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星5♡『映画Five Nights at Freddy’s』10年かけて原作者が守ったもの

2023年に公開し興行収入的にも大成功を収めた、アメリカのインディーズゲームの映画化作品『Five Nights at Freddy's』(通称FNaF(フナフ))
実はプロジェクト開始から10年。(そして撮影期間は43日)その歳月をかけて原作者が守ったものは何か。
それを近年のホラー映画作品と比較して考えてみました。

ネタバレ回避したい方はご覧にならないで下さい。

そもそも私がFNaFを好きになった理由はファンが作ったゲームのファンメイドミュージックからでした。
海外ではゲームの音楽をリミックスするだけではなく、その世界観に合った曲をオリジナルで作ったりするファンダム文化があり、FNaFはその中でも大変人気のあるゲームジャンルです。寧ろファンミュージックで人気に火がついたとも言えるゲームです。
(そしてなんとエンドロールで一番人気とも言えるファンメイドミュージックがかかります!)
私の FNaFについての深い知識はFNaF専門youtuberのイシイニキさんの横流しでもあるのでご了承下さい。
日本FNaFオタクなら避けては通れぬイシイニキ。最推しyoutuber

2024年2月にやっと日本でも公開された映画FNaF。
どんな映画だったか簡単に説明すると、ハッピーなど真ん中B級ホラー!
近年「B級ホラー」という言葉は蔑称では無く、それを目指して制作する監督もいるある種の「褒め言葉」。
ポップコーン片手に気の合う仲間とぎゃあぎゃあと「そんな事しないよー!」「フラグ立てるなよー!」とか言いながら何度も楽しく見れるハッピー映画体験ができる、そんな見る時の状況をポジティブに想像できるホラー映画。
それはホラー映画と言うのだろうか?お化けが出て子供が襲われるんだからホラーだろう。サメが空を飛ぶのを楽しむような、ジュラシックパークの子供がラプトル(小さくて賢い恐竜)から隠れるような、なんかちょっと微笑ましくある種の安心感のある緊張感(?)が楽しめます。
アメリカで興行収入が良かったのはおそらく家族や友達と大人数で見るのが楽しいからでは。

そもそも私がホラー好きな大きな理由のひとつに、社会的に弱い立場(女性、子供、身体的な不自由さ)が何故か襲われなかったり、寧ろお化け側になって元凶の生きてる人間にやり返せるから、というのがあります。
だから「寝ている」「対話を試みている」人は襲われない。
よくある商業的なハッピー映画では描かれない家庭内の暴力やネグレクト、蔑視、に段々とクローズアップし社会の歪みを解き明かすようなストーリーがホラー映画には多いのにも真実味を感じます。リング(1998)、呪怨(2003)、来る(2018)など。
そんな現実社会では中々起こり得ない徹底的な「勧善懲悪」を後味すっきり爽快にしたのが映画FNaFの見易いところ。
高尚な映画賞は取れなくても良い、ファン(多くは10代のお子さん)に楽しんで貰えれば!テーマパークを作るような、そんな大人の優しい心が詰まっています。

ここでメタ的な視点ですが、ゲーム原作者のカーソンさんは熱心なキリスト教信者であり、「IT(2019)」のペニーワイズや「エルム街の悪夢(1984)」のフレディ、など殺人鬼が人気キャラクターになるような映画にしたくなかったのかもしれません。
映画やゲームによくある『異教徒やその神の信仰がとんでもなくグロテスクだった』という設定「ミッドサマー(2020)」「サイレントヒル(2006)」は、近年の宗教戦争と言える現実の戦争や、それにまつわる事件にある深刻な背景「知らない習慣の持ち主は恐怖の対象である」という心情を後押ししかねないですが、FNaFは意外にも正義と悪がはっきり別れている世界観なので、悪は悪を目的に悪事を働いているのも、逆に多くの人の心情に合っていたのかもしれません。

また、子供を誘拐して思い通りに操るグルーミング的要素がありますが、現実の殺人鬼ジョン・ゲイシーやジェフリー・ダーマーなどのように性的な目的ではないのもある意味安心してみれる大事な点です。
悪の魔王が悪を行うために悪いことをしている。(ハリーポッターのヴォルデモートが近いかもしれない)
そんな正義と悪がくっきり別れたキリスト教信者目線の悪魔の設定が、子供、グルーミングというセンシティブなモチーフの生理的に恐ろしい部分をうまく躱しているのだと思います。

10年掛けて、そして映画脚本にも携わり、全ての撮影日に顔を出したカーソンさんは、商業的なオチやかっこいい悪役、暴力的な見所シーンを入れさせないように試行錯誤したのでしょう。
ホラーキャラクターファンじゃないからこそ、FNaFのブランドはたくさんの属性の人に愛され、そして苦労も絶えないのだと察せられました。

原作ゲームとちょっと違う家族構成も、中々うまくやったな!と好印象。
そしてちょっとずつ残された謎解き「弟はどこに?」など、コアな大人ファンも勿論楽しめるのも、忘れてはいけない大きな魅力です。


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