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はぎやまさかげさんの「僕の心のヤバイやつ」2次創作同人誌「BIG WAVE」レビュー「2次創作の限界」

「BIG WAVE」は桜井のりお先生の漫画「僕の心のヤバイやつ(通称僕ヤバ)」
の2次創作同人誌で,はぎやまさかげさんは
これまでも原作漫画の流れに沿った
「僕ヤバ」パロディ同人誌を描かれて来た経緯があるが,
この「BIG WAVE」執筆中に原作漫画で「困ったこと」が生じた。

「僕ヤバ」のヒロイン山田杏奈と友人の関根萌子が
激しい口論をして仲違いしてしまったのだ。

「僕ヤバ」は主人公の市川京太郎とヒロインの山田杏奈が紆余曲折あって
市川が山田の御両親にも許可を取って親公認で正式に交際を始めている。
言わば山田は「メインヒロイン」なのだが,
関根はもともと山田の友人で
関根は市川と学力が近く話が合い,
また関根は市川と山田の恋愛関係を知っていて
何かと助け舟を出す存在でもあって
関根は市川とも友人となり
ふたりの「共通の友人」となって行く。

二次創作作家としては市川と山田が肉体交渉に及ぶ創作行為をするのは勿論両者の間に関根を交えた3者による肉体交渉を描こうと妄想を膨らまし,
折しも原作では市川,山田,関根を含めた山田の友人達が受験勉強の為に
夏合宿に臨む展開であり2次創作漫画「BIG WAVE」も
そうした原作の展開を踏まえて執筆中だったのが
夏合宿中にかねてから本心を決して明かそうとせず
綺麗事しか言わない山田に対する関根の不満が爆発し
激しい口論に至り山田は「帰る」と飛び出してしまう…。

「BIG WAVE」は夏合宿中に市川,山田,関根,吉田芹那の4者が
肉体交渉に至る漫画であり,
山田と関根の不和は二次創作の危機的状況なのだ。
何故なら原作漫画で山田と関根の間に不和が生じているのに
本二次創作同人誌では山田と関根の間に不和が生じていないなら
一次創作と二次創作との間に「齟齬(食い違い)」が生じていると見做され
「原作の読み込みが足りない」と非難される事態を招き
二次創作同人誌の売り上げに直結する由々しき問題だからである。

はぎやまさかげさんは「困った」と表現され
原作漫画で山田と関根との間に生じた
「不和」が解消される事を「祈る」しかなくなる。

二次創作は一次創作の「影」であり,
一次創作の「行間」を読んで妄想を逞しくして描く都合上,
一次創作で描かれていない事は決して描くことが出来ない。

コレが「二次創作の限界」なのだ。
創作行為に「限界」などないのが建前ではあるが
二次創作行為には「限界」が厳然として存在する。
二次創作には一次創作への「敬意」が基本にあり
一次創作の創作意図に反する事は描く事が出来ないという
一次創作にはない「致命的な急所」が存在するのだ。

今回の場合,原作漫画で山田と関根の不和が解消され,
二次創作同人誌「BIG WAVE」は
「一次創作に描かれていない事を描いた」
との謗りを受ける危機的状況は去った。

しかし…二次創作が宿命的に抱える
「立場の弱さ」が改めて露呈される形となったのである。

「二次創作は一次創作と関係ない」と
強弁される同人作家もおられるが「関係ない」訳ないでしょう。
アナタは御自分が「本体」が既に死んでるのに作動するスタンド能力
「ノトーリアスB.I.G」だとでも主張されるおつもりですか?
「本体=1次創作」が存在しないのに
「影=2次創作」だけ存在するなど滑稽である。

2024/5/3追記:はぎやまさかげさんからコメントを頂戴したしました!

「ほんと連載時にケンカ始めて
みんな仲良くして…って思いながら大乱交描いてました」

これこそが
二次創作特有の「悩み」に苦心される
はぎやまさんの肉声なのです。

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