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2022JFL移籍情報、まとめてみました。その3(奈良、三重、滋賀、高知)

毎年恒例、JFLの移籍情報まとめ企画3回目。今日は昨年の10位〜13位のチームです。

2位〜5位についてはこちらの記事をどうぞ。

6位〜9位についてはこちらの記事をどうぞ。


注:データは3/9現在のものです。随時更新予定ですが、一部未反映の場合がございます。出場試合のデータは各リーグの公式の試合結果や各種データサイト等から引用しておりますが、大学・地域リーグ等については試合結果を手計算している場合もございます。データの不備・間違いについては優しくご指摘いただけますと幸いです。

奈良クラブ(昨シーズン:10位)

一昨年は下位に低迷し、大幅に陣容が変わった奈良。巻き返しを図ったシーズンでしたが、序盤の4連敗が響きシーズンのほとんどの期間を二桁順位で過ごすことになりました。順位だけ見ると振るいませんでしたが、後半戦にかけてフリアン監督の戦術が浸透したのか調子が上向き、後半戦だけの成績では6勝3敗7分で5位の好成績。最終順位は10位でしたが、今シーズンに向けて希望が持てるシーズンになったのではないでしょうか。13引分は全チーム中最多。失点数の36はリーグ5位の成績でしたが、得点数は39に止まりました。奈良も得点力の向上で引き分けを勝ちに変える力が課題になりそうです。個人成績では浜田幸織が8得点、片岡爽が7得点。

20人近くの選手が退団した一昨年に比べると、ほとんどの主力が残留した今オフ。退団選手では、チームを長く支えたベテラン向慎一と昨シーズン守備陣を支えた飯田真輝が引退。栃木や長野、町田でもプレーした向はJFL通算220試合に出場。長野で2度の2桁得点を残しベストイレブンを受賞するなど活躍しました。奈良では背番号10を背負い、2016~19年は主力としてチームを支えました。飯田は松本で10年以上主力としてプレー。チームをJFLからJ1まで躍進させる原動力となりました。昨シーズンも29試合に出場し、まだまだ圧巻の空中戦を見せていただけに引退は非常に残念です。また、ユーティリティプレーヤーとして15試合に出場した金成純が三重に移籍しましたが、主力選手の大半は残留。好調だった昨シーズンの勢いを開幕から発揮できれば、今シーズンは上位争いに食い込めるのではないでしょうか。

また、加入選手は7人。数は少ないものの、各ポジション実績のある選手をピンポイントに獲得しました。GKではスペインリーグからアルナウを獲得。この選手については実績は未知数ではありますが、同郷監督の下出場機会を伺います。飯田の抜けたセンターバックには八戸から伊勢渉を獲得。長身と屈強な身体で空中戦に強い選手です。JFLはルーキー時代のホンダロックで経験済み。主力として活躍し、強烈な印象を残しました。

中盤では鳥取から可児壮隆を獲得。2014年に川崎へ加入後はJ1からJFLまでを渡り歩き、2018年からは鳥取で4年間主力として活躍。2018年には8アシスト、2019年には5ゴールの実績を持っています。本職はボランチですが、昨シーズンの最終戦ではトップ下で2アシストの活躍を見せたとの情報もあります。昨シーズン不動のボランチとして君臨した金子雄祐とのポジションになるのか、共存するのか起用法も楽しみな選手です。また、京都産業大からは國領雄斗が加入。奈良は生え抜き選手が極端に少なく、2020年以来となる新卒選手加入です。この選手も本職はボランチの様子。ハイレベルなポジション争いに勝利し、出場機会を得ることはできるでしょうか。

攻撃的な選手では盛岡から嫁阪翔太を獲得。元々はG大阪ユースからトップ昇格を果たした選手です。盛岡では2019年に4ゴール、2020年に3ゴールを記録しています。ここ数年は途中交代から起用されるジョーカー的な役割での出場が多かったものの、奈良ではスタメン出場を伺いたいところ。また金沢から加入したベテラン金子昌広はサイドが本職のプレーヤー。ここ2年は無得点に終わっているものの、攻撃にアクセントをつけられる選手です。そして熊本から加入した浅川隼人は2019、2020年にJ3で2桁得点の実績を持つストライカー。2019年には13ゴール7アシストとJ3で出色の活躍を見せていました。初のJFLでもポテンシャルが発揮できれば得点王争いにも間違いなく絡んで来る選手でしょう。SNSでの発信力もある選手なだけに、ピッチ内外での活躍にも期待大です。

伊勢、可児、金子昌、浅川らJFLで違いを見せられる選手が多数加入し、過去最強の陣容と言っても過言ではないでしょう。機は熟しました。フリアン政権2年目の今季は既存の戦力との融合が図れれば、JFL最高順位となる7位以上はもちろん、J3の舞台も手が届くはず。JFL8年目のシーズンは、勝負の年になりそうです。


ヴィアティン三重(昨シーズン:11位)

一昨年はJ3まであと一歩に迫る過去最高順位6位でシーズンを終えた三重。JFL5年目の昨季は4位以内を目指しましたが、シーズンを通じて中位から浮上できないまま11位で終えることになりました。序盤からなかなか波に乗れず、6月には上野展裕監督が契約解除。山本好彦監督代行が指揮をした直後の武蔵野・青森戦では連勝を飾るも、夏以降まで好調は持続できず。昇格争いにはほぼ絡むことができませんでした。得点数40、失点数43ともにまずまずのリーグ8位とまずまずですが、1-1の引き分けが9試合。この結果が昨年の三重を端的に表している気がします。個人成績では塩谷仁、酒井達磨、菅野哲也の3人が6得点。一昨年の得点王である酒井にはゴールの量産が期待されましたが、結果的に思ったほどの得点は挙げられず。

シーズンオフの動きは監督交代から始まりました。昨年終盤までFC琉球を指揮した地元三重出身の樋口靖洋氏が監督に就任。横浜Fマリノスを天皇杯優勝に導くなどJチームの監督を歴任し、遂に地元へと戻ってきました。初のJFLとなりますが、これまで培ってきた経験で地元チームをJへと導くことはできるでしょうか。

今オフは8選手が退団し、7選手が加入。退団選手は少なめですが、主力選手が目立ちます。最終ラインのレギュラーとして25試合に出場した大竹陸が退団したほか、ボランチのレギュラーとして活躍した背番号10の山藤健太が引退。アルテ高崎でプレーした選手がまた一人ユニフォームを脱ぐことになりました。また昨シーズンのチーム得点王の塩谷仁酒井達磨が揃って岡崎へ。原口拓人も引退し、得点力のある選手が補強のポイントとなりました。

一方の加入選手は中堅からベテランが中心の補強。秋田から加入した谷奥健四郎は三重県志摩市の出身。昨年8月に十字靭帯損傷の大怪我で離脱するまでは空中戦に強いセンターバックのレギュラーとして活躍していました。既に怪我から復帰し練習にも参加しているようです。移籍一年目から主将として抜擢されるなどチームの期待も大きい選手。ディフェンスラインの要となりそうです。また沖縄SVから加入した藤澤典隆も三重県育ちの選手。数少なくなったSAGAWA SHIGA FCの出身選手です。サイドが本職でドリブルでの突破に加えてクロス能力も高い選手で、J3では162試合18得点の実績の持ち主。ポリバレントな選手なのでさまざまなポジションでの起用が予想されますが、昨シーズン主に井上が起用された左サイドバックの可能性が高いのではないでしょうか。

中盤では森主麗司が2年ぶりにチームへ復帰。山藤が抜けたボランチにチームをよく知る選手が加わりました。また札幌大から加入した雨宮広夢は小柄なテクニシャン。一年目から出場機会を伺います。またアタッカーでは鈴鹿から田村翔太が、岡崎からは寺尾憲祐が加入。二人とも四日市中央高校のOBです。2人とも昨シーズンはフォワード、サイドハーフなど複数ポジションをこなしながら主力として活躍しており、樋口監督がどのように起用するかも気になるところ。今シーズンは東海地域のJFLチーム同士の移籍が活発です。奈良から加入した金成純は琉球時代に樋口監督の下でプレー経験がある選手。昨季は主に右サイドバックでの出場でしたが、三重には昨季全試合フル出場を果たした池田がいることから、サイドハーフでの起用が主になるのではないでしょうか。

そして前線には青山学院大から大竹将吾が加入。2019年の関東大学サッカーリーグ2部得点王、関東大学選抜の選出歴など輝かしい実績を持っています。昨シーズンは東京都大学リーグで16得点と得点能力は間違いありません。酒井が抜けたポジションだけに、即戦力の活躍が求められます。得点能力の優れたストライカーが、新たな三重のエースとしてチームをJへと導く活躍を見せることができるでしょうか。

レギュラー選手の移籍はあったものの、高い能力を持つ選手を確保した今シーズンの三重。既存戦力を樋口監督がどう束ねていくかも非常に楽しみなところ。三重県は同じ県内の鈴鹿にもJ3ライセンスが付与され、昨年は東海リーグのFC ISE-SHIMAがJFLまであと一歩まで近づくなど、サッカー事情は群雄割拠の様相。県内初のJリーグチームとなるのはどのチームでしょうか。


MIOびわこ滋賀(昨シーズン:12位)

大槻監督就任2シーズン目となった昨シーズンの滋賀。昨シーズンは勝てる時期と勝てない時期がはっきりと分かれました。開幕から4連敗した一方で5月から6月にかけて5戦負けなしで7位まで浮上するも、そこから上位チームとの対戦が続き5戦勝ちなし。最終順位は12位と4年ぶりの2桁順位となりました。個人成績では竹下玲王が9得点とブレイクを果たしたほか、後半戦だけで6得点の松本翔、一昨年のJFL得点王坂本一輝が5得点と続きました。

今オフの滋賀は長年チームを支えた2選手が引退を発表。2010年からチームに在籍した守護神永冨裕尚はゴールキーパーとしてはJFL歴代最多の348試合に出場。九州リーグ時代のニューウェーブ北九州からキャリアを開始し、2006年の三菱水島から足掛け16年間JFLでプレーした大レジェンド。昨シーズンも1試合を除き全試合でゴールマウスを守っていました。年齢を感じさせないダイナミックが見られなくなるのは残念です。そして地元滋賀出身の坂本一輝はJFL通算3度の2桁得点を記録した滋賀の大エース。2020年には得点王とベストイレブンを受賞、昨シーズンも5得点を残しながらも引退となりました。JFL通算61得点という記録はもちろんチーム史上最多得点。まだ31歳、まだまだこの記録を伸ばして欲しかっただけに引退は惜しいですが、セカンドキャリアでも是非活躍をして欲しいと思います。

他にも、地元野洲高校の選手権優勝メンバーである内野貴志、福岡や新潟などで活躍した岡本英也、琉球などで活躍した朴利基が引退。主に左サイドバックとして出場したいた高畠淳也が古巣FC徳島へ移籍するなど、16選手が退団しました。

一方の加入選手は15人。関西の大学出身者を中心にJリーグ、JFLからも選手を獲得しました。永冨の抜けたGKでは3選手が加入し、昨シーズンから在籍する沖野を含めた4選手で1つのポジションを争います。関東リーグのつくばFCからは木戸裕貴を、宮崎からはFC東京ユース、鹿屋体育大出身の伊東倖希を、高知からは池上尚孝を獲得。池上がJFL通算21試合出場していますが、木戸は全国リーグ初挑戦、伊藤と昨シーズンから在籍する沖野は全国リーグでの出場試合はなし。実績的には池上が一歩リードでしょうか。

DFでは昨年枚方でレギュラーとして活躍した武田航太朗が加入。センターバック、左サイドバックどちらでも起用できるだけに内野、高畠の抜けた穴を埋める活躍を期待したい。びわこ成蹊スポーツ大から加入した齋藤圭汰は右サイドバックが本職ながら、積極的な攻撃参加を得意とする選手。184cmの恵まれた体格はJFLサイドバックでは超大型と言えるでしょう。ルーキーながら背番号4を与えられるなど期待の新戦力の1人です。他にもサイドバックでは立命館大から俣野亜以己がセンターバックでは京都産業大から中西樹大が加入。MF登録ですが近畿大から加入した實好礼治もセンターバックの選手の様子。父に礼忠さんはG大阪一筋プレーした名選手。4年次はチームの不祥事と怪我が重なり試合出場は無いようですが、184cmの体格は魅力的。関西の大学でしのぎを削った選手たちが、今度は同じチームで共闘します。

中盤から攻撃的なポジションは大卒選手とJ・JFLからの加入者をバランスよくミックス。同志社大からは池平直樹が加入。昨年の関西大学サッカーリーグ1部で5得点6アシストを記録しています。ボランチが本職の選手でパス精度の高さが持ち味の様子。國領や村上ら実力者のいるポジションに挑みます。八戸から加入した高見啓太はサイドハーフの選手。2017年にはJFLで7得点、2020年には6アシストをマークするなど得点能力、クロス能力ともに有しています。久々のJFLで躍動を期待したいところ。大阪学院大の10番秋山駿は昨年の関西大学サッカーリーグ1部で7得点。JFLでも攻撃力を見せることはできるでしょうか。奈良から加入した長島グローリーは190cmの大型FW。奈良では2シーズンで出場時間わずか41分、無得点と不完全燃焼に終わっただけに今シーズンに賭ける思いは強いはず。坂本の抜けた前線で大爆発できるでしょうか。

なお、滋賀の選手については嘉茂選手のブログの方が100倍くらい詳しいのでこちらもどうぞ。去年の最終戦で甲賀で飲んだコーヒー、美味しかったなあ。


高知ユナイテッド(昨シーズン:13位)

JFLで初めてフルシーズンを戦い抜いた高知。前半戦は1試合も引き分けがなく、4連敗が2回、3連勝と2連勝が1回ずつとオセロのような星取表に。それでも夏前の段階で7勝、勝ち点21を稼ぎました。しかし一転後半戦は勝ち星を積み上げられず、わずか2勝止まり。かろうじて残留争いには本格的に巻き込まれることはなかったものの、最終的な勝点は33に留まり、順位は昨年から1つ上げて13位となりました。得点数は試合数より少ない30、一方で失点は49。特にチームの中心である横竹翔が負傷で欠場した3試合で14失点を喫したのが大きく響きました。得点数では西村光司が7得点。赤星魁麻が5得点。ルーカス、長尾、下堂が3得点で続きます。

まず、今シーズンの動きでは監督の交代がありました。2年間西村GMが監督を兼務していましたが、今シーズンからは吉本岳史氏がコーチから昇格し指揮をとります。

退団選手は15人。うち11選手が昨年リーグ戦で10試合に以上している選手。主力選手も含めて多くの選手がチームを離れることになりました。
GKは正GKの井上が残留したものの、13試合に出場した池上尚孝が退団。守備陣では全試合に出場したCBの下堂竜聖が八戸へ、主に左SBを守った平田拳一郎が青森へと揃って青森県へ移籍。ボランチながら3得点をマークしたルーカスダウベルマン、中盤や右サイドと複数ポジションで出場した青木捷も退団。攻撃陣ではJFL昇格を知る泉光輝、長尾善公が引退。吉田知樹は期限付き移籍満了に伴いいわきへと復帰と、各ポジションでの戦力確保が急務な状況になりました。

一方の入団選手は、昨年の大卒選手中心の補強から一転し期限付き移籍選手が非常に多くなりました。岡山から2人、熊本から2人、愛媛、山形、沼津から1人ずつ。

平田の抜けた左サイドバックには藤枝から稲積大介と沼津から深井祐希が加入。稲積はクロスの能力の高い選手で、1列前でもプレー可能。藤枝では2年間コンスタントに出場していました。北海道出身の深井は札幌に所属する一希の実弟。沼津では右サイドでも出場があります。こちらも沼津から加入した川前陽斗も左SBが本職の選手。実績のある選手との競争になりますが、サイドバックとしては182cmと大柄な点は大きな特徴でしょう。父はヤンマー・C大阪で活躍した川前力也氏。大谷GMとはヤンマー時代の同僚という縁もあります。センターバックでは福島から岡田亮太が加入。福島ユナイテッドで10年以上を過ごした選手が初めての移籍先として高知を選びました。ボランチからサイドバックもこなせる守備のマルチロールはチームの統率にも期待がかかります。また、FC ISE-SHIMAからは中田永一が加入。地域CLでは堅固な守備を見せたFC ISE-SHIMAでもとりわけ強さが光った選手。セットプレーから得点を決めるなど地域リーグレベルでは群を抜いていましたが、個人昇格となりました。饗庭瑞生は昨年秋田で出場機会に恵まれなかったものの、期限付き移籍先の刈谷では主力として活躍。なお、昨年までプレーした下堂中田は福岡大の同級生。さらに饗庭は1年後輩に当たります。ちなみに吉本監督も福岡大OB。もしかすると、大学繋がりでのオファーかもしれません。

中盤以降はレンタル選手が中心に。山形から加入したJFAアカデミー出身の廣岡睦樹はボランチの選手。昨シーズンは福井でコンスタントに出場機会を得られていた様子。1カテゴリ上げたJFLでも実力を発揮できるでしょうか。熊本から加入した田尻康晴もボランチの選手。岡山から加入した山田恭也はサイドアタッカー、ユヨンヒョンは中盤からサイドまでこなせる選手のようです。ソニー仙台から加入した金井冬土は主にトップ下でプレーする選手。2年目となった昨年は途中出場から結果を出し、終盤戦はスタメンを勝ち取りました。独特のドリブルは魅力的。高知でレギュラー奪取に挑みます。最後に、今シーズン唯一のFW補強となった樋口叶(かける)は熊本ユース時代10番をつけていた選手。プロ2年間で23試合に出場していますが、得点はまだ0。JFLで得点を量産し、実績を引っ提げて熊本へと帰還することはできるでしょうか。

先日Jリーグ100年構想クラブへの認定も決まった高知ユナイテッド。J3ライセンス取得に向け、成績面も少しずつ上を目指していきたいところ。レンタル選手の成長もチーム力の向上には重要になりそうです。

次回は最終回。14位から16位と昇格を果たしたクリアソン新宿について紹介します。

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