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山便り (27)

カモシカ無残

 この写真を撮ってもう四、五年経つ。山便りに載せるのは相応しくないと考え、そのままになっていた。だが記録として残すことにした。写真の左側部分は、皮だけになった部分、右に見えるのは骨だけになった身体の部分である。
 当時、私はこの現場を見てしまってから、半月ほど怖くて山に行けなかった。人間に鉄砲で撃たれたのではないことは、現場を見た時、確認している。カモシカを襲う動物は何か。イノシシが襲う訳はないし、鷹も考えられない。考えられるのは熊しか思い当たらない。ここの地名は天竜区 熊である。地名が付くぐらいだから熊が出ても不思議はない。この頃、引佐で熊が出たという話を耳にしていたので、この辺に出ても何の不思議もない。
 会う人、会う人に天竜の奥で熊が出たという話は聞かないかと訪ねた。が、そんな話は聞かないというばかり。地元 熊で野生動物保護委員をしている方にこの写真を持って聞きに行った。現場まで一緒に見に来てくれて、この辺に熊は出ていない。口蹄疫か何かの病で死に、鳥や小動物に肉、内臓まで食べられたのではないかという話であった。私もホッとして、また、山通いを再開した。


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