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【読書】「未熟さ」の系譜:ジャニーズ、宝塚

世間を騒がすジャニー喜多川事件。ちょうど、ジャニーズ関連の本が手元にあったので読み返してみた。

ジャニーズや宝塚といった、子どもや学生が主役のコンテンツ。それらが持つ「未熟さ」に焦点を当てた本。タイトルに"系譜"とついている通り、その誕生から興隆までの歴史を辿ってくれます。

ジャニーズを例に出すと、ファンは必ずしも、歌唱力やダンスにプロレベルの質を求めているわけでもない。

むしろ、歌い手の成長過程自体がひとつのパフォーマンスとして成り立っていて、そこの可愛らしさやアマチュア性が、応援したくなる要素になり得るとのこと。

ジャニーズがアマチュア性という性格を備えるようになったのは、ジャニー喜多川がアマチュアにはプロの芸能人にはない良さがあると信じていたからである(中略)。彼は、タレントの発掘に際してもこの信念を貫き、素朴な感性をもち、ひたむきに夢を追いかけるような少年を抜擢の基準とした。したがって、高度なダンス・テクニックがあったり、歌唱力が抜群であったりしても、選抜されるとは限らない。そうした能力とは別の魅力が重視されたのであり、ジャニーは、その子どもの顔つきを見ただけで「星の王子さま」のようなアイドルとしての資質の有無を判断できたらしい。そのため、ジャニー自身も、どんなときも「子供心をくずさない気持ち」で少年たちに接していたという

「未熟さ」の系譜―宝塚からジャニーズまで―
(周東美材、新潮選書)

ジャニー喜多川氏の事件を知ってからこの引用文を読むと、なんとも言えない気持ちになります…が、こういった子ども故の未熟さというのは、特に日本人の価値観にフィットしたようです。

宝塚歌劇団も、あくまで演者は"生徒"であり"女優"ではないという建付けで、「未完成」を押し出していたようです。

日本の観客が求めているのは「未成品」であると直観した小林一三は、少女たちをあえて「生徒」と呼び、彼女らの公演は学校での学習成果の実演であることを強調していった。

「未熟さ」の系譜―宝塚からジャニーズまで―
(周東美材、新潮選書)

日本のポピュラー音楽は外来の影響を大きく受けている。ただ、それを受け入れる際、新しい音楽に拒絶反応を示す大人もいる。

ジャズやロックが日本で普及するためには、音楽通の玄人だけではなく、子どもの支持を得ることも必要だった。なので、子どもが異文化需要の緩衝装置としての役割を果たしていた、とのこと。

うーんなるほど。これは大衆受けのヒントがいろいろ詰まってそうです。参考資料が多く内容が濃いので、じっくり読むタイプの本です。

ご興味あればぜひ手に取ってみてください。


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