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彼の人の居場所

彼の人を見て思う、彼の人の居場所を。

人にはそれぞれ似合う場所があるように思う。その人がその場所を望むか望まぬかは置いといたとして。

学生時代の同級生に変な男がいた。図体は大きく、なんというかプロレスラーのそれのようだった。顔は妙に整っているが、変態感は隠しきれなかった。彼の生み出すものは狂気を孕んでいて、底知れぬ才能を感じていた。

ある日、八王子駅前の歩道橋でバッタリと出くわした。彼は地べたに座り込み、なにやら文庫本を読み耽っていた。声をかけてみると太宰治の『人間失格』を読んでいた。変な男だなと思った。

それから時が経ち、彼は今、脚本家になっている。なるほど、と納得した。電車に貼られたドラマのポスターに脚本家として名を連ねていた。活躍しているみたいだ。

アイドルみたいだなと思っていた子はシンガーソングライターになったし、輝くような美貌を持った子は美の道に進んだ。なるほど、と納得した。

私の居場所はどこなのか。やっかいなことに自分のことは分からない。

占いが好きで、たまにみてもらう。それなのに、みてもらった後は「あぁ、またやってしまった……男の人が風俗に行った後もこんな気持ちなのだろうか」と、なんとも言えない後悔を毎回うっすら引きずる。占いが好きなくせに、どこか疑ってしまう。

どうせ後悔するくせに、性懲りもなく占ってもらった。

冒頭、占い師に「この3年間くらい大変でしたね。ちょうど喪が明けた頃です。」と言われた。にわかに驚いた。ちょうどこの3年近く、軽いうつ状態が続いていた。なにかしようとすると頭がパタリと閉じて、なにもできず、ソファで寝込むことが多かった。色々と支障をきたしていた。

「喪が明けた頃」に救われたのか、今回はめずらしく後悔しなかった。

喪が明けたのか。そうか、喪が明けたのか。窓を開けて外に出よう。今日は天気が良い。

さて、どこに行こうか。

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