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【大学生も日本の魅力を再認識できた!】世界最古のオーケストラと能の奥深さ(前編)

みなさんこんにちは、学生広報チームの金川です。
今回、僕はとある講座に参加してきました。それは、日本の伝統芸能である「能」に関する講座です。皆さんは伝統芸能に触れたことはありますか? 見たこともない・興味がないといった方も少なくないと思います。僕もほとんど知識はありませんでした。しかし、今回の講座で知らなかった魅力が見え始め、自分の国の文化を知るといった意味でもとても深い経験になりました。

そんな知れば知るほど面白い能について、講座の内容を【前編】【後編】に分けて2本の記事にしたので最後まで読んでいただけると嬉しいです。

今回の講座と100周年の関係

100周年記念プロジェクトには複数のプロジェクトがあり、その中に「文化・芸術・研究成果の発信プロジェクト」があります。同プロジェクトでは6月下旬に、武蔵野大学と関わりが深い歌人、土岐 善麿(とき ぜんまろ)が創作した能「親鸞」(しんらん)の上演が築地本願寺本堂で行われる予定です。その公演に先がけ、今回、3月16日に武蔵野キャンパスで「令和5年度武蔵野大学日本文学研究所 土岐善麿記念公開講座―親鸞聖人と極楽世界」が開催されました。この講座は年に一度、定期開催(コロナ禍では不開催)され、そのたびに土岐 善麿の新作能の上演と講演・解説を実施しています。今回僕は、6月下旬の能楽の記念公演の事前学習も含めて参加しました。

会場は、武蔵野キャンパスの雪頂講堂という武蔵野大学で大きなイベントを開催する際に使われる会場で行われ、武蔵野大学の職員や卒業生の方、一般の古典芸能ファンの方も多くみられました。卒業生の方は講座後に同窓会の開催も予定されていたため、開演前から能に関する話や再会を懐かしむ声などで会場がにぎわっており、本講座を楽しみにしているのが伝わってきました。

当日のプログラム

今回の講座では第1部が能「羽衣」に関連する雅楽を中心にしたプログラム、2部が新作能「親鸞」についてのプログラムでした。何度も開催されているこの講座で能以外のジャンルの芸能を取り上げるのは今回が初ということで、実際に雅楽の演奏を聴いたり、能の見どころ・聴きどころの一部を取り出して演じる仕舞(しまい)を観ることができました。
雅楽にもフォーカスできたのは、本学文学部教授の三浦 裕子先生のご要望のおかげです。「雅楽の神々しさに包まれながら能のお話ができ、とても良い雰囲気が作れました。」と仰っていました。

そもそも土岐善麿って何者??

土岐 善麿(とき ぜんまろ 1885-1980年)は、歌人・国文学者であり、現武蔵野大学前身の武蔵野女子大学文学部の初代主任教授として教壇に立ちました。彼はまた多くの能を創作した新作能のパイオニアであり、ローマ字の普及に尽力をし、全国約280校の校歌を作詞した異能の文学者として、日本の文学や言語教育にも大きな影響を与えました。

むさしの文学館(「むさし野文学館」ホームページ「土岐善麿の世界」) より https://www.musashino-bungakukan.jp/

詳しくは「武蔵野大学むさし野文学館のホームページ」に土岐善麿のオンライン常設展示があります。よろしければ土岐善麿の数々の業績が解説されていますので、是非、訪れてみてください。

日本の古典音楽・雅楽について

講座が始まり、まずは、雅楽演奏団体・伶楽舎(れいがくしゃ)の宮丸 直子さんから雅楽についての解説がありました。

雅楽とは、日本固有の歌舞と中国・朝鮮から伝わった音楽文化が融合して生まれたものです。貴族の間で盛んに楽しまれて1200年以上の歴史を持ち、世界最古の音楽文化として重要文化財にも指定されています。
 
雅楽にも種類があり、楽器演奏のみの「管弦」、演奏と舞のある「舞楽」、演奏と歌の「歌謡」の3つがあります。音に合わせて踊ったり、歌をのせたりするのは、現代音楽とも共通する部分がありますね。
 
「管弦」は弦・管・打楽器で構成されます。これはオーケストラと同じ構成であり、このことから雅楽は世界最古のオーケストラとも呼ばれます。基本は16人で演奏されますが、3人でも演奏できます。

この「管弦」に合わせて舞が行われるのが「舞楽」で、これにも種類があります。中国や朝鮮から伝わった「外来系楽舞」、日本古来の祭祀にかかわる歌と舞の「国風歌舞」(くにぶりのうたまい)があります。
外来系楽舞の有名なものとして「越天楽」(えてんらく)という曲があります。この曲は小中学校の教科書にも取り上げられており、知っている人も多いかもしれません。国風歌舞は「羽衣」という演目が有名です。

こういった説明を聞いた後、「越天楽」の演奏を聴き、能「羽衣」の仕舞を観ることができました。簡単に概要と感想を記したいと思います。

「越天楽」の神々しさ

越天楽の実演では、笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、竜笛(りゅうてき)という楽器の演奏を聞きました。

笙(しょう)

笙は管楽器で、匏(ほう)と呼ばれる部分に17本の細い竹菅を配置しており、縦に長い見た目をしています。竹管の根元に穴が開いており、指で閉じたりして音を調節します。鳳凰の鳴き声を模して創られたとも言われるように、雅楽の楽器は動物に例えられることが多いそうです。
音色はとても不思議な感覚で、ハーモニカのような鋭い高音と、その後ろから暖かみを感じるやわらかい低音が聞こえました。現代風に言えばサイケデリックであり、幻想的な高音と低音が美しく調和した、個人的にはとても好きな音色でした。

大篳篥(おおひちりき)と篳篥(ひちりき)

篳篥は竹で作られた管楽器で、小さい縦笛のダブルリード楽器です。リコーダーのような見た目をしていますが、難しく、高い技術が求められます。リードの部分がとても大きく、見た目とは裏腹に強烈な音を出します。その吹奏によって人が死を免れたり、泥棒を改心させたなどの逸話もあるそうです。
音は確かにかなり大きかったです。しかし不快感のない、むしろ壮大で何かの始まりを告げるような偉大さを感じさせる音色でした。

竜笛(りゅうてき)

竜笛は長さ40cmほどの横笛の管楽器です。音色が竜の鳴き声に似ていたことから名づけられたそうです。
音色は自分の想像とは異なり、細く美しい音でした。演奏者の方の息づかいによって音の強弱が変わる、非常に繊細な楽器でした。竜の鳴き声と聞いていたので、篳篥のような野太い音だと想像していましたが、昔の人々との竜のイメージの差を感じ、興味深かったです。

「越天楽」の演奏

これらの楽器で越天楽の一部を演奏していただきました。3つとも管楽器でありはじめは曲が成立するか、正直不安でしたが、そんな不安は篳篥の力強い音ですぐに払拭されます。それぞれの音色に個性があり、けれどもお互いが邪魔し合わない、調和のとれた美しい音色の重なりでした。篳篥が主旋律をとり、竜笛の繊細で透き通る音が篳篥をカバーし、笙の安定した幻想的な音が全体を受け止めていました。現代音楽とはまた異なる、アンビエントな独特のゆったりとしたリズムや音の入りで、ずっと聞いていたかったです。
音色とはまた別に、演奏者の方々の所作の一つ一つも美しかったです。座る・立つ動作や楽器を持つ動作、歩く動作にまで気を使っていることが分かりました。聴覚だけでなく視覚的にも楽しめる、昔の貴族の華麗な楽しみ方を感じました。


【前編】はここまでの紹介になります。【後編】の記事では、講座後半部分のプログラムの「能」について説明します。

経営学科2年 金川 心

【学生広報チームについて】
学生広報チームは2023年9月に活動を開始しました。創立100周年事業プロジェクトの取材を行い、武蔵野大学だけでなく、学校法人武蔵野大学の中学校や高等学校の生徒や地域の方々にも武蔵野大学や100周年事業の魅力を発信できるように今後も活動していきます。

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