宝探しに出かけよう

ほら、きみにとっての宝物を探そう。なに、出かけるのが億劫だって? 生来の面倒くさがりが顔を出したな、けれど、全然そんなの構わない。だって外に飛び出さなくても宝探しはできるから。いや厳密には宝探しをするんじゃない。宝はもう見つかってるんだ。ぼくたちには見えないけどね。ほんとうは、そもそもはってやつ、はじめからってこと、僕たちそのものが、宝だったんだ。だから、宝探しに出かけるっていうのは、宝が宝を探しに行くようなもので、それはコメディーの世界だよ。おめでとう、晴れて宝は見つかったわけだ。見つかったというか、帰ってきたわけだ。ぼくたちはぼくたち自身の宝というやつに。だから、本来、ぼくたちには何もいらない。何かをする必要はないってわけ。だって、宝なんだから、宝でいるだけでいいの。宝でいればいいのさ。つまり、そのままでいい。きみにはそのままがわからないだって?やることがほしいって言うのかい。やることが必要になったら、何かあるのかい。やることが生まれる、そうか、やることをきみは必要としているんだね。それなら、きみにはやることが山のようにもたらされるだろうよ。なんてったって、きみは宝だからね。宝の望みは叶えなきゃ。やることは唸るように出てくるはずさ、楽しみにね。ぼくはって?ぼくは何にもいらないよ。やることも何もね。それでいいのかって? それでいいのさ、ぼくはあるがままでいるよ。あるがままでいることを選んだんだ。だから、寝転がったり動画を見たり、つまらなくなったらやめたり、散歩に出たりするんだよ。気ままにしてるのさ。やることがなかったら、何をするのかって? きみは一体誰かにせっつかれているのかい。きみの背中をつついているのはきみ自身だよ。知っているかもしれないけどね。やることがなければ、何もしなければいいのさ。考えてもご覧よ、なにもしなくていいんだ。やることなんてなにもない。やるべきことはひとつもない。何もしなくていい。ただ、なにもしなくていい。それだけで十分に満たされないかい? それだけで十分に満たされる気持ちを感じないかい。きみはそのままでいるだけでいいんだよ。きみが見ているのは夢幻さ。光の移ろいなんだよ。移りゆく光の夢の中にいるんだ。さあ、こっちへおいで。ただ、その場所で目を覚ますんだ。宝探しに出かけよう。ぼくときみで、宝を探すんだよ。はじめにぼくはなんて言った? 宝はどこにあるって? さあ、今すぐ見つけるんだ。本当の宝を、本物の宝をだよ。宝物は、ずっときみを待っているんだ。

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