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映画「マニトウ」レビュー「マモーのオリジナル」

インチキ占い師のハリー(トニー・カーティス!)の
元カノのカレン(スーザン・ストラスバーグ)の背中に奇妙な腫瘍が出来,
日に日に大きくなって行く。
外科手術によって取り除こうと試みるが
執刀医が突然自分の手首を切り手術は中断。

何だか…手塚治虫先生の「ブラック・ジャック」のピノコみたいな話…。

ハリーは腫瘍にカレンとは別の何らかの「意思」を感じ,
知り合いの祈祷師に頼んで降霊会を開いた所,
テーブルを水面に見立てて(「地獄の黙示録」のカーツの様に)
黒い男の頭がせりあがって来て自らをミスカマカスと名乗る。
ミスカマカスとは700年前のインディアンの大呪術師で
彼は転生を繰り返しながら700年間生き続けて来たのだ。
彼の新たな憑代(よりしろ)として選ばれたのがカレンの背中だったのだ。「恐怖の出産」を阻止すべくハリーはインディアンの霊媒師
シンギングロック(マイケル・アンサラ)の助力を取り付けるが…。

マニトウとは精霊の様な物ですね。
ミスカマカスは自然の力を自在に使いこなし地震を起こし,
病院を氷漬けにして病室を宇宙空間と直結し
果てはThe Great One(クトゥルー神話の旧支配者)を召喚するなど
やりたい放題であるが「700年前の呪術師」と言う事は
機械文明に明るくなく機械のマニトウやコンピュータのマニトウは
使役出来ない筈とハリーは考えてシンギングロックの助けを借りて
カレンにコンピュータのマニトウを降霊させて
ミスカマカスに対抗するのだが…。
口の悪い映画ファンに言わせると「失笑した」だの
「エクソシストが突然スターウォーズになった」だのもう散々な評価。
宇宙空間と直結した病室でカレンが手からレーザー光線を出して
ミスカマカスを攻撃する場面を揶揄してるのであろうが
1978年4月15日に本邦で公開された本作と
1978年12月16日に公開された映画「ルパン三世 ルパンvs複製人間」とを
比較すると転生を繰り返しながら700年生きるミスカマカスと
クローンを繰り返しながら生き続けるマモー,
マモーがルパンの宿泊する宿屋の一室を宇宙空間に変える描写等々,
本作の影響を感じさせるのである。

「マモーのオリジナル」は巨大な脳味噌ではなく
ミスカマカスなのではないかと僕は思ってる。
ミスカマカスをコピーした上で「機械文明に明るくない」という
ミスカマカスの弱点を克服したのがマモーなのだ。
本作も「複製人間」も「面白ければ何でも取り込む貪欲な所」が
酷似していて,僕はそういう生命力に満ちた作品は嫌いじゃない。
枝葉末節に囚われて映画を評価出来ない人達を僕は気の毒に思う。

本作に於けるシンギングロックの造形が素晴らしい。
ハリーの助力嘆願に「白人は助けない」「金なんか要らん」と
一度突っぱねておきながら諦めて帰ろうとするハリーを呼び止めて
「インディアンの子供達の教育基金に10万ドル寄付して欲しい」
と言い自分には「タバコを少し」でいいと言う。
先刻からこのシンギングロック,本音でしか物を言ってないのである。
彼は「少しのタバコ」と「インディアンの子供達の未来」の為に
命を張る男なのだ。
ハリーがシンギングロックを信頼するのを
言葉に頼らず表現してる名場面だと思う。
この場面を「シンギングロックが勿体付けて報酬を釣り上げた」としか
見られない貧困な精神の持ち主を本当に気の毒に思う。

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