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27歳独身。虫とりあみを買った日

なんてことない日記。でも虫が苦手な人はUターンしてください。

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風呂場で湯船からあがっていざ髪を洗おうとしたら、背後の天井に何かいた。最初は影のようで、ピントがあったら赤ちゃんの手のひらくらいのクモだった。ひいっと一度息を呑み、そしてリビングにいるはずの彼の名前を叫んだ。虫は苦手な方ではないけど、いくらなんでもデカすぎる。

すっぽんぽんだがパートナーを呼び、デカすぎて潰すこともできずにあーだこうだ言っていたらクモは浴室暖房の裏に消えていった。あれ、見えなくなった。え、どうしよ、髪洗ってないんだけど。ということで、大丈夫だよ〜とかドア越しに励まされながらシャワー再開。顔は目にもとまらぬ速さで洗い流した。

少し経っても、出てこない。え、そこに通り道があるんすか。もしくはその排気口が家っすか。あんな大きなクモが通れるなら、他の虫も通り放題のトンネルがあるんじゃないのか。春になるということは、この野生味溢れる家に招かれざるお友達がたくさん発生するということかもしれない。今から震えている。

ひとりが好きな私は、平気で恋人を置いてひとり旅に出る。それにひとり暮らしが大好きで、同棲前には一丁前にマリッジブルーならぬ同棲ブルーになった。病気のときの孤独は心細いけれど、でもなんとかなるし、自由だし、それが染み付いているんだと思っていた。

でも、虫にびびって彼を呼んだとき、ああ、人間がいるのはなんて心強いんだろうと細胞が叫んでいた。男性だから虫を殺せるなんて思っていないけど、そのときはいつも以上に頼もしく見えた。(ちなみに、実家では父がいちばん虫に弱いので、勇ましく女性陣が殺している。祖母などは素足でGを踏んでいた。)

古い家というのは不思議なもので、ありとあらゆるところに不思議な空気の通り道がある。あるいは壁についているはずの電気のスイッチがない。今まで住んでいた人たちが細かく手を入れてきたとはいえ、築50年は私の予想を上回ってくる。

パートナーと相談して、ダイソーで虫取り網を買った。そのあとクモは2回私の前に現れ、ぎゃあぎゃあしているうちにどこかに消えた。これではいけないし、リビングに進出される前に食い止めようと思ったのだ。

人生ではじめて虫取りあみを買った。なんなら手に持った記憶もなく、初めてなのかもしれない。東京で虫が苦手な父と都会っ子の母に育てられ、虫取りなどしたことがなかったのだ。まあ、もともと興味がなかったというのもあるけど、私のシミュレーションのすべてはどうぶつの森で培ったそれだった。

日曜日のよる、虫取りあみを買った日にまた現れた。今の私たちにはとっておきのひみつ道具がある!と言わんばかりに勇んで網を持つ。想像以上にすばしっこいクモに悪戦苦闘しながら、やっと家の外に出すと、うちに数日ぶりの平穏が戻ってきた。

さて、虫取りあみと網戸の虫除けスプレーをかったので、これで夏に備えようか。

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