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4.【動きすぎという問題】特定方向への過剰可動性という考え方

このブログは、MSI(Movement System Impairment)について、解説することを目的としています。
MSIについては、こちらをご覧ください。
MSIでは、身体の動きがきっかけで生じた痛みの原因を解明し、改善するプロセスを学ぶことができます。


はじめに

腰が痛い場合、「筋肉や関節が硬いから痛い」と言われることが一般的です。
一方、”動きすぎているから痛い”という考え方は、一般的ではありません。
しかし、痛みの原因は動きすぎから生じている場合も多いです。
今回は、動きすぎによる痛みと関係する、「特定方向への過剰可動性」についてご紹介します。

今回の記事では、以下の3点について解説していきます。

  1. 特定方向への過剰可動性とは?

  2. 動きすぎることはなぜ問題になるのか?

  3. 動きすぎに対する対応方法はあるのか?

動きすぎが問題になるという視点を持つことで、痛みに対する治療を別の角度から見ることができるようになります。

1. 特定方向への過剰可動性とは?

歩き方は人によって癖があり、遠くから見て知り合いが歩いてきたのがわかったという経験をした方は多いと思います。

富士通のAIによる歩行解析では、90%個人を特定できたというニュースもあります。

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/biz/905849

人の身体の動きはその人にとって効率良く動くため、一定のクセやパターンがあります。
歩き方のみでなく、座り方や立ち方などにもやりやすいクセ・パターンがあります。

特徴的な立ち方

「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」の主人公・東方仗助
画像はにじめんより引用

https://nijimen.net/topics/252310

これが過度に繰り返されると、関節や筋肉は特定の方向に動きやすくなってしまいます。
例えば、腰を極端に曲げて座る癖がある方が毎日8時間デスクワークをしたとします。
そうすると、その方の腰は曲がる方向に動きやすくなってしまいます。
これが身体の中で、”特定の方向に動きやすくなりすぎる”=”特定方向への過剰可動性が生じる”メカニズムです。

2. 動きすぎることはなぜ問題になるのか?

動物実験の報告では、動きやすすぎる関節は変形性関節症につながると報告されています。

Kamekura, S., et al. "Osteoarthritis development in novel experimental mouse models induced by knee joint instability." Osteoarthritis and cartilage 13.7 (2005): 632-641.

また、整形外科では、不安定な関節に対して関節固定術(関節が動かないように固定する手術)を行うことで、痛みの改善を図る手術があります。
代表的な手術は不安定な腰の骨(腰椎)の間を固定する脊椎固定術などがあります。

脊椎固定術

画像は野中腰痛クリニックから引用

https://nonaka-lc.com/blogs/achievement-2022-1-12-01/

このように、関節が動きすぎるところは変形が生じ、痛みにつながり、関節を安定させることで痛みが軽減します。
関節の動きやすすぎる方向を見つけて、その方向に動きすぎないように安定させることで痛みの改善につながります

関節の動きと痛みの関係性

3. 動きすぎに対する対応方法はあるのか?

ここまで、身体の硬さだけが問題なのではなく、動きすぎの問題があることを説明してきました。
さて、動きすぎによる痛みに対して、どのように対応することができるのでしょうか?
治療者の立場と患者さんの立場どちらにおいても、重要なのは身体の使い方のクセ・パターンを理解することです。
どのような場面で、どのような動きで、どのような痛みが生じるかを理解することで、修正するべき動きすぎのパターンを見つけることができます。

例えば、長時間座って痛みがある方で考えてみます。
- 長時間腰椎屈曲位で座っていることで、腰部の筋肉が伸ばされすぎてしまった。
- これにより腰部の筋肉に痛みが生じてしまった。
このようなケースの場合、座っている時に腰椎が屈曲位になってしまうことが問題になります。
このような場合は、本人に自覚してもらい意識的に修正してもらうことが必要になります。
また、腰椎が屈曲しづらくなるための環境設定(椅子に深く座る、椅子の高さを高くする)も有効です。
治療としては、腰椎屈曲位にならないための運動が有効になります。
治療に関しては、いずれ”腰が曲がりやすいタイプの人”=”腰椎屈曲症候群”のところで、紹介しようと思います。

腰椎が屈曲した座位姿勢

まとめ

今回は、「特定方向への過剰可動性」についてご紹介しました。
身体の硬さに注目されることは多いですが、”筋肉や関節が動きすぎているから痛い”場合も多いです。
「特定方向への過剰可動性」を意識することで、新たな視点から痛みを考えるきっかけになります。

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