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山便り (29)

空手部同窓会

 山で空手部同窓会を開催することに決まったのは、6月16日に名古屋で開催された前回の同窓会であった。3月に空手部同級生八人のうちの一人、大阪在住の T がガンで亡くなった。追悼の会だった。前年の9月5日に来春の再会を約していたのに、半年で亡くなってしまった。大学時代毎日顔を合わせ過ごした友の他界は、ショックが大きい。会は T を偲んでの話題で終始した。終わりに次回同窓会の話になり、秋に我が山でやることになった。

 三重県、愛知県からはるばるこの山奥まで来てもらうのだから少しはきれいにして迎えようと道路補修、小屋のペンキ塗り、掃除や小屋の裏側に砕石を敷いたりした。三重県の三人は I の車で、愛知の三人は電車で西鹿島駅に降り、私の車で山まで行った。「山便り」を事前に送ってあったので、大体は理解してもらえていたが、苦労話を交え、説明を重ねた。炭に火を熾しバーベキューをし、私と I はノンアルコールのビール、他の人はビール、日本酒、焼酎を飲んで宴は盛り上がった。最後に私はテナーサックスを披露した。その後、龍潭寺に寄り宿泊場所の浜名湖レークサイドプラザで更に宴は続いた。翌日は浜名湖ガーデンパークに行き、昼食に浜名湖ウナギを食べて解散した。

 楽しい会だった。その日に友人達からメールが届いた。「一人でよくあれまでのものを作った」と賞賛のことばが並んでいた。私は急に力が抜けた。私がこの十年山に通いつめ、やってきたのはこの空手部の仲間に見てもらうためだったのではないか。山での遊びはこれで終わったのだという脱力感だ。しかし一方でこれまでのことが報われたという安堵感、満足感もあった。兎に角私の山への気持ちが一段落した機会になったことは確かだ。

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