れた場所。
どう入ったか警察も首をひねった、牢屋の中。
ある時こんなモノが手紙と一緒に送られてきたこともあった。
それは請求書だった。私は身に覚えがないので、不思議に思いながら手紙の方を読んだ。

拝啓　一週間ほど前に我が宅へ入りなった人へ
貴方様が部屋で寝ている父を踏んだので父は死にました。
かねてより父は病弱で何時死んでもおかしくない体でしたので、踏んだのが直接の原因とは言い切れませんし、父も死を望んでいましたので、警察に殺人罪、傷害罪で訴える気はございませんが、その際に父の枕元にあったテレビのリモコンを踏んだので壊れましたのでそれの弁償代だけは払って頂きたいのです。
もし、善意であれ、悪意であれ、我が宅に入って父を踏んだ事はどうも咎めませんが、せめて、リモコンの代金だけを払ってくださるようお願いします。

まあ、実際は悪戯なのか分からないが、とりあえず覚えはないが、夢遊病である以上その可能性はないこともないので、リモコンの弁償はした。

しかし、私もよく分からない夢遊病がこんな事になるとは。
ある時、妻がいなくなり探しているときに宅配便で荷物が届いた。
その荷物の中には私の妻の首が入っていた。妻の首は丁寧に箱詰めされて私の元に送られてきたのだった。
私はひどく驚いた。夢であることを望んだ。しかし、現実だった。
どんなことをしようとも。
しかし、それ以上に現実だったのはどうやら自分がしたらしいということだ。妻を殺して、丁重に首を自分に宅配便を送ったのが。それは箱の中に入っていた丁寧に書かれた手紙に書かれていた。

拝啓　自分様
寝ている最中のことは意識がないのですが、無意識中でも手紙を書くことはできましたので、この事態を書き残しておきます。
自分は寝ている妻の上を何回も往復したために踏み殺してしまいました。私は無意識ながらこのことを自分に知らせようと思って筆をとっています。小学生の時にも宿題を朝起きると書いてあったことがあるように今もまたそのように内容を書いています。
とりあえず、気づかないように体は野良犬に与え、自分もいくつかを口にして、後は焼いてゴミ袋に入れ生ゴミに捨て、ある程度は庭の生ゴミ処理機に入れて処理しておきました。
しかし、長年付き添ってきた妻。無惨に私に無意識に殺され、そのまま人知れず処理するのはかわいそうだと首だけは意識のある自分に判断を任せることにします。

私は牢屋の中にいました。警察に自首しました。しかし、私の夢遊病は牢屋を意図も簡単に抜け。何度、警察の人に迷惑を掛け、しょうがないと精神科に入院しても頑丈にくくりつけられたベットの上でも私はどこかに行ってしまう。
私はきっと夢遊病ではないと思い始めた。私は無意識でも行動できる人間なのだと。
だから、それが答えでも、私には何の解答にもなっていない。
私が夢遊病だろうとも、何であろうとも、私には人を殺しの記憶がなく、人を殺した経験は体にはある。私はいかなる罪を償えばよいのだ。
何をすればよいのだ。神よ、仏よ、キリストよ、悪魔でも良い、私はどうすればよいのだ。

私はいま国外にいる。夢遊病のせいだ。
もはや、私は死にたい。しかし、死のうとして無意識になると、私は何処かで目が覚める。
ビルから飛び降りようとも。
車に轢かれようとも。
おもりをつけて海に沈もうとも。
毒だろうが。
自殺、他殺はかなわない。死の選択肢は消えた。

私はその後、人を殺したのだろうか。
そんなこと怖くて人に聞けない。

私はいったい何モノなのだ。
とりあえず、前のように無意識になった時には手紙を書くことにしている。といっても、そう思っているだけだ、無意識の自分に。そこから自分は無意識の時、何をしているか知ろうとしたが、私は文を書くのが苦手だった。
当然、無意識の時もそうだったらしい。
私は文が苦手だと分かっただけであった。

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