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クリエイターは死ぬまでにすべてを出し尽くせない

48歳の現在地

40代を目前にゲーム制作を始めた僕ですが、4月で48歳になり、ついにゲーム制作も9年目に入りました。

 39歳までずっと建築系の仕事に従事してきたので、私にとってゲーム開発は未知の領域でした。これまでリリースしたゲームは全てプログラマーさんに外注してきましたのですが、その理由は、この歳から製作を始めて、頭の中にあるアイデアをすべて世に出すのは不可能だと思ったからです。

 当時すでに、作りたいゲームの企画のストックが10本くらいあったので、1本製作するのに2年も3年もかけていたら、順調に行っても全部リリースする頃にはとっくに還暦を過ぎてしまうという計算でした。
そこで、自分はプランナーに専念して、プログラミングは全部外注しようという考えに至り、これまでの制作はすべて外注で行ってきたのです。
お金をかけてでも誰かにプログラミングをお願いして、制作のペースを上げて開発する道を選んだのでした。

そのおかげで、1年に1本のペースでリリースして来れましたし、作りたかった企画の半分は実現できました。もちろんすべてがヒット作ではなかったものの、大きな赤字は出さずに、それなりの収益を上げられるまでになりました。ただし、ゲーム制作のみで家族を養うのは現時点では無理なので、夫婦で共働きをしながら、私もゲーム制作以外の仕事もしています。

開発8年目の壁

ところが最近、いまのやり方では続けられないということが、次第にわかってきました。

これまでは主にモバイル向けにゲームをリリースしてきましたが、GooglePlayやAppstoreでは、OSのアップデートなどに合わせて、アプリ自体のアップデートを行わねばならず、メンテナンスを怠ればすぐにストアから弾かれてしまいます。なので、ゲームのリリース本数が増えるほど、当然のようにメンテナンスの頻度も増えていきます。リリースが2本や3本の頃ならまだ良かったのですが、5本を超えたあたりからはちょっとしたアップデートであってもすべてに対応するのはかなりの労力となっています。
そして私の場合は、プログラマーさんの協力が必要なので、当然それなりのお金もかかります。
今まではゲームで稼いだ収益を新作につぎ込むというやり方をしていましたが、このままでは新作を作るための費用がメンテナンスに消えていく状況になるのは目に見えています。

今更ながら、ゲームを自分でメンテナンスできないことは致命的だ、ということに改めて気づかされたのです。
いや正確には、気付いていたけど目を逸らしてきた、というのが正しいかもです。

先述の通り私は建築士なのですが、建築の世界でもお施主さんに建物を引き渡しても、何かの不具合があったら直接電話がかかってきたりしていました。
例えば床鳴りがするとか、シャワーの水の出が悪いとか、トラブルの連絡もときどきありましたが、あまり苦になりませんでした。
なぜなら現場管理の経験も長かったので、大抵の不具合の原因が大体特定できるからです。

でも現場を知らず図面しか引いてこなかった建築士だと、原因が分からないので職人さんに頼るしかありません。そしてクレームが起きるたびに誰かに頼って解決していくという悪循環が続くのです。

私のゲーム制作もそれと同じです。

ゲームが出来上がるまでの流れは掴めていますが、いざ何らかのエラーが起きたり些細なバグが発見されても、プログラマーさんに頼るしかありません。そしてリリースの本数が増えるほどメンテナンスの頻度も増えていきます。
制作実績が増えるほどにプログラマーさんに依頼をする頻度も多くなる=メンテナンス経費が年々嵩んでいく、という悪循環にいつのまにか陥りつつあったのです。

それを解決するには、専属のプログラマーさんを雇って固定のチームを組むしかないのですが、毎月何十万も給料を支払うのも現実的ではありません。リリース後に収益を折半する「レベニューシェア方式」という選択肢もありますが、これも製作費を後払いにしただけで、メンテナンスにお金がかかることには変わりありません。

そうなると残された選択肢は「自分でメンテナンスをやれるようになる」しか残されていないのです。

クリエイターは死ぬまでにすべてを出し尽くせない


当初作りたかったゲームの企画は10本ほどでしたが、ゲームを作っていくうちに新たなアイデアはひらめくもので、結局作りたいゲームの企画は最初より増えています。

よくクリエイターは「これを作るまで死ねない」的なことを言いますが、創作活動を続けている間はアイデアもどんどん湧いてくるので、死ぬまでに頭の中にあったアイデアをすべて出し尽くせた、というクリエイターはおそらく存在しないと思っています。あの宮崎駿御大も「これが引退作」といつも言っている気がしますが、おそらく死ぬまで新作を構想して作り続けるでしょう。
クリエイターは頭の中にあるすべてのアイデアを出し切れないまま一生を終えるものだと私は思っています。

なので、頭の中のアイデアを死ぬまでに出し尽くす、という考えは諦めました。
それよりも、その時に自己ベストだと思えるアイデアをこれが最後の作品、という覚悟で制作していく、という考えに改めたのです。
これまでは人生のタイムリミットを意識しながら制作をしてきましたが、本当はタイムリミットなどはなく、自分のこだわりや想いをどれだけ出し尽くせるかが大切なのだと思えるようになりました。

これからもずっとゲームを作り続けたいし、自己ベストを更新できるクリエイターになりたい。
それを実現するには、持続可能な制作体制でなければならないし、プロジェクトの全体を把握できる知識を持っていないとダメなことは変わりません。

ただ、私は一流の、いわゆるつよつよプログラマーを目指したいわけではありません。誰かの業務を請けられるほどの実力はなくても、自分のゲームくらいは人の力を借りずに自分でメンテナンスできるようになりたい。ただそれだけです。

そこで目標を設けました。
それは、48歳のうちに一人でゼロからゲームを作りあげること。
H(ひとりで)G(ゲームを)T(つくる)48(歳)
名付けて「HGT48」プロジェクト。

今年から我が家の次男がゲーム系の専門学校に入学して、春からゲームの作り方を学んでいます。次男はプログラミングの知識はゼロなので、多分知識的には私とあまり変わらないはず。
なので、次男に負けないようにプログラミング学習を進めていこうと思っています。

すでに次回作のゲームの企画は固まっているので、それを作るのに必要な知識をこれから吸収していこうと思います。48歳と脳みそも固くなってきていますが、やれないことはないはず。
58歳から独学でプログラミングを学んで80代でアプリをリリースした若宮正子さんのような方もいるのだから、年齢を言い訳にせず頑張ります!
https://journal.meti.go.jp/p/27945/


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