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妖精がいた

そのむかし家の近くでは妖精が頻繁に出没した。
小さな体に長くて赤い髪、おおきな口と少しとんがった鼻。
とても人懐っこく、道ゆく人にどんどん話しかけにいく。

近所のスーパーマーケットでもよく会った。
お弁当が70%オフになると、わざわざ教えに来てくれる。

ある夏の晩、会社の帰り道で妖精と遭遇した。おおきなサングラスをかけ、おおきなピンクのバックを肩から下げている。そして、きっちりと結ばれた三つ編みをゆらしながら、きもちよさそうに浜崎あゆみを熱唱しているのだ。それが驚くほどメチャクチャにうまい。抜群の歌唱力なのだ。
私なんかは音痴なので惚れ惚れしてしまい、ずっと聞いていたかった。

ある時、ウィリアムズ症候群という難病を知った。極めてまれな病気で、日本では2万人に1人が発症するとされている。特徴的な妖精様顔貌(ようせいようがんぼう)、音楽への嗜好という記載がありハッとした。もちろん断定はできないけれど、妖精はそうなのかもしれないなと思った。

元気にしているのかな。またどこかで会いたいな。

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