学食

今年の桜が散り始めたころ、某大学の学食に行く機会があった。
メニューが豊富&良心的なプライスに2定食選びそうになったものの自制し、でも浮かれ気分はそのままに、いつもは選択肢に入らないオムハヤシライスをチョイス!

そう、実は私はハヤシライスがあまり得意ではなかった。幼少期から肉という大きなカテゴリーが苦手であるし、わさびも辛子もその他も…と本当は好き嫌いが多いのかもしれない。細かい人間に思われないようイメージ的に隠し続けていた。
しかし、その日は桜も奇麗で、大学の門をくぐり懐かしくていい気分だった為、フィーリングでオムハヤシにした!

洋食コーナーに行き、気づいたら列の先頭だった為、後ろに並んでいる男子学生の一挙手一投足をチラ見し、「なるほど!食券を出したら、その間に湯呑とはしを用意するのか」などと基本動作を学ばせてもらった。
出てきたオムハヤシのオム部分の卵は洋食屋にあるトロトロのものだった!
期待は一秒ごとに高まり続け、早くお茶をもらって席に着こうと急いだ。

お茶を入れて、トレーを持ったまま振り返ると、
同じくトレーを持った女の子(メガネをかけたあのちゃん似)が私のトレーを見て「えーっ!!!」って顔をした。
私は「ナンダナンダ??」と思いながら立ち止まった。
そして、あのちゃんと私はお互い向かい合ったまま、お互い自分と相手のトレーを二、三度見比べたのである。

あのちゃんも同じオムハヤシの子だったが、彼女のトレーには味噌汁がのっていなかった…

あのちゃんは、眉を八の字にして、少し困り顔で首を小さく振り「…でも、私はいいんです」という表情。
私は逆に眉をソの字にして、上半身をシャキッとして「…いや、もらっておいで!」
それに対するあのちゃんは少し考えた後、「私…やっぱりもらってきます!
」といった具合に、洋食コーナーに戻って行ったのであった。
私は、食堂の方に声をかける彼女の後姿を眺め、めでたしめでたしと席に向かった。

座る間際、遠くからあのちゃんがこちらに向かってニコッとしてくれた。
おそらくわざわざ私を探してくれたのだろう。
その心が嬉しかった。言葉を交わさず、共に心が通ったような瞬間。
私も迷わずニコッを返した。

その後、口にしたオムハヤシはとんでもなく美味しかった。
もはやハヤシライスがどうのこうのの見解は忘れてしまっていた。
また、件の味噌汁もワカメともやしの白だしで美味しく、身も心もあったまったのだった。

これが青山の一杯の味噌汁である。
※一杯の掛け蕎麦風


その日は写真撮っていなかったので、春らしいものをこしらえました。

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