神様が、これを経験しているとしたら

どうしてか生まれてきて、楽しい事や苦しい事があって、様々なことがあったようで、今になればみんな霧のように消えてしまったようだ。記憶になってしまって、それは今も取り出せるけど、記憶は記憶だ。

重苦しいことを書きたいわけじゃないけど、君にとってこれはひとつの真実で、この世に生まれてきて体験したことの数々だ。もちろん、これがすべてじゃないけど、ぼくの正直な気持ちであることは確かだ。

陽だまりで眠るような思い出や経験だって、もちろんあるよ。草むらに寝転がって、青空を見上げればいつだってそう。なんだってよくなるんだ。夜中に眠れなくて、夜空に輝く星や時折流れているであろう流星なんか思い浮かべれば、素敵な気持ちにもなるし、美しいってことにもなるよ。それはそれは素晴らしい気持ちさ。

おかしいな、最初に書こうと思ったことはいつも書けないんだ。書き始めれば、もう書こうと思っていたことは風みたいに過ぎ去ってしまうんだ。さっきまでそこにいたのに、逃げてしまった猫みたいに。君が振り向く前に逃げた猫なんだ。わかるだろう?

ぼくは、何をするにも人にはない重力を感じてきたよ。なんだか、ぼくがやることに対して引力が強くて、何事にも抵抗が強く感じるんだ。だから、なんだか人よりも疲れる気がするし、ぼくには体力がないんじゃないかなんて思っていた。徹夜だってできるもんじゃないし、からだは強くないんだって思った。人ごみにいけば、すごく気を使うし、すごく消耗する。東京で生活してるんだ。誰が悪いってわけじゃないんだけど、ぼくは心身ともに疲弊するんだろうね。仕事をしたり、地域の活動や勉強、趣味に遊びに、どれをやってもしっくり来ていない気がしてたよ。不思議だね、どこにいっても、なにをしても、どこにいても自分じゃないような気がしてたんだよ。こういうことって誰にもあることなのかな。今は、誰もが生き苦しさを抱えてるって言うよね、だからどうということでもないけど、不思議なことだよね。だって、そうじゃない人もいるんだ。

でも、ある時、思ったんだ。
これを神様が経験してるとしたら、どうなんだって。
ぼく自身の人生を、神様が面白半分で体験してるんだよ。ぼくを使って。それなら納得できる気がしたんだ。神様がぼくを体験版のゲームみたいに、ちょっとやってみてるんだよ。覗き見してるっていうかさ、ぼくを使って、人生っていうのを味見してみてるんじゃないかな。そしたら全力投球で生きていて、精一杯努力して、何か目標に向かって邁進していて、成果を出していて、社会的にも華々しく活躍している?みたいな人を体験してみればいいじゃないかってのも思うけど、まあ神様だから、そういった人の体験もみているかもね。だから、ぼくは神様にとってのぼくパターンなんだ。そしたら、ぜんぶ納得できるよね。ぼくはぼく自身について、なんのコントロール権はないんだ。はじめから、ぼくはぼくのステータスを選ぶことはできないんだ。だから、なんとなくすぐ疲れるし、嫌なこともたくさんあるし、得意なことでうまくいって進んでいくということがないのも、まあそういうことなのかもしれないって思う。そしたら少し気が楽になったよ。ぼくの責任なんてないんだなって。ぼくの責任じゃないんだって。だから、ぼくは必要以上にからだを鍛えたり、心を変える努力なんてしなくていいんだね。そしたら、急にやることがなくなった気がして、ぽっかりと目の前に空間ができたみたいだった。

神様がこれを経験しているとしたら。
ぼくには、もうやることなんてなくなってしまったんだ。

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