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「日本のジェンダーギャップを解放する存在に」IT業界の“重鎮”がMs.Engineerへ“賭けた”理由

未経験から最短6ヶ月で即戦力となるソフトウェアエンジニアを育成する、日本初、女性のためのコーディングブートキャンプMs.Engineer

「意志ある女性の人生を押し上げる」——Ms.Engineerが掲げる理念に強く共鳴し、リード投資家として名乗りをあげたのが教育事業、人材マッチング事業、そして、スタートアップへの投資事業を行うユナイテッド株式会社です。

今回、Ms.Engineer代表 やまざきひとみとユナイテッド社代表取締役社長 兼 執行役員を務める早川与規さんの対談が実現。博報堂、サイバーエージェントなど広告・IT業界を渡り歩いてきた早川さんから見た、Ms.Engineerの強みとは。2人の“意外な出会い”からMs.Engineerへ投資したきっかけ、IT業界のジェンダーギャップ解消に必要なことなどを語ってもらいました。

早川 与規(はやかわ・とものり)氏
ユナイテッド株式会社代表取締役社長 兼 執行役員

早稲田大学政治経済学部卒業後、1992年、株式会社博報堂入社(営業職)。1998年、米国シラキュース大学経営大学院に私費留学。1999年、株式会社サイバーエージェント常務取締役。2000年、同社取締役副社長兼COOを務める。
2004年にモバイルサービスを展開する株式会社インタースパイアを設立、代表取締役社長CEOに就任。2009年、株式会社エルゴ・ブレインズと合併し、株式会社スパイア代表取締役社長CEOに就任。2012年12月モーションビート株式会社(現ユナイテッド株式会社)と合併、ユナイテッド株式会社代表取締役会長CEOを経て、2020年6月より代表取締役社長 兼 執行役員に就任(現任)。

「意志ある起業家にこそチャンスを」ユナイテッド・早川氏がMs.Engineerに期待すること

——今回ユナイテッド社がMs.Engineerへの投資を決めた理由をお聞かせください。長年IT業界を渡り歩いてきた早川さんが、Ms.Engineerに期待することは何でしょうか。

早川:大きく言えば「リスキリングの力に期待している」からです。その上で弊社として投資実行の意思決定を行った理由は、主に2つあります。

1つは、Ms.Engineerの“ガチ度合い”。Ms.Engineerは複数の技術言語に精通するフルスタックエンジニアを、世界的に主流となっている「コーディングブートキャンプ方式」で育成するスクールです。プログラム内容の難易度も、受講姿勢への厳しさも、他のスクールとは一線を画していると感じました。また、女性に特化している点においても、IT業界におけるダイバーシティ向上の観点で非常に重要な課題解決に向き合っていると感じています。

弊社のグループ会社のキラメックスが運営する「テックアカデミー」は、性別や年代を問わず展開していたり、転職だけでなく、まずは副業で挑戦してみたいという方に向けてハードルを下げたりなど、総合的にサービスを提供しています。

どちらが良い、悪いではなく、こうして多様な“入り口”からエンジニアになる人が増えることが、日本のIT人材不足を解決する方法だと考えています。そういう意味で、Ms.Engineerはエンジニアへの入り口の1つとして、非常に期待できると思いました。

——もう1つの理由は何でしょうか?

早川:率直に、「やまざきさんのような意志ある起業家を支援したい」と思ったからです。

IT業界のジェンダーギャップ解消に限らず、社会課題を事業にするのは容易ではありません。5年、もしくは10年以上の長期スパンを見込む必要があるし、そこまでリソースを注いだところで成功する確約もない。しかし私たちはそんなハードな領域に踏み込んだ意志ある人にこそ、社会を前に進める力があると考えています。

弊社の「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する」というパーパスの通り、責任や重圧を背負いながら果敢に闘おうとしている、やまざきさんを筆頭とするMs.Engineerの力になりたいと思ったんです。

——そもそもお二人の出会いはどのようなものだったのでしょうか?

早川:5年くらい前、情報交換を兼ねて寿司店に知り合いを招いたんです。そこにやまざきさんも来ていて。それが最初ですね。やまざきさんは私が以前副社長を務めていたサイバーエージェントの後輩ということで、活躍ぶりは知っていました。20代という若さにもかかわらず新規事業の責任者を任されて、とてもパワフルで優秀な方という印象でした。

やまざき:とても畏れ多いです。早川さんはIT業界の“重鎮”であり、私からすればレジェンド。お寿司屋さんの隣の席でいろいろお話ししたのですが、緊張しっぱなしでした。

それから何年か経った2021年、Ms.Engineerを立ち上げることになって。着想やビジョンをいろいろな方にお伝えする中で、早川さん率いるユナイテッドさんにもお目にかかる機会ができました。

早川さんはバックグラウンドも近く、リスキリングの原体験も持っている方なので、ご縁を強く感じていて。「投資をリードしていただくなら早川さんしかない!」と強く願っていました。なので、ユナイテッドさんから出資いただけると決まったときは「よっしゃー!」って(笑)。本当にうれしかったですね。

「私がやらなきゃ誰がやる」エンジニア育成事業に人生を賭けた理由

——Ms.Engineerは「女性にエンジニアの新キャリアを」をミッションに掲げていますが、この事業構想に至ったのはどのような理由があったのでしょうか。

やまざき:まず直接的な理由は、コロナショックによる女性の雇用環境の悪化です。女性は非正規雇用の割合が高く、こうした経済悪化の皺寄せを受けやすい社会構造があった。「女性の失業率は男性の約3倍」「女性の自殺率が男性を上回っている」というショッキングなニュースも耳にして、なんとかしたいという思いが強くなったんです。

そんなとき、有効なアプローチ方法として真っ先に思いついたのが「リスキリング」でした。かねてから「いつか事業をおこすならリスキリングをテーマにしたい」とずっと思っていたからです。

——最近ニュースなどでも注目を集めていますが、やまざきさんがリスキリングを事業にしようと思ったのはなぜでしょうか。

やまざき:私自身の原体験から、リスキリングの力を信じているからです。

実は20代後半に働きすぎて、体調を崩してしまって。退職後引きこもり状態だった私にできることといえば、本や映画を眺めることくらい。100本近い本や映画に触れる中で、これまでの社会人経験で培った経験の上に、コンテンツから得た知見が積み重なって、一本の太い線になっていく感覚があったんです。明らかに自分がアップデートされていると感じました。今思えば、知らず知らずのうちにリスキリングしていたんだなと思います。

早川:実は、私もリスキリングの経験があるんです。私は28歳のとき、MBA取得のためアメリカに留学したのですが、今思えばあれはリスキリングだったなと。仕事漬けだった20代の終わりが見える中で、ちょっと立ち止まって、これからのキャリアや人生を見つめ直す時間がほしかったんだと思います。

——お2人の意外な共通点がリスキリングだったとは。リスキリングにもいろいろ手段はあると思いますが、なぜ「エンジニア育成」だったのでしょうか。

やまざき:理由としては、個人的な気づきと社会的な背景の2つあります。

1つは、未経験からプログラミングスクールに通いエンジニアに転身したパートナーの存在。彼はエンジニアになってから、フルリモートの自由な働き方が実現しただけでなく、給与も大幅に上がりました。そして何より、毎日生き生きと楽しそうに働き始めたんです。

彼の姿を見て、エンジニア職はリスキリングの力を最大化できるのではと思いました。女性は妊娠や子育てなどのライフイベントでどうしても働き方に制約が出てしまいますが、エンジニアであれば時間と場所を選ばず、手に職を持って長く働き続けることができる。女性がエンジニアになるのってメリットしかないんじゃないか、と確信したんです。

もう1つの理由はIT業界全体のジェンダーギャップです。IT業界は深刻な人手不足と言われているのに、いまだ女性エンジニアは2割程度と大きな格差がある。需給がマッチしておらず、人材流動に歪みが生じているんです。

絶対に誰かが解決しないといけない問題なのに、日本で本気で取り組んでいる人はほとんどいない。これまでの経験が線となって「私がやらないで誰がやるんだ」と、人生をかけて本気で取り組みたいと思いました。

100万超えの受講料とブートキャンプ式のハードな授業。Ms.Engineerは“異常”なのか

——そういう意志に反して、Ms.Engineerはハードな授業と高額な受講料から「高額商法」などと揶揄する声も見受けられます。Ms.Engineerが提供するプログラムの価値は、どのようなところにありますか。

やまざき:Ms.Engineerはシリコンバレー式の「コーディングブートキャンプ形式」を採用していて、一般的なプログラミングスクールとはプログラムの内容も、身につけられるスキルもまったく異なります

3ヶ月間、平日朝から晩まで、高難易度の授業と厳しいチーム演習をひたすら繰り返すのが、ブートキャンプの特徴です。世界的に見ても、この形式は高い学習効果が認められていて、市場規模も拡大し続けています。

オンライン講座ですが、録画を配信して自学自習ということではなく、リアルタイムにオンライン上で一堂に会し、世界基準の授業を受ける。なので価格も自ずと高額になっています。ただ、世界的に有名なコーディングブートキャンプとほぼ同程度なので、決して「ぼったく」っているわけではありません。

早川:金額だけ聞くとたしかに安くはないし、「毎日出席、遅刻厳禁」なんて本当にシビアではありますね。でもだからこそ、それだけの“リスク”をとってでも「本気で人生を変える」という覚悟と意志を持った方だけが集まっているのがMs.Engineer。やまざきさんをはじめとした経営陣や講師の皆さんも、何一つ妥協せず、高いモチベーションを持って生徒さんたちの気持ちに応えようとしている印象です。

やまざき:フルスタックエンジニアに転向できれば、大幅な年収アップも見込めます。個人でサバイブしていかなければいけないこれからの時代に、一生もののスキルを獲得できる自己投資と考えてもらえたらなと思います。

何より、Ms.Engineerでは現役で活躍するハイレベルなエンジニアを講師・メンターに迎えるなど、挫折させない仕組みやプログラム構成には自信がある。実際に現時点での卒業率は100%です。Ms.Engineerを選んでいただいたからには、絶対に後悔させません。

——ちなみに、Ms.Engineer卒業後の転職先の紹介などはあるのでしょうか。

やまざき:これまでの卒業生だと、NewsPicks、freeeやMoney Forwardなど、大手のメガベンチャーなどから内定をいただいています。Ms.Engineerでは転職先も生徒の自主性を尊重しているので、就職先の斡旋などはしていません。その代わり、希望の企業から内定をもらえるよう、手厚く就職サポートを行っています。

「女性だけ」だからこそ、自信が持てた。開講から2年で生まれた、劇的な変化

——2021年の開講から約2年。実際にMs.Engineerに参加した受講生や卒業生の中で、印象的な変化があれば教えてください。

やまざき:1人で4社の内定を獲得した方や、年収が100万円ほど上がった方もいるくらい本当に受講生の皆さん一人ひとりが劇的な変化を遂げています。

受講生たちは、行政の窓口業務、経理や学校教諭など、歩んできたキャリアも年齢もさまざま。皆さん、プログラミング言語に触れた経験のない完全未経験からのスタートです。

手前味噌かもしれませんが、受け入れ先の企業さんからも本当に評判が良くて。前のめりに成長しようとするマインドが、周囲にとってもいい影響を及ぼすのだそうです。技術面だけでなくマインドや人柄まで見て評価してくださっているのがうれしいですね。

——2年ほどの短期間で、キャリアを激変させている人が続出しているんですね。

やまざき:キャリアはもちろんですが、Ms.Engineerの卒業生を見ていて特に実感するのは、マインド面の変化です。ブートキャンプを終えると、皆さん驚くほどに顔つきや表情が変わるんですよ。

早川:「ブートキャンプ」というだけあって、軍人のように精悍な顔つきになって帰ってくるんじゃないですか?

やまざき:そうかもしれません(笑)。「きつすぎて5キロ痩せた」なんて方もいるくらいハードなプログラムを乗り越えて、技術面だけでなくタフな精神力と「どこでも活躍できる」という自信を身につけて卒業していきますね

ただ、それでもなお「私なんてまだエンジニアになる資格がない」と言う方もいらっしゃって。男性中心社会で生きる中で、「自分は取るに足らない存在なんだ」という“呪縛”にかかり、自分のスキルや実績を過小評価したり、自分に自信が持てずにいたりする女性の多さを実感する瞬間です。

私たちMs.Engineerが目指すのは「女子だけで学べる環境」を最大限活かしながら、アンコンシャスバイアスにアプローチして、自信を取り戻してしてもらうこと。同性のみの環境は心理的安全性を担保してくれるので、思い込みやアンコンシャスバイアスから解放され、人生の可能性を最大化してほしいと考えています。

早川:エンジニアに転向できれば、収入面や生活面で自分らしい生き方、働き方が叶う可能性も高い。でもどこか「自分には関係ない」「自分にはできない」と思ってしまっている人も多いんじゃないでしょうか。

Ms.Engineerの皆さんを見ていて、あらためて経歴や年齢にかかわらず、エンジニアが多くの人の人生の選択肢となってほしい、と思いました。そういった意味でも、業界全体としてもいろんな“入り口”を作っていかなければならない。Ms.Engineerは大きな選択肢のひとつだと思います。

Ms.Engineerの事業を加速させ、IT業界のあらゆるバイアスを打ち破る

——実際に事業を運営していく中で、やまざきさんご自身に新しい発見や意識の変化はありましたか?

やまざき:今お話ししたような受講生の劇的な変化を目の当たりにして、大きな手応えを感じた2年間でもありました。私たちが立ち向かっているIT業界のジェンダーギャップは、「IT、エンジニア=男性のもの」といった偏った先入観や固定観念から生まれてしまった面もあると思っていて。でも実際には、「ジェンダーがエンジニアリングの能力を決定する」なんてエビデンスはありません。

むしろ女性だから気づける視点や発想が開発に活かされ、エンドユーザーのためになっていると感じる場面が多くあります。女性エンジニアが増えることで、サービスやプロダクト開発の視点が多様になり、結果的に業界全体も豊かになるのではと思っています。

早川:ジェンダーに限らず、「理系出身じゃないとエンジニアになれない」という先入観や固定観念もありますよね。でも、開発の現場で必要なのは技術力だけではないはず。例えば論理的思考力や粘り強さなど、さまざまなソフトスキルも求められてきます。だからこそ、バックグラウンドや属性にかかわらず、多様な方に挑戦してもらいたいですね。

やまざき:今回ユナイテッドさんに出資いただいていただいた機会を無駄にしないよう、より一層IT人材不足やジェンダーギャップ解消に向け事業を加速させていかなければ、と気が引き締まる思いです。

早川:今回の対談を通して、あらためて良い会社だなと(笑)。Ms.Engineerであれば、IT業界だけでなく、日本全体に風穴を開ける存在になってくれると大いに期待しています。

Ms.Engineerに興味を持った方はぜひ、無料体験レッスンやカウンセリングを!


取材・執筆=安心院彩
編集=黒木あや

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