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山便り (7)

山小屋はテナーサックスの練習場

 このところ、サックスにどっぷりはまっている。山でサックスの練習を始めたのは一昨年の11月からだから、もう一年余り経つ。このサックスは30年前に妻からプレゼントされたものだ。プレゼントされた当初は少し吹いてみたが近所迷惑でとてもとても続けられるものではなく、パッタリふかなくなって、そのままになっていたものだ。 山小屋の整備も一段落して、さて次は何をしようと考えていた時、ふと思いついたのが、近所迷惑とはほど遠い山奥でのサックスの練習だった。折角練習するのなら、人にも聞いてもらう方が励みになると思ったが、外で吹くと音が四方に散り、沢の音にも消されるので、音が散らないステージを作ろうと考え製作に掛かった。基礎の段階では、次女から「洋風の墓地か」と言われながらも、なんとか完成させた。ステージらしく派手に赤色のペンキで仕上げた。


これも次女から「お父さんはセンスがない」と酷評を受けた。でも、このステージに立ち来客の喝采を浴びる日を想像しながら練習に励んでいる。私の拙く聞くに忍びないサックスの練習を聞きに来てくれる熱心なファンができた。私が練習を始めるとすぐ近くまで寄ってきてじっと聞いてくれるヒキガエルである。多分、テナーサックスの低音が仲間を呼ぶカエルの鳴き声と似ているのではないかと思われる。あんなに熱心に聴きに来てくれたカエルも、今は冬眠中で、聞いてくれるファンがいない寂しさを感じている。早く春になって聞きにきてもらいたい。この一冬の練習成果にどんな反応を示してくれるのか楽しみである。


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