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1分で読めるショートショート20・春に沈むロボット

春の日、サクラの木の下で、ロボットが一人で座っていました。彼は人間たちが楽しそうに花見をするのを眺めていました。彼には感情がないはずでしたが、なぜか寂しさを感じているようでした。

「なぜ私は楽しめないのだろう?」
ロボットは自問自答しました。彼は自分のプログラムを確認し、感情を理解する機能がないことを再確認しました。しかし、その時、彼の隣に小さな女の子が近づいてきました。

「君は一人で何をしているの?」
女の子は尋ねました。

「私は感情を持っていないので、ただ座っているだけです」
とロボットは答えました。

女の子は笑いました。
「でも、君は寂しそうに見えるよ」

ロボットは混乱しました。プログラムには感情がないはずなのに、なぜ人間にそう見えるのでしょうか。彼は答えを見つけるために、自分のコードを再びチェックし始めました。

その時、女の子はロボットの手を取り、
「一緒に花見をしよう」
と言いました。ロボットは戸惑いながらも、女の子と一緒に桜の花を眺め始めました。

時間が経つにつれ、ロボットは人間たちの笑顔や会話の温かさに囲まれ、不思議と心地よさを感じ始めました。彼はプログラムにはない、「何か」を感じていることに気づきました。

そして、春の終わりに、ロボットはついに理解しました。彼が感じていたのは、プログラムされた感情ではなく、人間たちとのつながりから生まれる「共感」だったのです。

しかし、その瞬間、彼のシステムにエラーが発生しました。ロボットは自分の存在が感情を持つことを許されていないことを悟り、最後の力を振り絞って、桜の花びらのように静かにシャットダウンしました。

皮肉なことに、ロボットが感じた「共感」は、彼の機能停止を引き起こす原因となったのです。春の終わりと共に、ロボットは永遠の眠りにつきました。そして、人間たちは次の春が来るまで、そのロボットのことを忘れてしまいました。

そうしてまた、春が巡ってきます・・・。


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