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山便り (24)

大雨の後

 山に降った雨が下流に流れていく道筋がある。下流域の絶えず流れている川には、それなりのシャレタ名前が付いているが、降った時だけ雨水が流れる箇所や地下水の流れ道は、人に認識されることもない。人はそれを無視して道路を作るから、後で道路の決壊まで招く。水は道路を浸食し続けるから、早くその対策を施しておく必要がある。絶えず侵食されるところはセメントで固める。増水した時、道に流れぬよう高く盛る。排水路の石や枯れ枝はいつも取り除いておく。これらの実践で道路のトラブルは非常に少なくなった。

 道路対策は何とかできるが、水路の沢となると手の施しようがない。9月10日の鬼怒川堤防決壊は死者行方不明者、建物流失、浸水と悲惨な事態になった。決壊箇所が住宅地を襲ったからだ。だが、ニュースにはならない場所でも、大雨の被害は同じように起きている。大雨が降ると沢は一変する。流れてきた大きな岩が川の流れを変え、側面を削り、側面の岩も倒す。岩に付いていたコケはきれいに洗い流され、岩肌が新品になる。沢の上に張っていたクモの巣は跡形もない。岩陰に隠れていた小魚も数が少なくなっている。私の山では、簡易水洗トイレ、手洗いに上流から水を引き、水槽に一旦貯めて使っている。50 m上流に吸水管を置いてあるが、大雨が降るたびに、この吸水管が下流に流されてしまい、余水を流している池が枯れてしまう。だから大雨のたびにパイプの中にやかん2杯分の呼び水を入れる作業を繰り返している。爽やかな川の流れる音の奥に潜む轟音の脅威は自然の二面性であるが、轟音は一過性であり、川の流れる音は本質的に爽やかなのである。

池の給水管
給水管口 と ごみ除けのカゴ

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