見出し画像

山便り (5)

山小屋で孫二人とキャンプ

 夏休みには、毎年、長女と孫二人が姫路からやってくる。孫達は、来る早々「おじいちゃんの山へ行くか」というほど、山が気に入っている。沢で遊ぶのが楽しいようだ。沢に入り小石を取り除くと、沢蟹の大きいのや小さいのがいる。それを捕まえてポリケースに入れていく。淵に生息する小魚をタモですくいあげて、時間が経つのも忘れて遊んでいる。そんなある日、山小屋に泊まってキャンプファイヤーをやろうということになった。山小屋には電気は来ていない。夜になれば真っ暗だ。長女と妻は「暗くなれば必ず帰りたいと言い出すに決まっている。」「9時までには絶対帰ってくる。一万円賭けても良い。」と言う。そんな言葉をしり目に、夕飯となるバーベキューの材料と朝食のパンとジュースを買って出掛けた。山までの車中、長女と妻の言葉が脳裏をかすめる。下の四歳の孫が言い出すかもしれないと不安がよぎる。そんな心配をよそに、二人の孫は、これから始まる冒険のような時間に興奮してワイワイ騒いでいる。「キャンプファイヤーの時はドドシシを踊ろう」、「僕、カモシカを見たいんだけど、何時ごろ来るかな。」山に着くと早速三人で薪を拾い集めた。私がバーベキューの準備をしている間、孫たちは沢に入って蟹取りに夢中になっていた。夕食後、日が傾き始めた頃を見計らい、キャンプファイヤーに火を点けた。三人でうたを歌い、ドドシシを歌いながら踊った。おじいちゃんも踊れと言われ訳も解らず手足を動かす。沢の水で歯を磨き、上の孫は上段のベット、下の孫は下段のベット、私は床に寝ることにした。ランプに火を灯し、下段ベットに三人寝転がり、懐中電灯で本読みをし、「おやすみ」をすると、ひとしきりカモシカや明日起きたら何をして遊ぶかなど話して、下の孫は床に寝ている私の隣に来て眠ってしまった。上の孫は、まだ眠られず、「おじいちゃん、外でお星様を見るか。」と言い出したので、もうひとつのランプに灯をつけ、そっと二人で外に出た。外は真っ暗だが、頭上だけ、道に沿って星の輝く空が見える。

丸太を割ったテーブルの上にランプを置き、ジュースを飲みながら、「明朝何時ごろ、カモシカが来るか」とか、学校のこと、将来何になりたいかなど、取り留めのない話をしてから、ねむりについた。二人とも家に帰るとは言わなかったと安堵しながら私も眠りについた。翌朝も朝食を取り、ひとしきり遊んで満足げに家に戻った。


 以下は、上の孫がこの時のことを書いた作文である。

 くねくねの やまみちを ずっとはしり、がたごとみちで、おしりが いたいのを がまんすると、おじいちゃんの やまの こやに つきます。ぼくは、おじいちゃんと おとうとと 三にんで、はじめて こやに とまりに いきました。よるごはんは、バーベキューを しました。それから キャンプファイヤーを しました。おおきなこえで うたい、どしんどしんおどりを しました。はなびも しました。ねるまえには、さわで はを みがき、さわの みずを トイレの タンクに はこんで うんちも しました。ねるときは、ランプの あかりで ほんを よんで もらいました。でも ぼくは ねむれなかったので、おじいちゃんと そとで、おとこどうしの はなしを しました。きの あいだから みえる そらには、ほしが いっぱいで、ぼくは うちゅうの なかに いるみたい でした。
 あさおきて、ブルーベリージャムを はさんだ パンを たべました。おじいちゃんは フランクフルトを やいたけど、ぼくたちが たべないので、ひとりで 三ぼん たべました。そのあと、さわの カニや アマゴに えさを あげて、 かくれんぼや おばけあそびを して かえりました。たのしみに していた カモシカには あえません でした。うちに かえって、おかあさんに 「もー、さいこう!」 といいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?