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ゲームクリエイターへの11歩目

前回の「ゲームクリエイターへの10歩目」を書いてから、気がついたら1年経ってました。元々僕が物ぐさな性分というのもあるのですが、開発3年目から1年半ほど停滞期だったので、その時期のことをどう書こうか考えているうちにいつの間にか1年が経ってた、そんな感じです。

思い描いたように物事が上手くいかないという経験は誰にでもあると思います。むしろ人生は上手くいかないことの連続で、それを乗り切ることに時間のほとんどを割いているのかもしれません。そして、簡単には越えられない大きな課題を「壁」と呼ぶのだとすれば、僕はまさに壁にぶち当たっていました。

3年目の壁

ゲーム開発3年目の僕の前に立ちはだかっていたのは収益という名の壁でした。当時はゲーム開発の収益は毎月数千円程度しかなく、当然そんな金額では食べていけません。
もちろんゲーム制作は楽しかったですし趣味としては成り立っていたものの、やはり数千円の利益では食べていくには程遠く、仕事と胸を張って言えない状況でした。

趣味と仕事の一番の違いは、誰を満足させるかだと思います。自己満足で終わるのが趣味で、他者を満足させることが仕事だと言えます。だから他者から報酬をもらえるわけで、収益を上げられていない作業ということは結局自己満足でしかないのです。

ゲーム開発を始めた頃は、ゲームを作って食べていく!という強い意志があったのですが、いつの間にかゲーム開発で食べていけたらラッキーだなあ、くらいの願望に代わっていたのだと思います。実際、僕自身も素人が一生懸命作ったんだから多めに見てよ。くらいの気持ちでしかなく、低評価を食らっても、趣味だからと自分に言い聞かせていました。

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4作目のダイスクエストは自分でグラフィックを全部作った最初で最後のゲームでしたが、作っていて一番楽しかった作品です(つまり自己満足の塊)

自己満足をやめる

壁にぶち当たったとき、何をすれば良いのか。諸先輩のアドバイスでよく、壁を乗り越えるためにひたすら努力しろ、みたいな話を耳にすることもあるかと思います。

でも、ゲーム開発で努力するって何なのでしょう?四六時中、ゲームの企画を考えること?プログラムの勉強をして腕を上げること?

たしかにそのような努力で制作スキルは成長するかもしれません。でもそれで売り上げが劇的に変わるのか?多分それはノーです。
そんな自問自答を繰り返しているうちに、壁を越えるのに必要なことが何なのかだんだんと解り始めていました。

それはゲーム開発を趣味ではなく仕事だと意識すること。つまり自己満足をやめて、他者の満足を目指すということでした。

自己満足をやめて他者満足を目指す。それはゲーム開発においては「やって楽しいか」ではなく「楽しんでもらえるか」という思考に切り替えるということだと思います。
そこで私が下した判断は、自分は制作の第一線から一歩引いて、プログラムも音楽もグラフィックも、全部誰かにお願いすることでした。

全て外注にすることで、間違いなくクオリティは上がります。
その反面、人にお願いするので当然ですがお金がかかります。

当時、プログラマーさんに外注してはいましたが、グラフィックなどは全部自分でやってましたので、1本あたりにかける開発費は高くてもせいぜい10万円程度でした。ゲームの内容は1日あればクリアできるくらいのボリュームでしたし、グラフィックはほとんど私が描いた低クオリティのものだったので、数千ダウンロードはされても、課金してくれることなど滅多にない状態でした。つまり他者満足はほとんど得られていなかったのです。

でも自分には考えがありました。それは、お金をかければ絶対に売れるゲームを作れる、という自信。でもその根拠は自分の中にずっと前からありました。なぜなら1年以上温めていた虎の子の企画があったからです。

しかし、そのゲームはこれまでに製作したものと比にならないほどのボリュームがあって、作るとなれば間違いなく100万円以上はかかるだろうから、もし失敗すると大損失になる。(奥さんに○される)つまり背水の陣で臨む覚悟が必要でした。しかし、当時の僕にはその「覚悟」がなかったのです。

けれど、1年以上続いていた停滞を打破するには、勝負に出るしか残された道はありませんでした。そのような一大決心で臨んで誕生したのが自分史上最大のヒット作「ダークブラッド」です。

もしあの時、躊躇してチャレンジしていなかったら今もまだ趣味の延長でゲームを作っていただろうか。いや、おそらく評価が伸びないことに心が折れて、とっくに開発を辞めていただろうと思います。なのでダークブラッドは僕にとって、自分の覚悟を測る試金石のようなゲームとなりました。

では次回はその「ダークブラッド」の完成までの話を書きたいと思います。


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