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ヨーロッパへの22時間の長い旅路のこと

成田空港に向かう電車に乗ってからそろそろ24時間が経つ。それでもまだ飛行機の中なのだから、やはりヨーロッパは遠い。その間、細切れな睡眠はとっているが、それ以外は文章を書き、読書をしている。映画は、気圧用の耳栓をしたらほとんど聞こえなくなってしまったのであまり見なかった。

最近の生活はこれまでに記事にしているが、書いたり読んだりする時間がほとんど取れていなかった。同居人がいることもあり、たとえ時間があっても書けないという重圧も感じていた。書きたいし書かねばならないのに、書けない。その不自由さはここ数年感じた中で最も大きく、私はついに書けなくなってしまったのかと落ち込んだ。

ところが、成田に向かう空港から、もう5本もnote用の文章を書いている。あれほど書けなかったのはなんだったのだろうと思うほど、するすると指が動いた。不思議だが、よくあることだ。ほっとするとともに、仕事や勉強から離れてひとりで没頭できる時間が必要だと再確認する。そんなこんなで、快適なばかりじゃない移動も、それなりに好きだ。

自宅に残してきた彼はなにをしているだろう。同棲を開始してからはじめて数日間家を空けることになるが、彼は彼で楽しんでくれるといい。一緒に住むと刺激がなくなるとはよく言うけれど、私がこうしてひとり旅に出るのが、ある意味での慣れを作らないスパイスになるのもいいかなと思う。彼のことは信頼している。

それよりもずっと心配なのは、ポルトガルでの観光だ。これはいつものことだが、あまりにも無計画で来てしまったのでうまく回れる自信は全くない。レストランでの夕食は予約していくといいなんていう情報すら乗り換えのドバイで見た。限られたWifiではあまり調べられず、ノリで決めたホテルの立地が最高であるということだけは今さら理解した。

ドバイからリスボンに向かう飛行機は乗客のほとんどが白人で、アジア人を見るとなんとなくほっとするほどだ。日本人が私の他に乗っているのかもよくわからない。この感じは、とても久しぶり。しばらくアジアばかりを巡っていたし、ニュージーランドにもアジア人は多かったので、忘れていた。ヨーロッパでは圧倒的にマイノリティで、そして、以前来た時にはあんまり優しくされなかったこと。初めてのその経験は結構ショックで、悔しくもあったけど、「こういうことか」とも思ったこと。

私は旅行を乗り切るくらいの英語を使えるけど、マイノリティである心細さというのは、もはやそういう次元のものではない。直感的な仲間意識が働く相手というのがいて、それがきっと姿かたちが似ているからなのかもしれないけれど、自分が異質になる環境では、なんとかなるだろうという気持ちを持つのが極端に難しくなる。

この感覚が強すぎると、それこそ不寛容や差別に繋がるからよくない。だけど、そもそも文化を共有しない人の中で、私を理解して!というのもムリな話なので、危険が及ばないように慎重に行動するしかない。

そういえばドバイの空港で、後から入ってきた黒人の女性に当然のように抜かされた。私が小柄なアジア人だから舐められているのかとも思ったが、すらりと背の高い別の黒人女性も抜かされていて、並んでくださいよ、と何度か声をかけてくれたこれまた黒人の清掃員さんも完全に無視されていた。

清掃員さんと前に並んでいた人が、なにこの人?という感じでおおげさに顔を見合わせていたので、その時私は、ああよかった、列に並ぶのは当然だし無視もしないのが共通認識だよねと思ったのだった。清掃員さんの、なにこいつ?という顔が印象的だった。

前回ヨーロッパに来たのが最初で、もう4年以上前のことだ。その間にはコロナがあったり、社会人になったり、社会にも私にもいろいろあった。そして行きたい国は募れど、日本からは時間もお金もかかりすぎる。それでも、コロナ禍を経て、行きたいところにはなんとしても行かないと後悔することを知ったので、今はひたすらに旅に投資している。

そんなこんなで、昨年はアジア、今年はヨーロッパまで足を伸ばそうと思った。「行きたいな〜」と言っていても誰かが飛ばしてくれるわけではないので、ひとり旅の覚悟を決めて弾丸でポルトガルのチケットを取った。

ちなみに私はこの24時間のうち、5食目の食事をとり終わったところだ。空港でのうどんと、機内食×4回。どう考えても食べ過ぎである。どこのどいつが主食の他についてるパンやスナックを食べ切れるのか、と思いながら、個別に梱包されているそれらは持って帰ることに決める。きっと旅行中に上手いタイミングで食料にありつけないときがきっと来るから、ちょうどいいと思う。

さて、あと2時間ほどで目的の地、リスボンだ。自分なりに景色を楽しみ、寛ぐ時間にできたらいいなと思う。もともと明確な目的地があったわけではないのだから、無理せず楽しもう。では、ポルトガルの旅についてはまた今度。

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